ディープラーニングとは?
仕組みや活用例をわかりやすく解説

ディープラーニングという言葉を見聞きしたことがあるものの、具体的な仕組みや活用例についてはよく分からないという方もいるのではないでしょうか。

この記事では、ディープラーニングの学習方法の種類やできること、ビジネスでディープラーニングを導入する流れなどについて解説します。

目次

1.ディープラーニング(深層学習)とは

  • 機械学習・AI(人工知能)との違い
  • ディープラーニングが重要視される理由

2.ディープラーニングの仕組み

3.ディープラーニングの学習方法の種類

  • 畳み込みニューラルネットワーク(CNN)
  • 再帰型ニューラルネットワーク(RNN)
  • Long Short Term Memory(LSTM)
  • 敵対的生成ネットワーク(GAN)

4.ディープラーニングでできること

  • 自然言語処理
  • 画像認識
  • 音声認識
  • 異常検知

5.ディープラーニングの導入の流れ

6.ディープラーニングの活用例

  • 空港の入国手続き
  • 通販サイトでの商品のレコメンド
  • 自動運転・運転補助

7.ディープラーニング まとめ

1. ディープラーニング(深層学習)とは

ディープラーニングとは、AIが学習するための手法のひとつで、深層学習とも呼ばれます。人間の神経細胞を模したニューラルネットワークという技術により、膨大なデータの中から特定のパターンやルールを学ぶことが可能です。

ディープラーニングが登場する以前のアルゴリズムでは、パターンやルールを発見する上で注目すべき特徴量を人間が設定することが一般的でした。一方、ディープラーニングでは複数の層を用いた計算処理により、何に注目するべきかをAIが自己判断して学習モデルを構築できます。

機械学習・AI(人工知能)との違い

ディープラーニングと機械学習、AI(人工知能)は近い分野の用語ではあるものの、それぞれ意味するものが異なります。

機械学習とは、コンピュータによる判断や選択ができるようにする技術を指します。アルゴリズムを用いてデータの中から類似のパターンや法則性を学習する手法が機械学習と呼ばれます。人間では処理が難しいような大量のデータなども、機械学習なら簡単に扱うことが可能です。ディープラーニング(深層学習)は、数ある機械学習の手法の中のひとつです。

なお、機械学習について詳しくは、「機械学習とは?仕組みや活用例までわかりやすく解説」をご覧ください。

AI(人工知能)という用語には、明確な定義はありません。人間の思考のようなプロセスを実行できるプログラムや技術全般が人工知能と呼ばれます。

AIについて詳しく知りたい方は「AI(人工知能)とは?仕組み・使い方・ビジネスの活用事例を解説」をご覧ください。

ディープラーニングが重要視される理由

人間が気付かなかったような法則を発見できるディープラーニングは、ビジネスや研究開発などの分野でイノベーションを生み出す可能性があるため、注目されています。2012年に行われたILSVRCという画像認識コンテストでは、ディープラーニングで学習を行ったトロント大学の「Super Vision」が2位以下を大きく引き離し優勝したことで注目を集めました。

近年は、ディープラーニングで大量のデータを短時間で学習するための技術が登場し、認識精度がさらに高まっています。例えば、GPU(Graphics Processing Unit:画像処理装置)をクラスター(複数のコンピュータを用いて計算や処理を行う仕組み)やクラウドと組み合わせることで、効率的な学習が可能です。

2. ディープラーニングの仕組み

ディープラーニングには、人間や動物の脳を構成するニューロンという神経細胞をモデルとしたアルゴリズムが用いられています。

脳には膨大な数のニューロンが存在し、各ニューロンの間で電気信号を伝搬することで様々な情報処理をしています。ディープラーニングも同様に、ニューラルネットワークを構成する複数の要素間で情報を伝搬させ、学習モデルを構築します。

ディープラーニングのアルゴリズムは、入力層・隠れ層(中間層)・出力層という3つの層で構成されることが一般的です。入力層にインプットされた情報に対して、隠れ層で重み付けと呼ばれる評価項目に重要度(重み)をつけて総合評価をだす計算処理を行い、出力層からアウトプットします。

アウトプットされた情報と本来出力されるべき正解との誤差が小さくなるように、隠れ層の計算処理が自動調整されるという流れが、ディープラーニングの基本的な仕組みです。このアルゴリズムにより、データに対して注目すべき特徴量を人間が予め指定しなくても学習モデルを構築できます。

3. ディープラーニングの学習方法の種類

ディープラーニングの学習に使用される主な手法は次の通りです。

  • 畳み込みニューラルネットワーク(CNN)
  • 再帰型ニューラルネットワーク(RNN)
  • Long Short Term Memory(LSTM)
  • 敵対的生成ネットワーク(GAN)

ここからはそれぞれの学習方法について解説していきます。

畳み込みニューラルネットワーク(CNN)

畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network)は、インプットされたデータを「畳み込み」と呼ばれる処理で蓄積し、学習する手法です。CNNには、通常のニューラルネットワークにはない、畳み込み層とプーリング層と呼ばれるレイヤーが存在します。画像認識など、現在のディープラーニング技術の多くにCNNが用いられています。

再帰型ニューラルネットワーク(RNN)

再帰型ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network:RNN)は、隠れ層での処理を繰り返し行う学習方法です。RNNの特徴として、ある時点での計算結果を次の時点での計算に再帰的に用いることが挙げられます。この特徴により、再帰型ニューラルネットワークは、時系列データの分析に用いられています。また、時系列データだけでなく、テキストデータなどを対象とした自然言語処理にも応用されます。

