Project 顧客戦略部の手がけるプロジェクト

Customer Satisfaction KPI 顧客満足を推進する全社KPI設計 Customer Satisfaction KPI 顧客満足を推進する全社KPI設計

Customer Satisfaction KPI
顧客満足を推進する全社KPI設計

「あなたはこの商品を親しい友人や家族にどの程度すすめたいと思いますか?」という問いから導き出される「NPS(Net Promoter Score)」。企業やブランドに対する顧客ロイヤルティを数値化するこの指標は、現在では楽天の全事業に導入され、顧客志向経営の推進に大きく貢献しています。そしてこのNPSの社内導入には、顧客志向の文化を浸透させるプロジェクトをリードしてきた顧客戦略部が大きく関わっています。

NPS(Net Promoter Score) NPS(Net Promoter Score)

Project Member プロジェクトメンバー

池田 千代和 分析課 課長 池田 千代和 分析課 課長

池田 千代和

分析課
課長

2013年中途入社。大阪大学卒業後、電通リサーチ、博報堂コンサルティングに勤務。分析、マーケティングを中心としたクライアント支援を担当した後、さらなるチャレンジ機会を求めて楽天顧客戦略部に参画。Joyfulを感じたことは、「分析者としても企画者としても成長&貢献機会がザクザクなところで働いていること」。

ひとつの鋭い分析が転機をもたらした
ひとつの鋭い分析が転機をもたらした

ひとつの鋭い分析が
転機をもたらした

顧客戦略部はその名前のとおり、「顧客」を基点に事業の成長を考える組織です。2015年、当時まだ「楽天市場」事業の中の一つのチームとして活動をしていた同部署は、大きな新規提案を社内にて行いました。それが楽天の事業運営の根幹にある「KPI(Key Performance Indicator)」へのNPSの全面導入です。

それまでの楽天市場の成長をけん引していたのは、出店している店舗様と楽天の強力な関係性でした。一方でいくつかの調査・分析を通じて、楽天と顧客の関係性においては、さらなる改善の余地があることがわかりました。

そこで、顧客戦略部の池田は、NPS等の多面的な分析を実施。「顧客志向の文化をつくることで、楽天市場は長期的に一層の成長を遂げることができる」と確信します。一方で、現場の小さな積み重ねだけでは顧客が改善を実感するレベルに到達するのは難しいうえ、これまでの慣習との摩擦が起こるリスクも。その浸透や推進は一筋縄ではいかないことが予想されました。

そこで部内で出した結論は、楽天の事業運営の根幹にある「KPI」にNPSを全面導入することで一気に社内浸透を推進させよう、というもの。トップマネジメントへ提案すべく、まずは楽天におけるNPSという数値の重要性についての根本的な議論がはじまりました。事業運営のKPIの変更というテーマの重さや、店舗との関係性や営業戦略への影響も踏まえ、日々白熱した議論が続くなか、あるとき転機が訪れます。

それは「NPSの改善、顧客サービス品質の向上が、楽天市場の売上の長期的成長につながる」ことを定量的に示す、ひとつの分析。これにより、提案自体の説得力が大きく増し、経営陣も納得の上でついに「NPSを楽天市場の最重要KPIにし、常に改善せよ」との社内号令がかかりました。池田、そして顧客戦略部の粘り強さと分析力の高さが、「楽天市場」の歴史を変えた瞬間です。

NPSの社内全面導入決定後は、あらゆることがもの凄いスピードで進みました。たとえば、「楽天市場」のNPS分析で、サイトのあるページの要素が、NPSを大きく低下させているという結果が出ました。この要素は、これまでのビジネス基準では利益を生み出していた要素です。しかし、この分析結果の報告直後の会長兼社長の三木谷の判断は、顧客満足向上による中長期的な事業成長を優先し、それを阻害する要因は一度なくそうということ。実際に数時間後には、ページから一斉に削除されました。

この象徴的なエピソードを含め、「楽天市場」での活動は急加速で進み、改善活動を推進する部署横断の組織が発足するなど、NPS計測と分析、顧客の声を収集する体制が一気に強化されました。このときに、三木谷の座席に現れたのが「NPSダルマ」。そこには、NPSを高めていくという決意が力強く書かれており、現場の士気も大いに高まりました。

まもなく、市場以外の楽天グループ内の事業へのNPS全面導入・推進もはじまりました。各事業内に、NPS向上の責任を担うNPSマネージャーを配置。各NPSマネージャーがサービス横断で知見を共有し、全社的に品質改善を推進する品質向上委員会が新設されました。

顧客志向を加速させ、文化を浸透させる
顧客志向を加速させ、文化を浸透させる

顧客志向を加速させ、
文化を浸透させる

全社でのNPS導入に際して重要だったのが、動き出した「顧客志向」の流れを止めずに、加速させ続けることでした。当時は、専門組織を持ってすぐに対応できる事業もあれば、NPSの計測方法を一から学ばねばならない事業もあり、流れが一部で止まってしまう危険性もありました。そこで、顧客戦略部では「顧客の声を聞いて、サービスを改善し、また顧客のフィードバックをもらう」というシンプルなサイクルをNPSマネージャー全員が体験できる仕組みを考案。顧客リサーチ経験の豊富な部内のメンバーをコーチに任命し、顧客志向の考え方や、実際にあるサービスを使ってのユーザーインタビュー・調査の実施方法、改善へのアクションなど、一連のフローを各マネージャーに共有しました。

NPS改善

また、NPSの担当者だけでなく、全社員へ「顧客の声」を聞く文化を浸透させることにも注力しました。楽天では、毎日顧客の声に接する機会がある社員もいれば、システム開発など顧客と直に接する機会が少ない社員まで、顧客との接し方はそれぞれ。そこで、全社員参加の朝会の場を利用して顧客の声を共有するなど、部署を問わず全社で顧客志向を意識する機会を設けました。

NPS改善

現在NPSの導入・浸透活動は、3年目に突入していますが、その量・質ともに今も進化を続けています。これまでもNPS改善のノウハウや顧客志向の思想が、NPSマネージャーから各現場のメンバーに展開され、新たな取り組みがボトムアップで実現したという事例もあります。さらにその成果が委員会で共有され、他のサービスへ横展開されるという好サイクルも。さらにその成果が委員会で共有され、他のサービスへ横展開されるという好サイクルも。そして、活動の進化は、最終的な目的である顧客の満足という果実を着実に実らせてきています。活動の開始とともに計測を始めたNPSや顧客満足度が、多くのサービスで継続的に向上し、業界No.1※1である楽天カードに続くサービスも増えています。

2015年の楽天市場の活動を機に、全社の活動へと花開いた「KPI」へのNPS導入。「顧客志向」を中心に、長期的な事業成長を実現するための戦略を検討し、経営層へ積極的に提案、顧客満足を大きく実現する、顧客戦略部の活動を代表するプロジェクトの1つです。

  • ※1 2019年度JCSI(日本版顧客満足度指数)調査