2007年3月22日
株式会社日本総合研究所
楽天リサーチ株式会社

就職活動では“自分の能力・適性を活かせるか”を最重視     
CSR(企業の社会的責任)への理解は30%前後に留まる     
- 若者の企業観とCSRに関する意識調査より -

 楽天リサーチ株式会社(代表取締役社長:森 学、東京都港区六本木1-8-7)と株式会社日本総合研究所(代表取締役社長:木本 泰行、東京都千代田区一番町16番)は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県に在住する20代の会社員ならびに就職活動中の学生を対象に、「若年者の企業観とCSR意識に関する調査」を実施しました。
 今回の調査は、2007年2月7日から2月13日までの期間に、楽天リサーチ登録モニター(約140万人)から首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)に在住する20歳から29歳の男女を抽出し、有効回答を得た300人のデータを基に集計しました。
 調査対象は過去3年以内に転職した社会人、過去3年以内に新卒採用で就職した社会人、そして現在就職活動中の学生です。なお、今回のアンケートは就職あるいは転職活動時に若者が企業をどう見ているのかを探るものとなっています。
□■ 調査結果 ■□
 CSR(企業の社会的責任:Corporate Social Responsibility)については、言葉も内容も知っていると回答した学生や若手社会人は30%前後にとどまりました。
 就職先の選定にあたっては、新卒社会人・転職社会人・就職活動中の学生のいずれにおいても「能力・適性を活かした仕事ができる」かどうかを最も重視しており、企業の環境への取り組みや社会貢献などについてはそれほど関心が高くないようです。
 さらに就職活動中の学生は、企業が提供する有益な商品やサービス、企業の成長性など、企業そのものに注目する傾向があります。その一方で、転職社会人は自分と企業の関係、具体的には、自分の能力がその企業で活かせるか、そして企業から自分がどのような処遇を受けるのかについて注目していることがうかがえます。
 また、最初に就職した会社で働き続けたいという学生が4割を占めるのに対し、新卒で入社して勤続3年以内の社会人では「現在の会社で働き続けたい」人は2割を切り、逆に「数年以内に転職したい」人が2割を超えています。
 これは、入社前後で企業のイメージあるいは情報のギャップがあった可能性があり、最近の売り手市場の採用活動においては、企業側がこうしたギャップを埋めるための積極取り組みを積極的に行う必要があると考えます。
1.CSRの意識
 近年、CSRが注目されている中、20代におけるCSRの認知度を見ると、内容まで知っているのは、就職活動中の学生・新卒社会人の約30%であり、転職組社会人ではそれよりも低く24%に留まります。
 最終学歴別では、四年制大学卒業生(卒業見込み学生含む)よりも大学院卒業生が、また理系よりも文系の認知度が高いという結果になっています。また、女性よりも男性の認知度が高い傾向が見られます。

グラフ1:【CSRへの認知・理解】
【最終学歴別 CSRへの認知・理解】
【男女別 CSRへの認知・理解】
https://www.rakuten.co.jp/pr/2007/0322/release_0322_1.gif

 次に、企業のCSRにおける意義を説明(※1)したうえでの評価については、「特に意味はない」と回答した学生が社会人よりが若干多くなりました。その一方で、学生の中には「経営の中核に位置づける重要課題である」や「将来の利益を生み出す投資である」という積極的な回答の割合も高くなりました。

(※1)CSRの意義説明内容:有用な製品・サービスの提供、収益の獲得と納税、法令遵守などに加え、環境問題・社会問題への取り組み、社員のキャリアアップや仕事と家庭の両立支援などにも配慮していくべきであるという考え方。

グラフ2:【CSRの意義:説明の上での評価】
 https://www.rakuten.co.jp/pr/2007/0322/release_0322_2.gif
2.就職活動の際の企業への視線
 就職活動の際に、どのような点に注目しているのかを見ていきます。企業選びの重要な決め手になる要因と、気にしない要因についてたずねたところ、新卒社会人・転職社会人・就職活動中の学生のいずれにおいても「能力・適性を活かした仕事ができるかどうか」を最も重視しており、企業の環境への取り組みや社会貢献活動などについては関心が低いことが分かります。
 また、「就職時に重視する点」を詳細にみると、学生は社会人を全ての項目で上回りました。特に学生は企業の「成長性」や「安全・高品質な商品を提供しているか」といった企業の基本的な評価項目については、重視度合いが高く、かつ社会人との差が大きくなっています。転職者は、「能力・適性を活かす」ことに加えて「賃金」「労働時間」「人事評価」などが高く、処遇を重視し、新卒組に比べて転職組は企業の本質よりもむしろ“自分と企業の関係”を重視していることがうかがえます。

グラフ3:【就職の際に重視する点】
 https://www.rakuten.co.jp/pr/2007/0322/release_0322_3.gif

グラフ4:【就職活動の際の参考資料】
 https://www.rakuten.co.jp/pr/2007/0322/release_0322_4.gif

 就職活動時に活用した企業を知るための参考資料についてたずねたところ、現在就職活動中の学生は「参考にしなかった」という回答が少ないのに対し、新卒社会人や転職社会人では「参考にしなかった」という回答が多く、現在就職活動中の学生のほうが幅広い資料を参考にしていることが分かります。また全般的に、インターネットによる情報収集を行っていることも読み取れます。
 転職社会人と新卒社会人は同じ時期(過去3年以内)に就職・転職活動をした層であるといえますが、転職社会人のほうがCSR報告書などを参考にしている割合がわずかながら高くなっています。転職社会人は前述のとおり働きやすさや処遇面を重視する傾向にあり、CSR報告書にある従業員関連項目を参考にしていると考えら
れます。

