Open RANで通信業界に革新をもたらし続ける： MWC 2024で三木谷が語る

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※本記事は、以下の「Rakuten.Today（英語版）」で掲載された記事を抄訳したものです。
https://rakuten.today/mickeysvoice/mickey-mikitani-mwc-barcelona-2024.html

2024年2月26日（月）から2月29日（木）の期間で開催された、世界最大の携帯関連見本市「Mobile World Congress Barcelona 2024」（以下「MWC 2024」）に出展した楽天。今回で5度目の参加となる楽天のブースでは、数々の講演が行われました（イベントの様子はこちらをご覧ください）。本記事では、楽天の代表取締役会長兼社長である三木谷が語った基調講演の内容をダイジェスト版にてお届けします。

誰もが、高品質のワイヤレスネットワークを手頃な料金で

今回のMWC 2024で、楽天シンフォニーが開発したモバイルネットワークのソフトウェアを、広くライセンス提供するプログラムを発表させていただきました。これはMWC 2024において最も革命的な発表の一つだったと思います。

楽天はEコマース、トラベル、広告、フィンテックの分野など、「楽天エコシステム」において、世界中で70を超える様々な領域のサービスを展開していますが、正直に申し上げると、10年前の私は通信事業にはなるべく関わりたくないと思っていました。全国展開のネットワークを構築するには多額の先行投資が必要ですし、ロジスティクスの観点からも技術的観点からも非常に事業が複雑だからです。しかし、その後、2つの理由により考えが変わりました。

1つ目は、携帯の利用料金がとても高かったことです。携帯市場は、わずか数社による寡占状態となっており、健全な市場競争が起きにくかったことが原因です。こういった状況は打破する必要があると思いました。2つ目は、世界中の誰もが、高品質のワイヤレスネットワークを手頃な料金で無制限に利用できるようにしたいという思いです。それを成すには、どうしたらいいだろう？と考えたのが通信事業への挑戦の始まりでした。

完全仮想化ネットワークを現実にする

その答えは「完全仮想化ネットワーク」でした。この業界の旧態依然としたハードウェア中心のアーキテクチャを、ソフトウェア上ですべてが稼働するように再構築するのです。それができれば、特定のハードウェアベンダーに頼らず、この業界を既存事業者はもちろん、新規事業者にとっても開かれた市場にすることができると考えたのです。

6年前にこのプロジェクトを始めたとき、完全仮想化ネットワークがうまくいくと信じている人は誰もいませんでした。大手通信会社の方々に話をしても、できると信じてくれた方はほとんどいませんでした。

その一方で、楽天は挑戦を続けました。ある意味で「無知」であるからこそ、「携帯市場の民主化」にトライできたのです。また、その実現のためには、慣例的なやり方に従っていてはダメだと確信していました。何としても完全仮想化ネットワークを実現し、飛躍的なブレイクスルーをしていく必要があったのです。

Open RANをすべての人に

2020年、私たちは楽天シンフォニーのテクノロジーのベースとなる、携帯キャリアサービス「楽天モバイル」を本格開始しました。ほぼすべてにおいて社内のエンジニアの手で開発した完全仮想化ネットワークです。

楽天モバイルは、独自のモバイルネットワークとそれを稼働させるソフトウェアを自社で保有・運用するという点で他の多くの通信事業者と一線を画す事業者です。また、楽天モバイルのOpen RANはどの競合他社よりも高度化しているという自信があります。

無線アクセスネットワーク（RAN）の分野は長らくレガシーシステムが圧倒的に優勢であり、それがイノベーションを妨げ、コストを押し上げてきました。競合他社が特定のハードウェア用にソフトウェア開発を注力する中で、楽天はハードウェアとソフトウェアを「分離する」ことでコスト削減に取り組んできました。

このたびの楽天シンフォニーの「リアルOpen RANライセンシングプログラム」の開始は、数々の受賞実績を持つ楽天シンフォニーのOpen RANソフトウェアを、通信業界のあらゆる事業者にご利用いただけるようにするものです。世界のどこにいようとすべての人が、高品質のワイヤレスネットワークに手頃な料金でアクセスできるようにしたい。そうなれば、今後、通信業界の方向性が変わると期待しています。