気候変動

基本的な考え方
気候変動は、異常気象、大災害のリスク増大により世界中の人々の暮らしや楽天の事業に影響を及ぼす、今日の社会において最も差し迫った課題です。
楽天グループは、国内外で70以上の事業を展開するグローバル企業としての責任を果たし、企業理念を実現するため、2023年までにグループ全体の事業活動における温室効果ガス排出量(スコープ1+2)を実質ゼロにする、カーボンニュートラルを実現することを目指します。
楽天のカーボンニュートラルについてのコミットメントについては、楽天グループ環境ポリシー全文をご覧ください。
楽天グループの目標
楽天は、2023年に連結子会社を含む楽天グループの事業活動における
温室効果ガスを実質ゼロにする、カーボンニュートラル*1の達成を目指しています。
楽天は、2019年12月に国際的なイニシアチブ「RE100」*2に参画し、2021年には楽天グループ株式会社の事業活動で使用する電力について、再生可能エネルギー導入率100%*3を達成しました。
2022年、連結子会社を含むグループ全体の再生可能エネルギー導入率は11.6%となりました。
*1 温室効果ガス(Greenhouse Gas:GHG)の排出量を算定・報告する際の国際的な基準である「GHGプロトコル」に沿って算出・第三者保証を取得した、Scope
1排出量(自らによる温室効果ガスの直接排出量)とScope 2排出量(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出量)の合計。
*2 Renewable Electricity
100%の略。国際環境NGO「The Climate Group」が、気候変動の情報開示を推進するNGO「CDP」とのパートナーシップのもと運営する国際的な協働イニシアチブ。
*3
電力の再生可能エネルギー属性を証明する「FIT非化石証書」を利用し、実質100%再生可能エネルギー化達成
カーボンニュートラル達成に向けて
楽天の事業活動における主なGHG排出源は、スコープ 2の電力使用、サプライチェーン上流工程での排出、販売された燃料や電力、投資先ポートフォリオ企業における排出等です。
自社の事業活動(スコープ1+2)
カーボンニュートラル戦略を構成する3つの施策:
- エネルギー効率の向上:
GHG排出活動の削減 -
再生可能エネルギー100%へ切り替え:
再生可能エネルギー100%のポートフォリオを構築 - カーボンクレジットの調達:
GHG排出量のオフセット
これらの取り組みを通じて進捗状況を定量的に把握し、カーボンニュートラル実現の確度を上げています。
サプライチェーン全体(スコープ3)
楽天は、多様なサービスを通じて環境に配慮したライフスタイルや買い物の選択肢を消費者に提供し、脱炭素社会の実現に向けた取り組みをパートナーと共に強化していきます。
また、サプライチェーン*における温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいきます。
* GHGプロトコルに従って第三者検証を取得し、推定したスコープ3排出量(スコープ1、2以外の間接排出量)
マネジメント体制
楽天グループ全体で気候変動に対するアクションを推進していくためには、強力なマネジメント体制が必要です。そこで2022年1月に、環境問題へ対応するための戦略を立案・実行する環境部を設立しました。また、グループ横断での推進体制や報告ラインも整備しました。サステナビリティ委員会のもとに、環境分科会を設置し、月次会議を開催しています。
気候変動に関する課題はCOOがマネジメントしています。環境部および環境分科会は、様々な関連チーム・組織・国際的イニシアチブと綿密に連携し、楽天の全事業部門に対して自組織が環境に与える影響に責任を持つよう働きかけていきます。
事業ごとに環境部と連携する担当者(環境PIC)を任命し、実務推進やそれに伴うリスク管理等、環境推進活動に関わる幅広い取り組みを行っています。
取り組み内容や進捗は随時サステナビリティ委員会に報告され、さらなる分析や重要な意思決定が行われます。そしてその内容は、取締役会に報告されます。
従業員の声
