ブロックチェーンとは?
仕組み・種類・実装のメリットを初心者向けに解説!

第二のインターネットとも言われているWeb3.0がいよいよ幕を開け始めました。その基盤として、主役となるのが「ブロックチェーン」技術です。ブロックチェーンという言葉を聞いたことがあっても、その仕組みについて理解している方は少ないのではないでしょうか。中には仮想通貨と同じ意味だと勘違いしているケースも見られます。
この記事では、ブロックチェーンの基礎知識や仕組み、メリットとデメリット、さらに活用事例についてご紹介します。

目次

1.ブロックチェーンとは?【一貫した履歴の維持システム】

  • データを「ブロック」でまとめて「ハッシュ値」でつなげる
  • ノード(スマホ・PCなどの通信機器)間でデータを管理

2.ブロックチェーンのデータ管理の仕組み

  • 集中管理型システム:第三者機関が履歴を管理
  • 分散型管理システム:すべての履歴を全員で管理

3.ブロックチェーンがもたらす可能性

  • Web3.0の基盤
  • 独自プラットフォームの作成(地域内で使える独自のポイント制度など)
  • 暗号資産取引
  • NFTとGameFi

4.ブロックチェーンの種類

  • パブリックチェーン:参加制限なし
  • プライベートチェーン:参加に承認が必要
  • コンソーシアムチェーン:企業間で管理可能

5.ブロックチェーンを実装するメリット

  • 改ざんできない環境にできる
  • 信頼できるデータを残すことができる
  • ランニングコストを軽減することができる

6.ブロックチェーンのデメリット

  • 過去の入力データの取り消し・削除ができない
  • 処理に時間がかかる場合がある
  • 悪意を持った第三者が参加する可能性がある

7.仮想通貨(ビットコイン)との関連性

8.ブロックチェーンの活用事例

  • ショッピングサイトのトレーサビリティを確保
  • 有名アイドルのチケット・入場システム
  • スポーツ業界支援のクラウドファンディング
  • NFTアートの保有者履歴の管理

9.まとめ

1. ブロックチェーンとは?【一貫した履歴の維持システム】

ブロックチェーンとは、わかりやすく言うと「ネットワーク上の取引履歴を正しく記録できるデータベース」のことです。今までは過去データとの紐づけが難しいという課題がありましたが、ブロックチェーンを搭載することで、過去データを含め、一貫した履歴の管理ができるようになりました。
ブロックチェーンのデータベースは、ネットワークの参加者全員で共有が可能です。複数人で管理する仕組みのため、「削除が不可能で、改ざんや修正も極めて難しい」といった特徴があります。
また、ブロックチェーンはサーバーを分散して管理しているため、そのすべてのサーバーが同時に止まらない限りは、システムダウンしないという特徴もあります。
これらの仕組みにより、データの信頼性が高く、システムダウンの心配もいらないデータベースが実現できます。
ブロックチェーンでは、ネットワーク上で発生した全取引履歴を「ブロック」と呼ばれる記録の塊に格納します。こうして生成されたブロックが、時系列に鎖(チェーン)のように繋がっていくデータ構造がブロックチェーンの名前の由来です。

ブロックチェーンのイメージ

ブロックチェーンの技術の活用事例として、「ビットコイン」が代表例に挙げられます。ビットコインは、2008年に「サトシ・ナカモト」という名の人物がインターネット上に発表した論文からスタートし、これによりブロックチェーンは一躍有名になりました。ちなみに、「サトシ・ナカモト」という人物は名乗りを上げておらず、現在もその所在は明かされておりません。(参考:日本語で読むビットコイン原論文 [by Satoshi Nakamoto])
ブロックチェーンとビットコインの関連性について詳しくは、
後述の「仮想通貨(ビットコイン)との関連性」をご覧ください。

データを「ブロック」でまとめて「ハッシュ値」でつなげる

ブロックチェーンでは、一定の時間内で行われた取引(トランザクション)を集めてブロックに登録しますが、その際に取引データに加えて「ハッシュ値」を含めるようにします。
ハッシュ値とは、ハッシュ関数を使って入力した値を英数字の羅列に変換する暗号技術です。データが改ざんされたことを検出でき、不正のないデータを識別するIDとして機能します。
このハッシュ値にエラーがなければ、ネットワーク上のブロックに記録されたデータが次々と繋がっていきます。

