GPT-3とは?
チャット型AIの機能や使い方を活用例を踏まえて解説!

GPTは、サンフランシスコの AI研究機関であるOpenAI社がリリースした言語モデルです。GPTという名は「Generative Pre-trained Transformer」の略語であり、ディープラーニング(深層学習)を使用して人間のような文章を生成することができます。
今回、焦点を当てるのは膨大なデータを扱うことができ、優れた言語処理機能を誇る「GPT-3」です。(※2023年8月地点の最新版はGPT-4です)

膨大なデータから情報を認識・学習することで、自然な文章を自動で作成できることはGPT-3の大きな特長と言えるでしょう。この記事では、「そもそもGPT-3とは?」「GPT-3はどんな特徴があるの?」といった疑問を解決します。

目次

1.GPT-3とは?【OpenAI開発の言語モデル】

  • 自然な文章を作成・理解できる
  • 並列処理でGPT-2以上のデータ処理速度を実現

2.GPT-3と機械学習・ディープラーニングの関連性

  • 機械学習:データに基づいた予測・判断が可能
  • ディープラーニング:ルール・パターンを学習可能

3.GPT-3ができること・活用例

  • 文章の自動生成
  • プログラムの作成・使用
  • GPT-3 APIを活用したツール開発
  • ChatGPT API搭載の「Viber AI チャット」

4.GPT-3の機能をChatGPTのAIチャットで体験しよう

  • 登録方法:各種アカウントでログイン可能
  • チャット送信をすると返答が来る

5.GPT-3の課題

  • 課題1:オリジナリティ
  • 課題2:情報の正確性

6.最新の言語モデルは「GPT-4」

7.GPT-3 まとめ

1. GPT-3とは?【OpenAI開発の言語モデル】

GPT-3(正式名称:Generative Pretrained Transformer version3)は、2020年7月にOpenAI社が発表した高性能な言語モデルです。日本語にも対応しています。

OpenAI社は「Transformer(トランスフォーマー)」と呼ばれるディープラーニングの手法を用いた言語モデルである、「GPT(2018年)」「GPT-2(2019年)」を発表しています。GPT-3はその後継の言語モデルです。
現在、「ChatGPT」で話題になっているOpenAI社は、自然言語処理(言語を機械が理解・処理し抽出する技術)の分野において、非常に優れた能力を持つAIモデルを開発している会社です。
ChatGPTとGPT-3をひとまとめに考えてしまいがちですが、ChatGPTはAIチャットツール、GPT-3はその中で使われている言語モデルです。
それぞれ別の存在である点にご注意ください。

GPT-3は「API」という技術を使い、他ツールと提携させて活用することが可能です。これによって、既存のツールやサービスにGPT-3の機能を組み込むことができるようになり、すでにさまざまなサービスに取り入れられています。
APIについて詳しくは、後述の「GPT-3 APIを活用したツール開発」をご覧ください。

なお、ディープラーニングについて詳しくは、「ディープラーニングとは?仕組みや活用例をわかりやすく解説」をご覧ください。

自然な文章を作成・理解できる

「言語モデル」とは、人間の会話を再現する技術のことです。人間が話したり書いたりする言葉を、単語の出現確率を計算することで再現します。

言語モデルの特徴は、大量のテキストデータを用いて学習を行うことです。GPT-3の学習方法の場合、インターネット上にある様々なWebサイトから収集された、45TB(テラバイト)もの膨大なテキストデータを使用しています。収集したテキストデータにいくつかの前処理を行い、570GBのデータセットを学習に用いています。

このデータセットに対して、過去最大の1,750億個もの「パラメータ数」を持つ「自己回帰型言語モデル」を学習することで、高い自然言語処理能力を実現しています。

パラメータ数
  • 機械学習中に使用できる変数の数
  • パラメータ数が多いほど、より複雑な処理が可能になる
自己回帰型言語モデル
  • 過去の文章を理解し、続けて出現する単語を予測していく機械学習の手法
  • 文章パターンから予測し、自然な文章を再現できる

これにより直前の単語の次にくる単語を高い精度で予測できるため、人間が入力した文(プロンプト)を受け取り、人間が見て意味が伝わる出力文を返すことが可能です。

文章や画像などのコンテンツを自動的に生成できる生成AIについて詳しくは、「生成AI(ジェネレーティブAI)とは?種類・仕組み・活用例を解説」で解説しています。

並列処理でGPT-2以上のデータ処理速度を実現

GPT-2までのアルゴリズムではデータを時系列で処理していましたが、バージョンアップしたGPT-3では並列処理が可能となりました。

並列処理とは、コンピューターに複数の処理装置を内蔵し、複数の命令の流れを同時に実行することです。データを順番に処理する時系列処理に対し、並列処理は複数のコア(命令を処理する装置)やプロセッサ(命令を実行するハードウェアの総称:別名CPU)を利用して同時に処理を行うため、処理速度が大きく向上します。

この並列処理を適用するには、適切なアルゴリズムやデータの分割方法などを検討する必要があることや、大規模なデータ処理や計算に適したコンピューターがあることなどが求められます。

