2007年4月5日
株式会社日本総合研究所
楽天リサーチ株式会社

病院への不満度は日本より上海の方が高い
-- 混雑、医療費の高さに不満 --
【病院・市販薬に関する中国(上海)・日本比較アンケートより】

 株式会社日本総合研究所(代表取締役社長:木本 泰行、東京都千代田区一番町16番)と楽天リサーチ株式会社(代表取締役社長:森 学、東京都港区六本木1-8-7)は、中国・上海と日本で働く人を対象に、「病院・市販薬に対しての日中比較アンケート」を実施しました。
 今回の調査は、中国では2007年3月9日から3月13日までの期間に楽天リサーチ登録モニター(約35万人)から上海で働く20代から30代の男女を抽出、日本では2007年3月16日から3月19日までの期間に楽天リサーチ登録モニター(約140万人)から20代から30代の男女を抽出し、それぞれ有効回答を得た300人のデータを基に集計しました。
□■ 調査結果 ■□
 病院・診療所の不満度は全般的に日本より上海の回答者のほうが高いという結果が得られました。特に、日本でも不満の声が多い「待ち時間が長い」という点は、上海では80%以上が不満であると回答しました。日本では、病院の待ち時間の長さを表現する言葉として「3時間待ちの3分診療」などと揶揄されることがありますが、上海でも病院・診療所においては、早朝に受付をしても診察は夕方といったことが頻繁に起こっているようです。
 また、「医療費が高い」という点も、上海では80%以上が不満であると回答しています。それ以外にも上海が日本と比較して不満度が高かった項目としては「診察時のプライバシーが守られていなさそう」「支払い方法が煩雑である」が挙げられました。
 上海では診察室の周りにも順番待ちをしている患者が多くいたり、複数の診療科に診てもらった場合、各科ごとに支払いを済ませなければならなかったりすることが不満の声の要因と考えられます。

 病院を選ぶ際のポイントについて上海と日本で比較したところ、「値段が安い」「自宅や職場の近くにある」といった経済性・利便性について聞いた設問では両者のポイントがほぼ同等であったのに対して、「信頼できる専門医がいる」「評判が良い」などの病院や医師の信頼性を聞いた設問では上海のほうがポイントが高いという結果が得られました。これは、日本ではどこの病院でも一定水準の医療サービスが受けられるという認識があるのに対して、上海では、自身で良い病院を選択しなければ満足な治療を受けられないという認識があり、選択時に病院や医師の信頼性を重視する人が多くなっているものと推察できます。

 風邪をひいた際に服用する薬について聞いたところ、上海では「薬局で買える市販薬」並びに「市販薬と漢方薬の使い分け」という回答が多く、日本では「薬局で買える市販薬」並びに「医師から処方された薬」という回答が多くなりました。
 上海には、薬局で購入する漢方薬も含め、薬を症状に合わせて自己判断で使い分けている人が多く、一方日本では、薬局で販売される一般用医薬品が中国より普及・充実しているものの、病院で症状にあった薬を処方してもらう人が多いと推察できます。また、市販薬を購入する際に重視する点については、上海では「メーカーが信頼できること」が一番ポイントが高く、“企業の信頼度”が市販薬購入の上で大きな影響を及ぼしていることが分かりました。
1.対象者属性
 今回のアンケートでは、上海で働く20代から30代の男女300名(男性150名、女性150名)及び日本で働く20代から30代の男女300名(男性150名、女性150名)を対象としました。
 
●グラフ1:【対象者属性】
https://www.rakuten.co.jp/pr/2007/0405/release_0405_01.gif
2.病院・診療所の現状
 全般的に上海の回答者のほうが、病院・診療所に対して多くの不満を有しているという結果となりました(「不満がない」と回答した人が上海では1%しかいませんでした)。特に「待ち時間が長い」については80%以上の人が不満と回答しました。日本では、病院の待ち時間の長さを表現する言葉として「3時間待ちの3分診療」などと揶揄されることがありますが、上海でも病院・診療所においては、早朝に受付をしても診察は夕方といったことが頻繁に起こっているようです。そのような状態が、待ち時間について不満であると回答する人が多くなった要因ではないかと推察されます。
 また、「医療費が高い」という点も、上海では80%以上の人が不満であると回答しています。入院費の支払いが滞り病気が完治する前に退院せざるを得ないという人もいるほど、中国における医療費の家計に与える負担は大きいといわれています。今回の結果もそのような医療費の高さに対する不満の声が集まった結果となりました。

