Bing AIとは?
機能の特徴や使い方、ChatGPTと比較した強み・弱みを解説!
Microsoft(マイクロソフト)は、2023年2月8日に検索エンジンであるBingにAIチャット機能「Bing AI」を開発・搭載したと発表しました。
このBing AIと、昨今世界中から大きな注目を集めている「ChatGPT」の違いはどのようなものなのでしょうか?
当記事では、Bing AIの概要や主な機能である画像や、文章の生成方法にも触れながら、ChatGPTとの違いをご紹介します。
Bing AIの利用方法や、利用するうえでのメリットや注意点にも触れているので、Bing AIの活用を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
Bing AIとは、Microsoft(マイクロソフト)が提供する検索エンジンBingにAIチャット機能が付与されたサービスのことです。従来の検索エンジンにAIを組み合わせたことで、「対話」が可能になりました。
AIについて詳しくは、「AI(人工知能)とは?仕組み・使い方・ビジネスの活用事例を解説」をご覧ください。
Bing AIに搭載されているAIは、昨今注目されている「ChatGPT」と同様の技術を使用した大規模言語モデル(LLM)の「GPTモデル」(Open AI社開発)が採用されています。
Bing AIは、GPT-4とBingの検索技術をかけ合わせ、チャットの回答時にWebサイトの情報を検索し、最新情報を含めた回答をすることが可能です。(※GPT-4は2021年9月までのデータが使用されていますが、Webサイトの検索をリアルタイムで行うことで、最新情報の出力を可能にしています。)
Microsoftは、この技術を「Microsoft Prometheus(マイクロソフトプロメテウス)モデル」と呼んでいます。
Bing AIのように対話により文章や画像などのコンテンツを自動的に生成できる生成AIについて詳しくは、「生成AI(ジェネレーティブAI)とは?種類・仕組み・活用例を解説」で解説しています。
2023年9月現在、Bing AIはBingアプリ・Edge・Chromeの環境で利用可能です。Bing AIを利用するには、パソコンはEdge・Chromeのブラウザ上で、スマホはBingアプリをダウンロードの上、利用してください。
Edge・Chromeで利用する場合、Microsoftアカウントにログインする必要があります。なお、Chromeから利用する場合は送信数の制限など、一部機能が制限されるため、全ての機能を使いたい場合は、パソコンからはEdgeブラウザを、スマホからはBingアプリを使用するのがおすすめです。
Bing AIの主な機能と特徴をリスト化すると、以下のとおりになります。
※テキストをタップすることで詳細な解説に移動できます。
質問の回答となるサイトのURLが表示される
画像生成ができる
文章の作成・執筆ができる
画像を送信して「ビジュアル検索」を使用できる
無料で全ての機能が利用できる
上記の機能が、全て無料で利用できるのがBing AIの大きな特徴と言えるでしょう。Bing AIのそれぞれの機能について詳細を確認していきましょう。
Bing AIに質問を入力すると、質問内容を解決できる回答とともに、回答の根拠となる「WebサイトのURL」が表示されます。また、最新のニュースや天気について質問した場合も、リアルタイム情報が回答として表示されるのがBing AIの特徴です。
回答を生成するうえでBing AIが参照したWebサイトが明記されることで、どこからこのデータが参照されたのか、ソース情報を簡単に確認できます。
ただし、Bing AIは質問に対してWebサイトのURLで回答をくれますが、1回の質問での対話回数が30ターンという制限があることも覚えておきましょう。質問1つに対する回答を「1ターン」とするため、30回まで質問のやり取りができます。
なお、1日あたりにテキストで質問できる回数に関しては300回までとなっています。
Bing AIには、画像生成が可能な「Bing Image Creator(ビング イメージ クリエイター)」というシステムが搭載されています。
この機能は、画像のイメージをテキストで送ることで、Bing AIが最適な画像を生成するものです。画像生成機能を使う際は、Microsoftアカウントへログインが必要です。
画像生成機能は、画像を生成するたびに、「ブースト」というポイント(クレジット)を消費する仕組みになっており、ブーストが減少するごとに生成スピードも低下していくのが特徴です。初回で25ポイントのブーストが与えられ、ブーストが0になった場合でも画像生成の使用は可能ですが、画像生成に多くの時間がかかるため注意が必要です。