ハッシュ値とは

ハッシュ関数は非常に複雑で、ハッシュ値から元のデータを逆算することはまず不可能です。そのため、ハッシュ値が一致するブロックは、必ず直前のブロックと隣り合っていることが分かります。
もし悪意のある第三者がデータを改ざんしようとするとハッシュ値が変わるため、その後に続くすべてのブロックとの整合性が崩れてしまい、すぐに改ざんが分かる仕組みになっています。改ざんするためには、後に続くブロックのハッシュ値を計算して、繋ぎ直さなければいけません。

トランザクションについて詳しくは、「トランザクションとは?言葉の意味やIT分野での活用例を解説」をご覧ください。

ハッシュ値で改ざん・損傷を自動検知

ノード(スマホ・PCなどの通信機器)間でデータを管理

ブロックチェーンの説明で登場する用語の一つが「ノード」です。ノードとは、取引情報の監視や管理、取引承認などを行うスマホやPCなどの電子デバイスや通信機器を意味します。
ブロックチェーンは、ネットワーク上にある複数のノード間で同じデジタルデータを管理し、数学的検証や暗号技術などを組み合わせています。これにより、不特定多数の取引を可能にしたり、記録されたデータが正しいことを保証できたりするようにしています。ただし、管理するデータ量が膨大になると、スペックが高い電子機器が必要です。
各ノードは1対1で繋がり、サーバーを介する必要がないため、サービスを提供する会社や金融機関といった管理者を必要としません。長年の課題であった高額な手数料の支払いや個人データの無償提供といったことから解放される点が、ブロックチェーンの画期的な特徴のひとつです。

ノード:スマホ・PCなどの電子危機

2. ブロックチェーンのデータ管理の仕組み

ブロックチェーンがどのようにデータを管理しているのかを理解するには、不特定多数の人が存在するネットワーク上で、お互いに直接データをやり取りできる「P2P」について知る必要があります。P2Pとは「ピア・ツー・ピア」と言い、各ノードが対等な関係でデータを交信するシステムを意味します。
また、ブロックチェーンでは特定の人だけに情報を伝える「公開鍵暗号」という暗号技術が用いられています。「公開鍵暗号」は、「公開鍵」を用いて暗号化した文書を「秘密鍵」で復号できるという仕組みです。例えるなら、「公開鍵」が銀行の口座番号で、「秘密鍵」が銀行口座の暗証番号になります。

公開鍵暗号

履歴を管理するシステムには主に「集中管理型システム」と「分散管理型システム」の2つがあります。ブロックチェーンの場合、分散管理型システムが採用されています。
ここからはブロックチェーンの管理システムについて深く理解できるよう、集中管理型システムと分散管理型システムの違いを解説していきます。

集中管理型システム:第三者機関が履歴を管理

集中管理型とは、銀行や証券取引所、あるいは巨大IT企業など特定の中央管理体が一括して履歴を管理するシステムです。そのため、情報の信頼性は中央管理体である第三者機関が担保します。
また、参加者はシステムを使用する際に手数料を支払う必要があるのも集中管理型の大きな特徴であり、取引の処理速度も管理体の処理能力に依存します。

集中管理型システム

分散型管理システム:すべての履歴を全員で管理

分散型管理システムでは、すべての取引情報の履歴がすべてのノードに分散して管理されます。中央管理体は存在しないため、手数料不要、もしくは低額で済み、処理速度は参加者の接続環境のスペックに依存します。
例えば、暗号資産であるビットコインの場合、通貨は銀行に預けるのではなく、デバイス内の自身のウォレット(財布機能)で管理されます。送金や決済も金融機関を介することはなく、すべて参加者同士で直接やり取りすることになります。これは分散型のシステムによって実現される仕組みです。