 それ以外には、「診察時のプライバシーが守られていなさそう」「支払い方法が煩雑である」の2項目において、不満と回答した割合が上海は日本に比べ20ポイント以上高くなっています。「診察時のプライバシーが守られていなさそう」ということについては、上海では、診察室の周りにも順番待ちをしている患者が多くいるため、プライバシーが守られていないと不満を感じる人が多くなったと推察されます。
 また、疾病情報というセンシティブな情報に対して、日本では個人情報の保護に関連する法令が整備され、社会全体がコンプライアンスの徹底に注意を向けている一方、中国では、病院・診察所に限らず個人情報の取り扱いに関して、日本ほどの厳しい制限・法令がないことも一因と考えられます。「支払い方法が煩雑である」ことについては、中国では複数の診療科に診てもらった場合、各科ごとに支払いを済ませなければならない場合もあることなどが要因と考えられます。

●グラフ2:【病院・診療所での不満について(複数回答)】
https://www.rakuten.co.jp/pr/2007/0405/release_0405_02.gif

 次に、病院を選ぶ際に重視する点を比較しました。結果を見ると、「値段が安い」「自宅や職場の近くにある」といった経済性・利便性に関する回答では上海と日本のポイントがほぼ同等であったのに対して、「信頼できる専門医がいる」「評判が良い」という病院や医師の信頼性に関する項目では上海のほうが高いポ
イントが得られました。これは、日本ではどこの病院でも一定水準の医療サービスが受けられるという認識があるのに対して、上海では自身で良い病院を選択しなければ満足な治療を受けられないという認識があり、選択時に病院や医師の信頼性を重視する人が多くなっているものと推察できます。なお、中国では病院が階級別に分かれており、大病院から地元の診療所までがランク分けされています。
 このランクごとに、個人の所得水準などで通う病院を選別するという文化があることも、病院の信頼性を自己の判断で選別するという感覚を生んでいるのかもしれません。

●グラフ3:【病院・診療所を選ぶ際に重視する点(複数回答)】
https://www.rakuten.co.jp/pr/2007/0405/release_0405_03.gif
※【病院・診療所を選ぶ際に重視する点】および後述する【市販薬を購入する際に重視する点】については、それぞれの選択肢について「非常に重視する」「重視する」「あまり重視しない」「全く重視しない」の4段階で聞いています。今回は、「非常に重視する」を3点、「重視する」を2点、「あまり重視しない」を1点、「全く重視しない」を0点として、それらの単純平均を各選択肢のポイントとしています。
3.風邪をひいた際の対処
 風邪をひいた際の対応について聞きました。(今回の調査では風邪を「熱・咳・悪寒等の諸症状を伴うが、活動できないほど重度ではないもの」と定義しました。)その結果、「休息・睡眠」「防寒」「栄養バランスに気をつけた食事」といった病院に頼らない対処方法をとると回答した人は上海が多く、「サプリメント・栄養補助食品をとる」「病院へ行く」と回答した人は日本が多くなりました。
 上海では、前述の病院・診察所の不満から分かるように、病院は待ち時間が長く診察代も高いと認識されているようです。そのため、軽微な風邪であれば、医師に診てもらうコスト・労力よりも、自身の自然治癒力を高める活動をした方が良いと判断している人が多いと考えられます。一方日本では、「休息・睡眠」といった基本的な対応策をとりつつも、病院で薬を処方(【風邪をひいた際に服用する薬】参照)してもらうなど、病院に頼る人が多いことが読み取れます。

●グラフ4:【風邪をひいた際の対処】
https://www.rakuten.co.jp/pr/2007/0405/release_0405_04.gif

 次に、風邪をひいた際に服用する薬について聞きました。上海、日本ともに市販薬を飲むと回答した人が一番多くなりました。次に多い回答としては、上海では「症状に合わせて薬局で買える市販薬と市販の漢方薬を使い分ける」、日本では「病院で処方された薬」となっています。上海の街中には、漢方薬を処方してくれる薬局があり、風邪以外にも軽微な疾患や腰痛・肩こりなどの場合に利用されているようです。日本では、風邪を引いた際にも病院で処方された薬を服用するという回答が30%近くあり、一般医療薬の普及が進む中でも、病院を利用する人が上海に比べ多くなっています。