Bing AIにはチャット機能のほかに、「作成」機能があります。Edgeブラウザの場合、上部にある「作成」と「チャット」の文字を選択することで、切り替えることが可能です。
「作成」機能では、メール・ブログなど、文章の投稿形式を決定した後に、文章のトーンを「より創造的に」「よりバランスよく」「より厳密に」などのイメージから選択することができます。
また、文章量の多いテキストを作成することも可能です。
ただし、チャット形式ではないため、指示は1回ずつしか送信できません。作成した文章に対し、追加で指示することができない点に注意してください。
チャット上に画像を送信し、画像に関して質問できるのもBing AIの特徴です。
例えば、建造物の画像を送信し、建物名や場所などの情報を聞き出すことも可能です。
Bing AIには有料プランが用意されていません。そのため、ここまで紹介した機能は全て無料で利用できます。2023年9月時点で、最新のGPT-4を搭載したチャットを無料で利用可能なのは、Bing AIのみです。
しかし、前述のようにやり取りの回数に制限がある点は注意しましょう。
Bing AIの機能のひとつである画像生成は、画像をイメージできる指示を送ることで利用可能です。
特別な設定をする必要がなく、チャットボックスに、生成してほしい画像を指示することで画像生成機能を利用できます。
例えば「寝ている猫の画像を生成して」といった指示を送ると、Bing AIが4つの候補となる画像を生成してくれます。
Bing AI上に画像生成の指示を送る際は、箇条書きにしてなるべく詳しく記載することが大切です。箇条書きにすることで、AIが指示内容をより正確に理解できるようになります。
また、画角や構図、彩度などを細かく指定することで、指示内容に沿った画像を生成することができるようになります。「手前に◯◯」「奥に◯◯」など、人間同士の「会話」の感覚でイメージを伝えることもおすすめです。
指示文の例は以下のとおりです。
Edgeブラウザのサイドバーから利用できる「作成」機能では、メール形式の文章を作成できるほか、記事形式の文章を生成する機能にも優れており、ブログ記事などに掲載する文章作成への活用も効果的です。
ただし、文章作成の精度はまだ完璧とは言えません。間違った情報を引用してしまうことや、生成された文章が不自然な表現になってしまう場合があります。また、「実際の経験に基づいた記述」を生成するのも難しいです。
そのため、Bing AIで生成された文章はあくまで「下書き」として捉え、加筆・修正を行うことをおすすめします。
Bing AIは、例えば「〜をテーマに文章を作成して」といったアバウトな指示内容では、実用的な文章を生成することは難しいでしょう。
Bing AI上で文章を作成する際は、記事タイトル、見出し、小見出しなどを細かく指示することで、テーマやイメージに近い文章を生成することができるようになります。
なお、タイトルや見出しを作成するうえでもBing AIを利用できます。
作成する記事のメインキーワードを基に「〜というキーワードの検索上位10記事の見出しを参考に、構成を考えてください。」と指示することで、検索エンジン上の結果を踏まえた記事構成を生成してくれます。
「テーマ」「タイトル」「見出し」「小見出し」が決定したら、以下のように指示を送信してみましょう。※見出しや小見出しは複数作成して指示を行ってください。
Bing AIは、主に「効率的な情報収集」「新しい発想の会得」「文章執筆の効率化」に役立ちます。
ここからは、Bing AIの機能を使ってなにができるのか、強みとメリットについて解説していきます。
従来の情報収集は、自分でインターネット検索をして、検索結果に表示される複数の文章から情報をまとめる必要がありました。Bing AIの場合は、質問を送るだけで、適切な情報をまとめてくれるため、効率的に情報収集を行えます。その結果、情報収集にかかる時間を大幅に削減できる点がメリットと言えます。
また、Bing AIで表示される情報には出典元も明記されていることから、情報源が正しいかを確認するのもスムーズです。
情報の出力方法も、箇条書きや表などの形を指定できるため、情報整理も容易です。
Bing AIで出力したものをそのまま使うのではなく、アイデアを得るうえでのサポートツールとしても利用できます。
特定のテーマに関連する文章アイデアの書き出しや、イラスト作成におけるアイデア抽出も可能です。文章や画像の作成に困った際は、Bing AIにテーマを決めてもらうのも一つの手でしょう。
