責任あるAI

基本的な考え方

楽天グループでは、各事業内で幅広く AI 技術が活用されています。AI 技術の恩恵を享受しながら、健全なインターネットサービスをステークホルダーの皆様に提供するには、強固なガバナンス体制の構築が不可欠です。大切なお客様の個人情報をはじめとする各種情報が損なわれないよう、生成 AI を筆頭とした AI に入力する個人情報や機密情報を保護・管理し、急速に変化する AI の公平性の維持と、継続的な品質向上に努めています。中でも責任ある AI 開発・活用には次のようなモデルを基に、安全な環境を整える活動を行っています。

責任あるAI=AI倫理憲章+AI運用ガイドライン+AIガバナンス

マネジメント体制

AI 利活用とデータ利活用は密接に関係しているため、楽天グループではAI & データ委員会を立ち上げています。AIガバナンス、AI 研究開発、AIセキュリティ & セーフティ、パブリックリレーション & パブリックポリシー、データ活用、従業員教育といった各分野で実施されるグループ横断の活動計画が本委員会にて承認され、進捗状況が報告されます。また、グループ全体のガバナンス、リスク管理戦略の策定、承認も本委員会で行われます。さらに、重要な決定事項や課題は、コーポレート経営会議と取締役会に対して定期的な報告を行います。

体制図

AI倫理憲章

2023 年、楽天グループでは「AI 倫理憲章」の策定を開始しました。本憲章は AI の開発、運用、利用の各段階で倫理的な基準を設け、信頼性の高いサービスをユーザーに提供することを目指しています。包括的な規則を設けることにより、楽天は技術革新を推進しつつ、個人の権利とプライバシーを尊重し、公平・公正で透明性のある AI 活用を促すことができます。

楽天グループ AI 倫理憲章

楽天グループでは、人工知能(AI)の持つ計り知れない可能性と社会に及ぼす変革的な影響を認識し、責任ある「Rakuten AI」の開発、テスト、導入、活用に取り組みます。私たちのアプローチは、公正性、尊重、持続可能性、透明性、法令遵守などの普遍的な人間原則を掲げる「楽天主義の基本原則」と「楽天グループ企業倫理憲章」に根ざしており、同時にセキュリティとプライバシーの規程類を含む「楽天グループ規程(RGR)」に完全に準拠します。

私たちは、フィードバックに耳を傾けながら AI 倫理憲章を継続的に進化させ、世界中のステークホルダーとの協力を通じて、責任ある AI の未来を形成することを目指します。

原則1:現行法令を遵守し、未来の法律や規範の形成に寄与します

第一に、私たちは各国・地域の関係法令を遵守し、高い倫理基準を維持します。公正な社会を追求していく中で、私たちは AI を活用し、犯罪組織や不法行為、道徳的に問題のある活動に対し、より効率的に対処します。

私たちは立法に関わる方のパートナーとなり、現在および将来における AI 技術の応用、可能性、潜在的なリスクについての理解を促進します。また、今日のニーズだけでなく、未来のニーズを予測し、先んじて対応するような法制度設計に寄与します。

原則2:人々をエンパワーメントする AI システムを設計します

楽天グループは、テクノロジーは人間の創造力と独創性を高めるツールであるという世界観のもとで AI 活用を進めていきます。当社の AI システムは、この取り組みを前進させるために設計されており、従業員が業務を行う際やパートナー様がビジネスを拡大する際、そしてお客様が日常生活を送られる中でも、有用で信頼できる伴走者として機能するように構築します。

原則3:安全性を妥協しません

私たちの AI 開発と運用において、構築するすべてのモデル、収集するすべてのデータセットおよび展開するすべてのサービスは、可能な限り安全、安心、信頼できるものであるよう、厳格に定義、開発、テスト、監視を行います。

これらの工程において、当社の AI サービスの制作と提供に関わるすべての人の安全を確保します。

原則4:信頼性と公平性に注力します

信頼性は、お客様やパートナー様の満足を支える基盤です。私たちは、当社の AI ツールが常に信頼できる一貫した高品質な結果を提供できるよう努めます。また、すべての人が公平に扱われるべきであり、すべての AI システムが公正で偏見のないものであるべきだと考えています。そこで、データを厳格に保護し、不当なバイアス、差別、および偏見のない AIシステムを構築するためにデータを使用します。

原則5:透明性によって信頼を築きます

透明性は、大切なお客様やステークホルダーとの信頼構築において中核をなすものです。私たちは、当社の AI モデルがどのように開発、テストされ、プロダクトやサービス全体にどのように活用されているか、明確でわかりやすい説明を提供します。また、サプライヤーと協力し、同様の説明責任を果たします。私たちは、顧客データの収集と使用方法について透明性を持ち、ユーザーがどのデータを共有するか、容易に管理できるようにします。

楽天グループの原則を実際に機能させるため、ガバナンス体制を確立し、責任ある AI の開発と活用を実践する企業風土を醸成します。

AI 運用ガイドライン

楽天グループでは「AI 倫理憲章」に加え、社内向けの運用ガイドラインも整備しています。原則として、主に AI を活用する際に遵守すべき事柄、AI サービスのユースケース、そして業務における AI サービスの実装に関する項目を定めており、ほかの原則と合わせ、従業員による責任ある AI 活用の指針となります。

従業員の意識向上

AI の倫理的な活用について、社内での理解度・認知度を高めるため、全従業員が参加する朝会での発表やオフィス内のデジタルサイネージを使い、積極的な情報発信を行っています。2023 年には、生成 AI の利用ガイドラインについての研修を実施し、グループの従業員が受講しました。今後も継続的に情報発信ならびに啓発活動を行っていきます。