GPT-2からGPT3に進化したことで、パラメータ数が15億から1,750億に増えたため、よりスムーズな並列処理が可能になりました。

2. GPT-3と機械学習・ディープラーニングの関連性

AI技術の促進を語る上で外せない要素が「機械学習」です。機械学習とは、データのパターンやルールをアルゴリズムに基づいて、情報分析する手法のことを指します。

耳にする機会が比較的多い「ディープラーニング」は、機械学習の領域の一つです。

ここからは、GPT-3にも活用されているディープラーニングや機械学習について、それぞれ詳しく解説していきます。

機械学習:データに基づいた予測・判断が可能

機械学習(Machine Learning)は、人工知能(AI)の一分野であり、コンピューターシステムに人間のような学習能力を持たせる技術です。

機械学習を活用することで、コンピューター自身が収集したデータを基に、人間が求めている回答を予測できるようになります。

特にGPT-3は、人間が日常で使う会話の文章を理解できる技術である自然言語処理(NLP)が優秀なモデルです。これにより言語生成、言語理解、翻訳、コンテンツ生成、プログラミング支援、カスタマーサポートなど高度な言語理解と生成が可能です。

なお、機械学習について詳しくは、「機械学習とは?仕組みや活用例までわかりやすく解説」をご覧ください。

ディープラーニング:ルール・パターンを学習可能

ディープラーニングとは、機械学習の一種で高度なタスクを学習・解決できる手法を指します。学習を行う際には、複数の処理層を用いてデータを理解・出力できる、多層の「ニューラルネットワーク」という技術を使用しています。ニュートラルネットワークは、情報を複数の層に分けて分析・理解していく技術のことです。

ディープラーニングは、特に大規模なデータセットと複雑なタスクに適しており、主に「画像認識」「自然言語処理(NLP)」「音声認識」などで活用されています。

ディープラーニングについて詳しくは、「ディープラーニングとは?仕組みや活用例をわかりやすく解説」をご覧ください。

GPT-3は、ディープラーニングの一種である「Transformer」を用いた極めて強力な自然言語処理(NLP)モデルであり、ディープラーニング技術の進化の一例として挙げられます。

また、GPT-3は、膨大なパラメータ数を保有しており、これにより多様な自然言語のパターンと文脈を理解できる能力を保有しています。そのため、文章生成、文章理解、翻訳、対話、文章の質問に答えるなどの出力を高い精度で実行することが可能です。

3. GPT-3ができること・活用例

ここからは、GPT-3は「何ができるのか」「どんな可能性があるのか」といった疑問に対し、代表的な活用例を踏まえ解説していきます。

文章の自動生成

GPT-3(2023年9月現在はGPT-3.5)が組み込まれている「ChatGPT」を利用することで、文章の自動生成が可能です。先述したとおり、GPT-3は精度が高い自然言語処理を行えるため、人間が作成したような文章を作成できます。

ChatGPTでは、こちらの指示の意図を理解した返答ができるため、文章の口調や記載してほしい要項など、細かい条件を付けることで、より要望に沿った返答が得られるでしょう。

ただし、作成された文章は、汎用的かつネット上の情報を踏襲した内容になるため、必ずしも正しい情報ではない可能性がある点に注意が必要です。

プログラムの作成・使用

GPT-3は、HTMLコーディングやCSS、ソースコード、プログラムコードなどを出力できます。また、コーディングの練習や、エラー検知、プログラミング言語学習などにも活用できます。

出力されたコードは自由に利用できるため、作業短縮が期待できる点は大きなメリットでしょう。

しかし、出力されたプログラムやコードには、誤りがある場合もあるため、注意が必要です。

GPT-3 APIを活用したツール開発

API(Application Programming Interface)は、ソフトウェアアプリケーションが他のアプリケーションやツールと連携するために使用される技術です。

GPT-3 APIを使って連携を行うことで、WEBツールやアプリ、チャット自動回答化など、様々なサービス開発に役立ちます。Pythonなどのプログラミング言語を用いることで、APIは多種多様に活用されます。

OpenAIが主に提供しているAPIのモデルは、下記のとおりです。(2023年8月現在)

ChatGPT API 現在のChatGPTのAPI
GPT-3 自然言語を理解および生成する旧モデル
GPT-3.5 自然言語とコードを理解および生成するモデル
GPT-4 より精度の高い自然言語処理を実現した最新モデル
DALL-E 自然言語から画像を生成・編集するモデル
Whisper 音声をテキストに変換するモデル
Embeddings 埋め込み (ベクトル表現)を生成するモデル
Codex コードを理解および生成するモデル
Moderation センシティブおよび 安全でない文章を検出するモデル

ChatGPT APIと今まで提供されていたGPT-3のAPIは、大きく2つの点が異なります。

  ChatGPT API GPT-3
AIモデル
AIモデル
GPT-3.5-turboを搭載
3,550億のパラメータ数
AIモデル
従来のGPT-3を搭載
1,750億のパラメータ数
価格
価格
ChatGPT APIのgpt-3.5-turboでは、「1,000トークン:$0.002」
価格
文章生成AIで一番高性能な「Language ModelのDavinci」で「1,000トークン(単語・文字表現の単位):$0.0200」