Bing AIの機能である文章生成機能を利用することで、文章の執筆にかかる時間を短縮できます。特定のキーワードに関する記事や、メールの原稿作成なども可能なため、ゼロから執筆するよりも時間の短縮が期待できます。
ただし、先述の通り、作成した文章が必ずしも正しい内容のみで構成されているわけではありません。必ず情報源をチェックし、言い回しや構成に不備がないか確認しましょう。
さまざまな作業において効率化が実現できるBing AIですが、課題や注意点も存在します。これから紹介するBing AIの課題や注意点を理解したうえで、業務・作業に活用すると良いでしょう。
Bing AIを利用する際は、導き出す情報に誤ったものが含まれている可能性を考慮する必要があります。
Bing AIの仕様上、Web上の情報をつなぎ合わせた結果から回答を出力するため、情報に偏りや矛盾が生じる可能性があります。
ただし、Bing AIには生成された文章の出典元が明記されていますので、明記されている情報をチェックし、情報の正誤を確認しやすくなっています。
Bing AIは、過去の文章・画像データを学習しているため、生成された文章や画像が著作権侵害につながるリスクがゼロではありません。
Bing AIをはじめとした生成AIは、Web上にある情報を利用するため、似通った形の成果物が生成されることがあります。著作権侵害リスクを回避するうえでは、生成されたテキストや画像はそのまま使用せず、もし公開する場合は、成果物と酷似した著作物がWeb上に掲載されていないかをチェックすることをおすすめします。
Bing AIは、検索エンジンを通じて最新の情報を取りまとめます。そのため、ChatGPTよりも回答の生成に時間がかかる傾向にあります。
とはいえ、ChatGPTよりも最新の情報を導き出す機能には優れているため、情報の鮮度が必要な場合は、Bing AIの利用がおすすめです。
ここからはBing AIの使い方・始め方について解説します。Bing AIの利用を開始する際は、まずはBingのトップページにアクセスしてください。
なお、Bing AIに搭載されている全ての機能を利用するには、Microsoftアカウントにサインインする必要があります。
Bingへのアクセス・Microsoftアカウントへのサインイン後の手順は、以下からの項目を参考にしてください。
Webブラウザの「Microsoft Edge」か、検索エンジン「Bing」を利用することでBing AIの利用が可能になります。
パソコンから利用する場合は、Microsoftが提供するブラウザ「Edge」を利用します。Windowsのパソコンであれば、標準のブラウザとして最初からインストールされているはずです。
もし、Edgeブラウザがパソコンにインストールされていない場合は、Microsoft Edgeの公式サイトからインストールが可能です。また、Macの場合も同様にMac版のEdgeブラウザをインストールすることができます。
スマホから利用する場合は、App StoreやGoogle Playから「Edge」ブラウザを入手しましょう。
Edgeブラウザ、もしくはBingアプリを準備したあと、以下の手順でBing AIを使い始めることができます。
Bing AIの使用には、Microsoftアカウントが必要です。画面右上の「ログイン」をクリックして、Microsoftアカウントでログインしましょう。
なお、画面右上に自分の名前とアイコンが表示されている場合は、すでにログインされている状態です。
チャット画面を開いたら、実際に質問を送信してみましょう。質問は、チャット画面の下部から送信できます。
Bing AIに質問を送信すると、回答の生成とともに参照サイトもあわせて表示されます。
また、回答に関連した質問も選択肢として表示されるため、それらを選択することで対話を続けることも可能です。
チャット型AIはBing AIの他にもあり、代表的なものでChatGPTがあります。ただし、同じチャットAIでも機能面やできることが大きく変わります。まずはBing AIとChatGPTの違いを確認してみましょう。
Bing AI | ChatGPT | |
---|---|---|
アカウント | Microsoftに登録の上で作成 | 各種Webブラウザより サインアップ |
料金 | 無料 | 無料・有料プランあり (有料プラン:月額2,700円) |
言語モデル | GPT-4 | LLM |
画像作成 | 可 | 不可 ※ |
動画の表示 | 可 | Chromeの拡張機能などを 連携させることで可能 |