分散型管理システム

3. ブロックチェーンがもたらす可能性

ブロックチェーンを活用するとさまざまな社会的・経済的効果が期待できます。以下で具体例を紹介していきます。

Web3.0の基盤

ブロックチェーンがもたらす最も大きな効果は第二のインターネットといわれるWeb3.0の基盤としての活用です。「スマートコントラクト(プログラムされた通りに契約が自動実行される仕組み)」という技術を利用することで、ブロックチェーン上にさまざまなアプリケーションを実装することができます。
ブロックチェーンは非改ざん性とセキュリティの強さにより信頼性が担保されるため、このスマートコントラクトを活用することで、分散型金融(DeFi)の実装が可能になります。分散型金融(DeFi)とは、暗号資産関連の取引を仲介者なしで行える金融サービスのことです。
分散型金融(DeFi)の実装により、銀行や保険、証券といった金融機関を介さずに融資や送金、資金調達、保険といった金融サービスを利用することができるようになります。
さらに、管理者なしで事業・プロジェクトを推進できる分散型自律組織(DAO)の構築により、企業やビジネス取引の自動化、ビットコインなどの直接的な人間関係を必要としない自動的なやり取りも可能になります。
従来型組織では、管理者(リーダー)が意思決定をする影響で、利益が組織上層部に集中する傾向がありましたが、分散型自律組織(DAO)では管理者(リーダー)を必要としないため、組織に貢献した人に報酬・評価が付与されやすいという特徴があります。
以上の要素から、ブロックチェーンは次世代型のビジネスモデルや商慣行の構築にも大きな影響を与える技術として期待されています。

独自プラットフォームの作成(地域内で使える独自のポイント制度など)

ブロックチェーンを使うと、政府や巨大IT企業などの中央管理者に頼らずに、独自のプラットフォームを構築することが可能です。
以下は、ブロックチェーンの技術が活用されている具体例です。

  • 独自ポイント制度の導入:商店街や特定地域で使えるポイントを管理
  • 患者データの管理:医療グループ内で患者の情報を共有
  • 食品の追跡管理:食材の生産地や加工情報を公開し安全性アピール
  • サプライチェーン:物流の追跡管理
  • ブランド品や輸入品の追跡管理:商品の品質や輸入場所の情報を管理

ブロックチェーンでは、一度ブロックに格納した取引データは絶対に消去されず、改ざんもほぼ不可能です。そのため、高い安全性と秘匿性が求められるプラットフォームの構築において、大いに貢献できる技術と考えられています。

暗号資産取引

ブロックチェーンの概念やサービス利用において認知度を飛躍的に高めた要因の一つは、ビットコインをはじめとする暗号資産の取引です。ビットコインを含め、数万種類もの数がある暗号資産は、国や地域、身分に関わらず24時間365日いつでもどこからでも利用できるという利点があります。
また、送金と着金がほぼ同時に行われることから、法定通貨の代替として期待されています。事実、2021年9月7日より中南米にあるエルサルバドルでは、ビットコインが法定通貨として認められています。(※2023年7月現在)
ただし、ブロックチェーン自体の安全性は高いものの、仮想通貨取引所など第三者が管理する場でのサイバー攻撃被害が後を絶ちません。さらに、国内外においては暗号資産に関する法整備が遅れており、利用者の拡大に歯止めをかけています。これらの課題が解決されることで、ブロックチェーンを通じた暗号資産の役割はさらに重要性を増すものと期待されます。

NFTとGameFi

スマートコントラクトを活用し、イーサリアムをはじめとする仮想通過プラットフォーム上では「NFT(非代替性トークン)取引」が盛んに行われています。
NFTとは、複製ではない世界にひとつだけのデジタル資産のことです。デジタル領域では、画像・動画・音楽などの複製が容易な点が懸念されますが、自身が作成したデジタル資産が本物であることを証明・保証できる安心感があるのが、NFTの特徴と言えます。
デジタルデータの所有権を証明することは難しい性質がありますが、NFTを使用することでデジタルデータに独自の所有権を付与することができます。そのため、デジタルアートやブランド品が高額で取引されるケースもあります。
さらに、ブロックチェーンゲームではゲームキャラクターやアイテムをNFTとして売買することができます。このようなブロックチェーンゲームは人気が高まっており、プレイヤーはゲームを楽しみながらも報酬を得ることができる「GameFi(ゲーミファイ)」としても注目を集めています。

4. ブロックチェーンの種類

ブロックチェーンの種類は「パブリックチェーン」「プライベートチェーン」「コンソーシアムチェーン」の3つに分けることができます。それぞれの特徴は以下の通りです。

  パブリック プライベート コンソーシアム
管理者の有無 なし あり(単独) あり(複数企業)
ネットワークの参加 不特定多数 不特定多数 組織内
トランザクション速度 遅い 速い 速い