ChatGPT API搭載の「Viber AI チャット」

楽天グループが提供する「Rakuten Viber」の公式チャットボットである「Viber AI チャット」にもChatGPT APIが活用されています。

「Viber AI チャット」では、ChatGPT APIを用いて、ユーザーが入力した質問に応じてAIが自然な文章で回答を生成してくれます。

さらに画像生成AI「DALL・E 2」(ダリ・ツー)も搭載されており、指示した文章を基に画像を生成することも可能です。

また、ランダムなテーマでAIが画像と文章を生成するなどの機能も搭載されています。

Viber AI チャットについて詳しくは、こちらをご覧ください。

4. GPT-3の機能をChatGPTのAIチャットで体験しよう

ChatGPTには「GPT-3」の後継である「GPT-3.5」と「GPT-4」のモデルが使用されています。自然言語処理タスクに優れているツールとの対話を通じて、情報提供や問題解決が可能です。

登録方法:各種アカウントでログイン可能

ChatGPTを始めるには、OpenAI公式サイト内のChatGPTのページにアクセスし、右上の「Get started」もしくは左下の「Try on web」をクリック(タップ)してください。

次にアカウント登録画面が表示されます。アカウントを作成する場合は「Sign up」ボタンを押します。GoogleやMicrosoftのアカウントがあれば、すぐにログインできるため、おすすめです。

チャット送信をすると返答が来る

チャットを送信すると質問内容に応じて返答が作成されます。

文章はChatGPTが理解しやすいよう、具体な内容を送るのがポイントです。また、過去のチャットログは保存されていくため、あとから見直すことも可能です。

5. GPT-3の課題

GPT-3は、高性能な自然言語処理を持っている言語モデルですが、Webサイトから収集されたデータを基に出力される仕組み上、課題もあります。特に、企業に務める人が業務でGPT-3を使用する際に気を付けるべきポイントとしては、以下などが挙げられます。

課題1:オリジナリティ

学習した情報は、Web上の情報やデータを基に出力されるため、オリジナリティのある文章や、実際に経験したレビューなどを含む文章の生成にはまだ課題が残ります。

また、指示内容(プロンプト)を細かく記載しない場合、「文章の表現に統一性がない」「文章がかたい」「文章が単調」と言った現象が起こります。

オリジナリティを持たせたい場合、GPT-3で出力した文章をそのまま使うのではなく、自身の手で修正・監修を行うことをおすすめします。

課題2:情報の正確性

単語や文章のつながりのパターンを学習し、最も確率の高い言葉をつなげて回答を出力するという性質上、誤ったパターンを抽出してしまう可能性があることも課題です。

そのため、GPT-3が解説を行った文章をそのまま使う場合、「この情報は本当に正しいのか」といった正確性を確認するのが良いでしょう。

6. 最新の言語モデルは「GPT-4」

GPTシリーズはGPT-1から始まり、GPT-2、GPT-3、GPT-3.5を経て現在はGPT-4までリリースされています。数字が大きくなるほど機能も向上しています。

ChatGPTの場合、GPT-3.5を使ったものは無料で使用できますが、GPT-4を使用する場合は、料金を支払う必要があります。GPT-4は、カジュアルな会話を行う分にはGPT-3.5と大きな違いはみられないものの、質問内容の複雑さが増していくほどGPT-3.5との違いが分かりやすくなるとも言われています。

また、GPT-4は文章だけでなく写真や画像にも対応した「マルチモーダル」なモデルであると発表されています。現在のChatGPTではまだこれらの機能は利用できませんが、将来的には写真や画像からテキストを生成することが可能になるかもしれません。

7. GPT-3 まとめ

今回は、GPT-3について解説しました。GPT-3は膨大なデータセットから構築された言語モデルで、文脈から適切な応答を生成することができます。

これまで人力で行っていた文章生成やプログラミング生成も自動化が可能になったことで、DX推進にも大きな影響を及ぼしました。GPTの進化、動向はこれからも色々なところで注目されていくでしょう。

【監修者】酒井 麻里子

ITライター/新技術ウォッチャー。XR、ジェネレーティブAIなどの新しいテクノロジーや企業のDX取材、技術者・経営者へのインタビュー、技術解説記事などを執筆。ビジネスを軸にしたXRと最新テクノロジーのWEBマガジン『TechComm-R』運営。Yahoo!ニュース公式コメンテーター(ITジャンル)。株式会社ウレルブン代表。

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1.GPT-3とは?【OpenAI開発の言語モデル】

2.GPT-3と機械学習・ディープラーニングの関連性

3.GPT-3ができること・活用例

4.GPT-3の機能をChatGPTのAIチャットで体験しよう

5.GPT-3の課題

6.最新の言語モデルは「GPT-4」

7.GPT-3 まとめ