使用回数の制限 | テキスト送信 300/1日 |
無 |
文章作成 | 可 | 可 |
回答制限 | 30回 | 無 (無料版の場合) |
会話 (チャット機能) |
可 | 可 |
翻訳(言語数) | 100以上 | 100以上 |
音声入力 | 可 | 可 |
音声読み上げ | 可 | 可 |
プログラミング 出力 |
可 | 可 |
商用利用 | 不可 | 可 |
※2023年9月20日リリースの「DALL・E3」と連携することで画像生成が可能
Bing AIとChatGPTはいずれもOpenAI社が開発した言語モデルを利用しています。そのため、対話における自然さや、生成される文章の質は大きく変化するわけではありません。
一方で、提供中のプランや機能面ではいくつかの違いがあります。
例えば、Bing AIは無料プランのみであるのに対し、ChatGPTは月額2,700円の有料プランも用意されています。Bing AIでは無料のネット接続も、ChatGPTでは有料版のみで利用可能な機能です。
また、ChatGPTはチャットでの会話に特化しており、Bing AIは文章と画像の両方に対応しているという違いもあります。
これらの点だけ見ると無料のBing AIの方が優れているように見えますが、ChatGPTにもメリットはあります。
例えば、Bing AIは質問の回答制限が30回までと設定されているのに対し、ChatGPT(無料版および、有料版でGPT-3.5を選んだ場合)には1つのトピックにおける回答制限はありません。また、Bing AIは商用利用不可であるのに対し、ChatGPTは商用利用が可能です。
他にも、有料版のChatGPTには外部サービスと連携できる便利なプラグイン機能も搭載されています。
回答回数や外部サービスとの連携等を重視するヘビーユーザーの場合は、ChatGPT(有料版)の利用が適していると言えるでしょう。
高性能な言語モデルについては、「GPT-3とは?チャット型AIの機能や使い方を活用例を踏まえて解説!」で詳しく解説しています。
Bing AIは今後、テキスト以外の入力や外部連携も可能になります。今後実装される外部連携機能に関しては、ChatGPTにおける外部連携の機能とあわせて、以下の内容を参考にしてください。
Bing AI | ChatGPT | |
---|---|---|
主な外部連携機能 |
|
|
Bing AI:主な外部連携機能 |
---|
|
ChatGPT:主な外部連携機能 |
|
Bing AIには今後、動画・PDFファイルといったテキスト以外のデータ入力を識別する「マルチモーダル機能」が搭載される予定です。また、外部サービスと連携できる「Bing Actions」も追加されます。
2023年9月時点の最新の更新では、画像検索機能である「ビジュアルサーチ」も追加されています。
一方でChatGPTには、Web・外部サービスとの連携機能である「ChatGPT plugin」が追加されています。「Webブラウジング」や「Advanced Data Analysis(旧コードインタプリタ)」といったChatGPT公式のプラグイン(ChatGPTの機能を拡張するツール)により、ChatGPTのみでは不可能だったリアルタイムの情報を使った回答やPythonを使用したコードの実行が可能になりました。
他にも、2023年9月20日にリリースされた「DALL・E 3」と連携することで画像生成ができるようになりました。
またChatGPTには、デベロッパーが各自のデータにアクセスするプラグインを開発するうえでの基盤となる「Retrieval」も備わっています。
今回は、Microsoftにより提供されている、検索エンジンBingにAIチャット機能を付与した「Bing AI」について解説しました。
Bing AIはアプリ・ブラウザで利用できるシステムで、質問への回答や文章作成、画像生成が可能です。有料プランのあるChatGPTとは異なり完全無料で利用できるため、AI生成ツールの試運転にも推奨できます。
Bing AIの「作成」機能は細かい指示を出せる点が優秀で、メール作成のサポートや、Webサイトの要約なども可能です。
MicrosoftはBing AIを単なる検索AIではなく、あらゆるアプリやサービスのCopilot(=副操縦士)として位置付けようしているようです。
これからも成長を続けるであろうBing AIは、将来、新たな発想の創出や作業効率の向上など、私たちの生活に多くのメリットをもたらしてくれるはずです。
本記事で紹介した注意点や利用方法、ChatGPTとの違いも参考にしたうえで、Bing AIをぜひ体験してみてください。