Long Short Term Memory(LSTM)

Long Short Term Memory(LSTM)は短・長期記憶という意味を持つ学習方法で、長い時系列データを高い精度で学習できるように開発されました。LSTMは、RNNの、隠れ層にLSTM ブロックと呼ばれるメモリと、3つのゲートを持つブロック構造を採用したことで、長期の時系列データでも、処理を行えるようになりました。

敵対的生成ネットワーク(GAN)

敵対的生成ネットワーク(Generative Adversarial Networks:GAN)は、2つのニューラルネットワークが互いに競い合いながら学習モデルを構築する仕組みです。生成ネットワークが作ったデータを識別ネットワークが判断するという処理を繰り返し、学習モデルの精度を高めます。GANは画像認識の分野でよく用いられる手法です。

4. ディープラーニングでできること

ディープラーニングの仕組みを用いると、文章生成や画像認識など様々なタスクを実行できます。ディープラーニングでできることの例は次の通りです。

自然言語処理

自然言語処理とは、人間が日常的に使っている言葉を機械によって扱うことです。膨大なテキストデータをディープラーニングで学習すると、ある単語の次に来る言葉を予測できるようになります。インターネット上の様々な文章を学習したモデルにより、文章の作成や内容の要約、外国語への翻訳などが可能です。

画像認識

静止画や動画などのデータ内に表示されている内容を読み取る画像認識にも、ディープラーニングの技術が使われています。画像認識の性能は、ディープラーニングの登場によって飛躍的に向上しました。監視カメラに写っている動体の検知や顔認識による認証システム、高精度での手書き文字の読み取りなどが画像認識の主な活用例です。

音声認識

文字や画像などの視覚情報だけでなく、音声データもディープラーニングで学習できます。人間が話している声のデータからパターンを読み取り、高い精度で認識することが可能です。
スマートフォンで利用できるSiriやGoogleアシスタントの高い性能は、ディープラーニングの技術によって支えられています。会議を録音したデータからの文字起こしや、スマートスピーカーが発話する音声の合成などにもディープラーニングが応用されています。

異常検知

データのパターンを読み取れるディープラーニングの技術は、一定のパターンから外れている異常なデータの検出にも利用できます。ディープラーニングの登場により、従来のAIと比べて異常検知の処理精度が向上しました。品質管理やセキュリティーシステムの監視に、ディープラーニングが用いられています。また、画像認識や音声認識の技術を組み合わせた異常検知も可能です。

5. ディープラーニングの導入の流れ

ディープラーニングを用いたシステムをビジネスに導入する場合、構想からPoC、実装、運用までの4つのプロセスを経ることが一般的です。

構想の段階では、どのような業務に対してディープラーニングを活用するかを検討します。システムによって効率化できる業務を具体的に洗い出すことが重要です。

PoCは「Proof of Concept」の略称で、システムの効果性を検証することを指します。実際のシステムを作り始める前に、小規模なテスト版のシステムを作って試すことで、失敗のリスクを抑えられます。

効果性が確認できた段階で、システムの実装を開始します。実装を進めるには、ディープラーニングの知識だけでなくシステム開発やプログラミングのスキルも必要です。

最後に、システムの運用を開始します。運用後に得られたデータを分析し、必要に応じて改善を行うことが、システムの効果性を高めるためのポイントです。

6. ディープラーニングの活用例

ディープラーニングの技術は、様々なサービスや製品で活用されています。主な活用例は次の通りです。

空港の入国手続き

空港では、入国手続きを簡単にするためにディープラーニングが活用されています。顔認証用のゲートで撮影した画像と、パスポート内に保存されている画像データを照合することで、手続きの簡素化が可能です。

ディープラーニングで作成された学習モデルでは、表情や化粧などによる変化があっても高精度で顔認識ができます。入国時の顔認証システムは日本の空港でも活用されています。

通販サイトでの商品のレコメンド

通販サイトにアクセスした人におすすめ商品を提案する機能も、ディープラーニングの活用例のひとつです。購入履歴や閲覧したページから、おすすめの商品を自動で提案できます。

また、ディープラーニングを使った画像認識技術は、通販サイトでの画像検索による商品購入の簡易化にも役立てられています。

自動運転・運転補助

ディープラーニングによって画像認識の処理精度が高まり、自動運転車が信号や標識、障害物などを識別できるようになりました。また、画像認識が向上したことで、緊急時の自動ブレーキなど、安全運転を支援するための補助システムも実現しています。

7. ディープラーニング まとめ

複数の層を用いてデータを学習するディープラーニングは、応用範囲の広い技術です。自然言語処理や画像認識、音声認識など様々なタスクにディープラーニングが活用されています。ディープラーニングをビジネスに導入する際は、構想やPoCなどの段階を経てシステムの実装・運用を進めましょう。

【監修者】酒井 麻里子

ITライター/新技術ウォッチャー。XR、ジェネレーティブAIなどの新しいテクノロジーや企業のDX取材、技術者・経営者へのインタビュー、技術解説記事などを執筆。ビジネスを軸にしたXRと最新テクノロジーのWEBマガジン『TechComm-R』運営。Yahoo!ニュース公式コメンテーター(ITジャンル)。株式会社ウレルブン代表。

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1.ディープラーニング(深層学習)とは

2.ディープラーニングの仕組み

3.ディープラーニングの学習方法の種類

4.ディープラーニングでできること

5.ディープラーニングの導入の流れ

6.ディープラーニングの活用例

7.ディープラーニング まとめ