パブリックチェーン:参加制限なし

パブリックチェーンは、誰でも自由にネットワークに参加できるオープンなブロックチェーンの形態です。ビットコインなどの仮想通貨で広く使用されており、ソフトウェアを構成しているプログラム言語のソースコード(ソースプログラム)が無償で一般公開されているため、誰もがその技術を利用したりコピーしたりすることができます。
また、ユーザーの取引履歴はすべてが公開され、誰でも閲覧可能になっているため情報の透明性に優れている点が大きな特徴です。
ただし、パブリックチェーンでは参加者の数が多くなることが一般的であり、ルール変更にはすべてのユーザーの合意が必要となるため、時間がかかるのが難点です。

パブリックチェーン

プライベートチェーン:参加に承認が必要

プライベートチェーンは、ネットワーク参加者が許可制で選定されるブロックチェーンのことで、単一の管理者によって管理されるという特徴があります。そのため、パブリックチェーンとは異なり、取引情報の監視や管理、取引承認などを行う通信機器(ノード)の運用者に対して報酬が不要で、ネットワークの動作を迅速かつ効率的に行うことができます。

また、プライベートチェーンはネットワークの変更を比較的簡単に行うことができ、書き込み・読み込みの権限もコントロール可能です。そのため、セキュリティやプライバシーが重要視される企業や組織内で頻繁に利用されるブロックチェーンといえます。
しかし、パブリックチェーンと比較すると、透明性や公共性に欠ける点には注意が必要です。

プライベートチェーン

コンソーシアムチェーン:企業間で管理可能

コンソーシアムチェーンは複数の企業間で運用されるブロックチェーンです。コンソーシアムチェーンでは、特定のノードの数が事前に選定されており、プライベートチェーンと同様に迅速なデータ処理と透明性が担保されています。
また、同じ業界に属する複数の企業が提携し、管理者となって取引や情報伝達の効率化を図ることが主な目的となっています。そのため、セキュリティに重点を置いたシステムが構築されます。
代表的な例としては、IBMが主導して開発が進められている「Hyperledger Fabric」や、R3が開発し、トヨタグループや大林組などで活用されている「Corda」があります。

コンソーシアムチェーン

5.ブロックチェーンを実装するメリット

ここからは、注目を集めているブロックチェーンを実装するメリットについて、詳しく解説していきます。

改ざんできない環境にできる

ブロックチェーンは、通信の際に、取引データを英数字の羅列に暗号化したハッシュ値を使うことによって、データの改ざんを検出することができるのが大きな利点です。
特にパブリックチェーンの場合はオープンソースであり、参加者の背景や意図が分からない状況で運用されます。そのため、常にデータ改ざんリスクにさらされます。しかし、暗号技術によってデータの不可逆性(改ざんされない)が担保されているため、ブロックチェーンは安全性の高い環境を提供することができるのです。

信頼できるデータを残すことができる

ブロックチェーンでは、参加者全員が取引データの正当性を承認しなければブロックに格納することができません。もし取引データの中に嘘や不正な情報があれば、それらを排除して信頼できるデータのみを選択して、格納できます。
さらに、ノード間のブロック追加に関しては、コンセンサスアルゴリズム(合意形成)によって正当性が検証されます。正当性が確認できない場合、そのブロックは前のブロックとの間でチェーンを繋ぐことができません。
コンセンサスアルゴリズムとは、ノード間の信頼性を確認する仕組みです。ブロックをブロックチェーンに接続するために必要なルールです。この仕組みにより、なりすましノードからの偽ブロックの混入を防ぐことができます。

ランニングコストを軽減することができる

ブロックチェーンは、ランニングコストの削減も期待できます。従来の中央サーバーによって一元管理されているネットワークシステムでは、一つのサーバーですべてのデータを記録していたため、高い維持コストのかかる高性能サーバーが必要でした。
一方、ブロックチェーンでは、参加しているノードがすべてのトランザクションの処理を分散的に受け持ちます。そのため、運営者側には処理を行う負担が分散され、高性能なサーバーを用意する必要がなくなります。これにより、ランニングコストを軽減しながらブロックチェーンを活用したシステムの構築が可能となります。
ただし、チェーンが長くなった(データ保存量が多い状態)ときにすべてのブロックを検証するとサーバーに負荷がかかるため、サーバーを跨ったチェーンの管理が必要なこともあります。