現在、楽天では連結子会社を含むグループ全体で、2023年までにスコープ1+2の排出量をカーボンニュートラルにすることを目標としています。環境部の役割は、部門横断的な活動を多方面からサポートし、楽天をよりグリーンな企業へと転換し、この目標を実現させることです。これは、気候変動という非常に重要な社会課題への取り組みの第一歩でしかありません。カーボンニュートラルな社会へと世界が大きく変わろうとしている今、楽天は業界を牽引する存在としてこの課題に取り組み、「人々と社会をエンパワーメントする」というミッションにコミットし続けていきます。
まだスタートラインに立ったばかりですが、今後も楽天のブランドコンセプトの一つ「一致団結」を胸に、楽天グループ一丸となってこの大きな社会課題の解決に向けて前進していきたいと思います。

大橋 超
環境部 副部長
自社の事業活動における排出量削減の取り組み
エネルギー効率の向上
様々なサービスを提供する楽天の消費エネルギーの98%以上は電力であり、その96%はモバイルネットワークとデータセンター、オフィスで使用されています。そのため、楽天グループの環境負荷抑制には、使用する電力源を管理していくことが重要です。
具体的な取り組み事例は以下のとおりです。
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データセンター
国内のデータセンターでは、サーバーラックの隙間をブランクパネルで塞ぎ、熱気と冷気を分離することで、効率よくサーバーを冷却しています。サーバーラック間に隙間がある場合、サーバーから排出された熱風がサーバーラック内に再循環するため、サーバーの温度が上昇します。その結果、冷却効率が悪化し、エネルギー消費量の増加につながります。
ブランクパネルを取りつけることで、サーバールームの空気の流れを整え、これにより、冷却効率が向上し、エネルギーの消費を抑えることができます。 -
オフィス
楽天では、一部のオフィスにおいて環境性能の高い建物を選択しています。その中には世界的な環境認証評価である「LEED認証*」を受けたオフィスも含まれており、楽天グループの本社である「楽天クリムゾンハウス」は、同認証のゴールド認証を取得している二子玉川ライズの複合施設の一部となっています。
就業時間外にはオフィス内のモニターや照明・電化製品などの電源を切り、待機電力を減らしています。また、楽天カードのオフィス(福岡県)ではオフィス内の温度設定ルールを導入し、年間電力消費量の20%削減につながりました。明るい未来に向けて前進するためには、こうした小さな一歩を積み重ねていくことが大切だと考えています。* 「エネルギーと環境のデザインにおけるリーダーシップ」:非営利団体である米国グリーンビルディング協会が設立した枠組みで、環境に最も高いレベルで配慮された世界中の建築物の格付けを提供している
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スポーツ施設
楽天では、スポーツスタジアムで使用する照明のエネルギー消費効率を高めるためLED化を推進しています。ヴィッセル神戸のホームグラウンドであるノエビアスタジアム神戸では、ホームゲーム・イベント、日常業務で使用するピッチ照明、各部屋、廊下、コンコースなどに存在する約5,800個の照明をLED化しました。これにより約67%の電力消費量削減(従来の照明との比較)になると試算されています。
取り組み事例
AI車両制御システム
楽天西友ネットスーパーと楽天全国スーパーは、AIと機械学習によって、配車および配送ルートを最適化する「AI配車管理システム」を導入。これにより、導入初月の実績値に基づく配送距離の削減効果は15%(年間86万km相当)、CO2 排出量は年間170t削減される見込みです。さらにシステムの導入を進めることで、今後より広範囲な削減が期待されます。 なお、この取り組みは公益社団法人企業情報化協会が主催する2022年度第40回IT賞にて、「IT 賞(サステナビリティ領域)」を受賞しています。
再生可能エネルギーへ 100%へ切り替え ― 「RE100」への歩み
再生可能エネルギー由来電力の比率は、楽天グループ株式会社単体では2021年に100%となり、連結子会社を含む楽天グループ全体では2022年時点で11.6%でした。
インターネットを提供する楽天が気候変動に与える最大の影響はエネルギー消費によるものです。そのため、使用する電力の供給源をコントロールすることが、影響を最小化していくために重要な鍵となります。再生可能エネルギー品質基準は、長期的なリスクと機会を考慮し、基本的には国際協働イニシアティブ「RE100」の基準に則り楽天独自で設定しています。