●グラフ5:【風邪をひいた際に服用する薬】
https://www.rakuten.co.jp/pr/2007/0405/release_0405_05.gif

●グラフ6:【市販薬を購入する際に重視する点】
https://www.rakuten.co.jp/pr/2007/0405/release_0405_06.gif

 最後に、風邪を引いた際に70%以上の人が服用するという結果が得られた市販薬について、購入する際に重視する点を聞きました。上海では「服用しても活動に支障がでない」「どの症状に効くかが明確」といった、薬を飲むことによって得られる効果・効能を重視する以上に、「メーカーが信頼できること」という項目が高いポイントを得ました。粗雑品も多い上海において、企業自体の信頼度によって薬を選択している様子が見て取れます。
 一方日本では「どの症状に効くかが明確」という項目が、一番ポイントが高くなりました。最近の市販薬は症状別の風邪薬が多くなっていることが一因と考えられます。上海では、前述の結果から風邪をひいた際に服用する薬を市販薬と漢方薬とで使い分けるといった人もいます。上海も、日本で発売されているような症状別風邪薬が増えてくれば、市販の風邪薬をその症状に合わせて選択するという購買行動が起こるかもしれません。
4.体重の変動について
 最近3年間の体重の変動について聞きました。上海・日本ともに、「体重が増えた」と回答した人が「体重が減った」と回答した人を大きく上回っています。

また男女間で比較すると、男性では「体重が増えた」という回答が58%であったのに対して女性では45%と、男性の方が体重が増えた人が多いことが分かります。
 逆に「体重が減った」という回答は男性が7%なのに対して女性では18%となっており、女性の方が体重が減った人が多いという結果となっています。

●グラフ7:【最近3年間の体重の変動】
https://www.rakuten.co.jp/pr/2007/0405/release_0405_07.gif

 そこで、「体重が増えた」と回答した人に対して【体重を減らさなければいけないと思うか】、「体重が減った」と回答した人に対しては【もし太ったら体重を減らさなければいけないと思うか】を聞きました。

●グラフ8:【体重を減らさなければいけないと思うか】
https://www.rakuten.co.jp/pr/2007/0405/release_0405_08.gif

 まず国別で比較してみると、日本では「強くそう思う」「そう思う」と回答した人が合わせて88%いるのに対して上海では68%となっています。また「そう思わない」と回答した人は、日本が12%だったのに対して上海では32%となっています。
 この結果を見ると、上海よりも日本の方がダイエットに対する意識が高いようです。日本では最近「メタボリック症候群」が話題となっており、ダイエットに対する意識が高まっていることがこの結果の背景にあると考えられます。また、中国では今でも「太っているのは健康な証拠である」という考え方が一部でありることも、この結果に影響しているのではないかと思われます。
 また男女間の比較では、「強くそう思う」「そう思う」という回答が男性は72%、女性は84%と女性の方が多くなっています。やはりダイエットに対する意識は女性の方が高いようです。

 さらに、体重を減らさなければいけないと思う理由を国別・男女別に整理しました。
 まず日本と上海の比較で特徴的なのは、「仕事で支障(出世が遅くなる、威厳がなくなる)をきたすから」と回答した人が上海に比べて日本がかなり少ないことです。欧米などでは肥満は喫煙と同様に社内での評価を下げる要因と見なされることもありますが、日本ではまだそういった意識はあまり持たれていないようです。
 また、「太りすぎは大病の要因になるから」という回答は上海でも日本と同程度の高い割合となっています。前述の「体重を減らさなければいけないと思うか」という質問の結果から、上海ではまだ日本ほどダイエットに対する意識は高くないようですが、肥満を病気の要因として懸念する人は多くいると考えられます。今後日本における「メタボリック症候群」のように肥満に関連する話題がより増えれば、それをきっかけとしてダイエットへの意識が急速に高まる可能性もあるのではないでしょうか。

●グラフ9:【体重を減らさなければいけないと思う理由(国別)】
https://www.rakuten.co.jp/pr/2007/0405/release_0405_09.gif

※ここに掲載されている情報は、発表日現在の情報です。最新の情報と異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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