トランザクションについて詳しくは、「トランザクションとは?言葉の意味やIT分野での活用例を解説」をご覧ください。

6.ブロックチェーンのデメリット

次に、ブロックチェーンを実装した際に起こり得る課題について解説していきます。メリットだけでなく、デメリット面も実装前に確認していきましょう。

過去の入力データの取り消し・削除ができない

ブロックチェーンの特性としてデータ履歴を改ざんできないという点がありますが、同時に過去データの取り消しや削除が困難であるというデメリットも存在します。
データの修正や削除を行うためには、関連するすべてのブロックを書き換える必要がありますが、ブロック内には複数の取引がまとめて格納されるため書き換えることは事実上不可能です。
どうしてもデータを削除したい場合は削除マークのデータを入れておくことによって、一部のデータを削除されたように見せることは可能です。しかしこの方法であっても、不特定多数のユーザーが未削除のデータを閲覧できる状態は変わらず、削除マークのデータを入れたとしても完璧な対策とは言えないでしょう。

処理に時間がかかる場合がある

ブロックチェーンはノード間でデータの正当性を検証する合意形成を行うため、取引の処理に時間がかかる場合があります。
特に暗号資産取引では「スケーラビリティ問題」と呼ばれる課題が取り上げられています。スケーラビリティ問題とは、取引処理で遅延が発生し、手数料が高騰化する状況を指します。このような問題が解消されないとユーザー離れを招く可能性が高まります。そのため、処理時間の短さが、ブロックチェーンのプラットフォームの価値に大きな影響を与える要素となります。

悪意を持った第三者が参加する可能性がある

パブリックチェーンの場合は誰でも参加できるため、相手がどのような人物なのか不明なまま取引が行われます。このオープンな性質自体はメリットといえますが、同時に悪意を持ったユーザーが参加してくる可能性も否定できません。
例えば、暗号資産取引において「51%攻撃」というリスクが存在します。これは、承認作業を行うノードの51%以上が嘘の取引や自己利益のための取引を不正に改ざんし、それを正規のデータとして承認してしまうことです。実際には起こりにくい問題とされていますが、理論的には可能であるため注意が必要です。

7.仮想通貨(ビットコイン)との関連性

2008年10月にビットコインの開発者とされているサトシ・ナカモトによって発表された論文「ビットコイン:P2P電子通貨システム」の中で、ブロックチェーンはビットコインのような暗号資産の取引履歴を記録する仕組みとして考案されました。
ビットコインは数ある暗号資産の中で最大の時価総額を誇り、現在ではブロックチェーンの最も有名な使用事例として知られています。ビットコインを含むデジタル通貨では、中央銀行などの仲介者を必要とせず、個人同士での金銭の取引が可能な仕組みを実現しました。
ビットコインのブロックチェーンプラットフォームでは、誰でも自由にネットワークに参加できる公開型の「パブリックチェーン」が採用されています。パブリックチェーンは参加するノードが増えるほどネットワークの停止リスクが減り、不正やデータ改ざんに対して強固なセキュリティを提供します。
ビットコインに続いて注目を集めたのは、NFT(非代替性トークン)を生み出したイーサリアムです。イーサリアムはブロックチェーン技術を利用して、単に送金だけでなく、デジタルデータをブロックチェーン上で取引できる所有権を証明できる画期的な仕組みを実現しました。
さらに、NFTの売買においては二次販売時に原作者に割合の報酬が支払われる仕組みも導入されています。これにより、リアルアートの世界では長年の課題であった原作者の二次販売時の利権保護が可能になりました。

楽天ポイントで暗号資産デビュー 100ポイントからできる!

楽天が提供するサービス「楽天ウォレット」では、貯まった楽天ポイントを暗号資産に交換し、投資に使うこともできます。楽天ポイント100ポイント(100円相当)から運用することができます。
さらに暗号資産を楽天キャッシュにチャージし、楽天市場などのオンラインショッピングや、街中の実店舗で利用することもできます。
楽天ウォレットについてさらに詳しく知りたい方は、公式ページ「楽天ウォレット」をチェックしてみましょう!