今後、自社所有施設や電力契約に関して関与可能な施設より、楽天の事業活動で使用するすべての電力に楽天独自の基準を導入することを検討しています。
取り組み事例
オンサイト自家発電
カリフォルニア州サンマテオにある「楽天クリムゾン・ハウス・ウェスト」では、2020年中旬から総容量92.4kWの屋上太陽光パネルを設置し、オフィスで消費される電力の一部を供給しています。2021年の太陽光パネルの発電量は130,000kWhで、総消費電力の9%に相当しました。
楽天西友ネットスーパー専用の物流センターである楽天フルフィルメントセンター松戸には、4,300枚以上の太陽光パネルが設置されています。この太陽光パネルによって倉庫の総消費電力の20%をまかなえるとの試算がされており、物流業界では珍しい太陽光パネル設置事例となりました。

再エネ電力契約
株式会社楽天野球団が管理運営する施設(楽天モバイルパーク、ウェルファムフーズ森林どりスタジアム泉、泉犬鷲寮)では、再生可能エネルギーによる電力が使用されています。2022年、楽天イーグルスとヴィッセル神戸は、すべてのスタジアムの事業活動における電力使用を100%再生可能エネルギーに切り替えました。
再エネ施設運営
「Rakuten STAY」では、エコツーリズムの推進とお客様に持続可能な宿泊体験を提供するため、「楽天エナジー」と連携し、すべての国内宿泊施設において実質再生可能エネルギー100%の運営に切り替える取り組みを2021年から行っています。
バリューチェーンにおける排出量の削減
ユーザーのエンパワーメント
グリーンな未来の実現には、循環経済を基軸としたビジネスの主流化や、生活者による適切な選択が重要です。
楽天では、「Go Green Together」プロジェクトを 2022 年より始動し、提供する様々なグループサービスを通じて、環境に配慮した生活やお買い物の選択肢をユーザーの皆様に提供することで、持続可能な社会の実現を目指しています。「Go Green Together」特設サイトでは、気候変動をはじめとするさまざまな環境課題に一人ひとりが向き合うためのヒントや、課題解決の後押しとなるキャンペーン・サービスなどを紹介しています。
ビジネスパートナーのエンパワーメント
楽天は、スコープ1やスコープ2を超えた取り組みに努めています。バリューチェーン全体でカーボンニュートラルな社会を実現するためには、あらゆるパートナーの皆様と手を携えて取り組むことが欠かせません。
商品配送
インターネットショッピングが消費者の日常生活における主要な買い物手段となっている昨今、「ラストワンマイル」は荷物の配送プロセスにおいて肝となるステップです。商品の再配達はCO2排出量の増加につながり、日本では再配達によって排出される追加的なCO2が年間約 254,000*トンと推計されるなど、地球環境に対する負荷の増大につながっています。楽天は配送業者の皆様やお客様と共に、商品配送の効率化に取り組んでいます。「楽天市場」では、お客様のご都合に応じて選択できる様々な配送方法を用意しており、コンビニエンスストア、郵便局、または受け取り専用ロッカー「はこぽす」で商品を受け取ることが可能です。また、受け取りを確実にするため、配送希望日・時間帯を選択いただくことも可能です。
* 国土交通省「宅配便の再配達削減に向けて」より
再生可能エネルギーによる電力供給
楽天のカーボンフットプリントの削減には、パートナーの皆様の協力が不可欠です。バリューチェーン上で関わるすべてのステークホルダーのサポートのもと、より効率的な事業運営を目指しています。
例えば、電力卸売事業者である楽天エナジーは、サービス開始以来低コストで最適な電力ソリューションを提供してきました。2020年3月には、法人のお客様向けに環境配慮型の電力供給メニュー「REco」の提供をスタート。「REco」は、提供する電力に非化石証書と呼ばれる環境価値を付加することで、お客様の施設に供給する電力が再生可能であることを保証しています。これは、CO2排出削減に貢献するとともに、「楽天市場」の出店店舗や「楽天トラベル」の宿泊施設など、楽天のパートナー企業が100%再生可能エネルギーで事業運営ができる状況を実現します。
気候変動リスクと機会
気候変動に関するリスク評価は、楽天グループのリスクマネジメントの枠組みである「ERM(統合型リスク管理:Enterprise Risk Management)」の一部として行われています。以下は、報告セグメントごとに整理された主要な「リスクと機会」の一部です。