グラフ5:【就職・転職の際に企業について得られた情報】
 https://www.rakuten.co.jp/pr/2007/0322/release_0322_5.gif

 また、就職・転職の際に企業について充分な情報を得られたかをたずねたところ、環境や社会貢献的な取り組みに関する情報は不充分であるという傾向が見られました。ただし、社会貢献的な項目については企業を選ぶ際にあまり重視しない人が多いため、優先度が低いことに起因している可能性もあります。
 現在就職活動中の学生と、新卒社会人・転職社会人との間で開きがあったのは、雇用の安定性についてであり、社会人のほうが情報を充分に得られたと回答しています。逆に、研修やキャリアパスについては学生が情報を充分に得られていると回答しています。学生が転職社会人よりも、または数年前よりも現在のほうが、OB・OG訪問をする機会が多く、キャリアパスなどについて質問するチャンスが多いことも推測できます。
3.「業務で能力を活かす」ことへの関心
 前述のように、新卒社会人・転職社会人・就職活動中の学生のいずれも就職の際にその会社で「能力・適性を活かした仕事ができるかどうか」を重要な決め手にしています。本調査における社会人の半数以上が「業務で能力を活かせている」と回答していますが、過去3年以内に新卒で採用された会社に勤めている社会人よりも、過去3年以内に現在の会社に転職してきた社会人のほうが、自分の能力・適性を活かせていると回答する割合が高くなっています。

グラフ6:【業務上での能力活用度】
 https://www.rakuten.co.jp/pr/2007/0322/release_0322_6.gif

 また、学歴別に見ると、理系の大学院卒では「非常に活かせている」人の割合が高い傾向が見られます。一方、「まったく活かせていない」人が多いのは理系四年制大学の卒業生です。

ラフ7:【最終学歴別 業務上での能力活用度】
 https://www.rakuten.co.jp/pr/2007/0322/release_0322_7.gif

 さらに、どのような人が自分の能力を活かせているのかを分析するため、前述の就職活動時に重視項目別に、重視度と現在の能力活用度を比較したところ、「能力・適性を活かした仕事ができること」を「非常に重視した人」については、現在の業務で能力を活かせている割合が高くなっていますが、「やや重視した」人では約35%、「重視しなかった人」では約60%の人が、業務の中で能力を活かせていないと回答しています。なお、その他の重視項目については、明確な相関関係は見られませんでした。

グラフ8:【「能力・適性を活かした仕事ができる」ことへの重視度と業務上での能力活用度】
 https://www.rakuten.co.jp/pr/2007/0322/release_0322_8.gif
4.転職による満足度の変化
 職場満足度を見ていくと、「非常に満足」については新卒社会人よりも転職社会人のほうが多いものの、「非常に満足」と「やや満足」を合算すると、新卒社会人と転職社会人の割合は同じとなります。新卒社会人のほうが、転職社会人に比べて他の会社などを知らないため、非常に満足と感じることが少ないことが推測されます。

グラフ9:【職場満足度】
 https://www.rakuten.co.jp/pr/2007/0322/release_0322_9.gif

 この調査結果からは、転職者のほうが職場への満足度が高く分布しており「転職により自分の能力を活かせる職場に移ることができる可能性は高い」と言えますが、その一方で現在の職場に不満を感じる人は44%に至ることから「必ずしも新しい職場に満足するとは限らない」こともうかがえます。

グラフ10:【継続/転職希望】
 https://www.rakuten.co.jp/pr/2007/0322/release_0322_10.gif
 
 これを裏付けるように、転職社会人は「現在の会社で働き続けたい」人が30%と、新卒社会人に比べて高いものの、「数年以内に転職したい」と明確な転職意志を示す人は18%と新卒社会人と同程度であり、転職しても必ずしもその職場に落ち着くとは限らない状況が見えます。
 また、現在の職場で自分の能力を非常に活かせている人の8.3%、やや活かせていると感じている人の16.0%が数年以内に転職したいと回答しています。

グラフ11:【能力活用度と継続/転職希望】
 https://www.rakuten.co.jp/pr/2007/0322/release_0322_11.gif

 さらに、雇用の安定を非常に重視した人の8.3%、やや重視して企業を選んだ人の13.6%が数年以内に転職したいと考えています。失業をしたくはないが、会社から飛び出したいという様子が垣間見られます。なお、その他の重視項目についてははっきりとした相関関係は見られませんでした。

グラフ12:【雇用の安定の重視度合いと転職希望】
 https://www.rakuten.co.jp/pr/2007/0322/release_0322_12.gif

 転職社会人は新卒社会人に比べて「能力を活かせている」と感じている割合が高く、第二新卒のように若手の転職者を採用することは、自社の退職者を減らし安定した人材基盤を作る一つの方法であると考えられます。しかし一方で、就職活動中には最初に入社した会社に働き続けたいという学生が多いのに対して、新卒入社3年以内の社会人では転職希望が高まることを考えると、入社前後でイメージあるいは情報のギャップがあった可能性があります。
 企業側は、売り手市場の学生を捉え、企業力を維持していくためには、このようなギャップを埋める取り組みも検討するべきだと考えられます。

※ここに掲載されている情報は、発表日現在の情報です。最新の情報と異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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