リスク・機会 カテゴリー |
リスク | 機会 | セグメント | |||
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インターネットサービス | フィンテック | モバイル | ||||
移行リスク | 政策・法規制 | 炭素税による税負担増 | ● | ● | ● | |
技術 | モバイルネットワークの効率・品質の低下による競争力低下 | モバイルネットワークの効率化・高品質化による競争力強化 | ● | |||
市場 | 環境配慮型製品の調達コスト増による競争力低下 | ● | ● | |||
環境配慮型製品・サービスの需要拡大による事業拡大 | ● | ● | ● | |||
評判 | 脱炭素への移行失敗による楽天グループ全体のブランドイメージの失墜 | 脱炭素への移行成功による、楽天グループ全体のブランドイメージの向上 | ● | ● | ● | |
物理リスク | 急性 | 特定非常災害等による、お客様が当社プラットフォームで購入された商品の出荷・配送の遅延 | ● | ● | ||
大型台風・集中豪雨等による保険金支払額の増加 | ● | |||||
レジリエントなプラットフォーム構築によるお客様からの信頼獲得と、事業拡大 | ● | ● | ● | |||
慢性 | 海面上昇や慢性的な暑さによる製品・サービスの需要減退、継続性・品質の低下 | 海面上昇や慢性的な暑さによる新たな商品・サービス需要の発生 | ● | ● | ● |
パートナーシップ・イニシアチブへの参加
楽天グループは、国内外の様々なイニシアチブに参画するとともに、世界中の各種関連組織と連携していくことで気候変動に関する目標の達成を目指しています。
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RE100
2019年12月、楽天グループ株式会社は、「Renewable Electricity 100%」を意味する国際的イニシアチブ「RE100」に参加しました。楽天は、このイニシアチブを通じて、楽天グループ株式会社のすべての事業活動において「再生可能エネルギーへの100%切り替え」にコミットしています。2021年にはこのコミットメントを達成し、2023年までに楽天グループ全体で使用する電力を100%再生可能エネルギーに切り替えることを目指しています。
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TCFD
楽天は2019年12月より、国際的なイニシアチブである「TCFD(気候関連財務開示に関するタスクフォース)」を支持しており、楽天のリスク軽減戦略にはTCFDの提言が取り入れられています。楽天は、様々なシナリオについての検討を行った上で、事業全体のリスクをマッピングしています。
TCFDの提言に基づく気候変動関連の情報開示については、TCFDインデックスをご覧ください。 -
気候変動イニシアチブ
「気候変動イニシアチブ(Japan Climate Initiative)」は、気候変動対策に積極的に取り組む日本企業、自治体、NGOなどのネットワークです。楽天は、2019年12月に同イニシアチブに参加し、パリ協定が求める脱炭素社会の実現に向け最前線に立つことを宣誓しました。
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CDP
「CDP」は環境情報開示のスタンダードとして、世界で広く認知されており、全世界で13,000社超の企業が回答しています。楽天は2017年より「CDP気候変動調査」に回答しています。 CDP Climate Change 2023への回答はこちらからご覧ください。
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一般社団法人 新経済連盟
新経済連盟(JANE:Japan Association of New Economy)の創設以来、楽天は会員企業として各種の取り組みに積極的に参画しています。2022 年に発足したカーボンニュートラルワーキンググループにも参加し、その活動を通じ他の会員企業との情報共有や議論、政府の関係部署との意見交換を重ね、GX 実現に向けたビジョンの共有と民意の反映を目指しています。