8.ブロックチェーンの活用事例

最後に、ブロックチェーンの活用事例を紹介します。実際の活用例を知ることで、ブロックチェーンがどのような役割を果たしているのかをイメージしやすくなるでしょう。

ショッピングサイトのトレーサビリティを確保

アメリカの大手スーパーマーケットチェーン「ウォルマート」は、IBMが提供する「FoodTrust」を導入しました。FoodTrustを利用することでショッピングサイトにブロックチェーンを実装し、生産農家から店頭までのサプライチェーン全体で食品のトレーサビリティ(製品の制作過程や移動経路を明らかにすること)を確保しています。
近年アメリカでは食品の品質汚染が深刻化しており、流通業者は管理者としての責任を問われています。食中毒の予防や原因究明が課題となっており、消費者の間で食品の衛生状況への不信感が高まっていました。しかし、ブロックチェーンによって食品の調達経路の透明性が確保されたことで、消費者の信頼を取り戻す大きな一助となりました。
さらに、食品の流通経路を詳細に追跡することにより、フードロス(食品廃棄)の軽減にも貢献することが期待されています。

有名アイドルのチケット・入場システム

音楽業界でもブロックチェーンの導入が進んでおり、ジャニーズ事務所が発表したブロックチェーンを活用したチケット・入場システムの実証実験が話題となりました。
このシステムでは、ブロックチェーンを使用してチケットの管理が行われます。主催者側はチケットの流動を入場まで管理できるため、以前は規約で禁止されていた当選者以外へのチケットの譲渡も、一定の条件付きで家族や友人といった範囲内で可能になりました。この仕組みにより、柔軟なチケット管理が実現されています。

スポーツ業界支援のクラウドファンディング

ブロックチェーンはスポーツ業界における資金調達の手段としても活用されています。アスリート、スポーツチーム、リーグ、協会などがブロックチェーン上でデジタルコイン(トークン)を発行し、ファンや支援者がそれを購入することで資金調達を行います。この仕組みにより、出資者個々の出資状況が透明になり、資金調達の透明性が確保されます。
通常、金融機関からの融資を申請し承認されるまでのプロセスは多くの工程が発生します。しかし、ブロックチェーンを利用することで、オンライン上ですべての手続きが完了し、効率的に資金調達することが可能となります。この仕組みによって、新たなビジネスチャンスの創出が期待されています。

NFTアートの保有者履歴の管理

NFT(非代替性トークン)は、ブロックチェーンを使用して所有権を証明することができる仕組みであり、特に注目を集めているのがNFTアートです。NFTアートはデジタルで表現されたアート作品であり、ブロックチェーン上で作品の保有者履歴や情報を記録・管理することができます。これにより、唯一無二の美術品としての価値を持つことができます。
ブロックチェーンに詳しくない方でも、小学生が制作した「NFTアート」が高額で落札されたというニュースを目にした方もいらっしゃるかもしれません。例えば、8歳の男の子が夏休みの自由研究の一環として制作したデジタルアート作品「Zombie Zoo Keeper(出典:OpenSea 「Zombie Zoo」By emikusano)」は、音楽プロデューサー・DJのスティーヴ・アオキ氏によって約240万円で購入されたと報じられました。

図解 出典:OpenSea 「Zombie Zoo」By emikusano
https://opensea.io/collection/zombiezoo
(アクセス日:2023年2月15日)

NFTに関連して、アイドルグループ「SKE48」や「ももいろクローバーZ」も「NFTトレカ」の販売を行い話題となりました。NFTトレカは、コンサートやイベントでのメンバーを撮影した写真や、音声、動画などが個別のカードに紐付けられており、それぞれのNFTトレカが独自のデータを持つことによって資産価値を持つことができます。
これらの取り組みはブロックチェーンシステムの高い信頼性に基づいており、所有者履歴の改ざんやデータの削除が不可能なため、ファンサービスとして提供されるだけでなくビジネスや投資の一環としても位置づけられています。
このようなNFTを活用したサービス「Rakuten NFT」では、スポーツ、音楽、アニメをはじめとするエンターテインメントや、その他さまざまな分野のNFTを購入したり、個人間で売買したりすることができ、さらにIPホルダー(コンテンツの所有者)がワンストップでNFTの発行、および販売サイトを構築することが可能です。
ユーザーは楽天IDに紐づくクレジットカードで決済したり、「Rakuten NFT」内で楽天ポイントを貯めたり、使ったりすることが可能です。購入したNFTは、「Rakuten NFT」のマイページにコレクションすることができ、さらにマーケットプレイスに出品や販売もできます。

電子契約書・電子署名の管理

ブロックチェーンの非改ざん性とセキュリティの安全さは、電子契約書の管理に役立ちます。紙媒体での契約書は、郵送の手間がかかりますが、電子契約書であればインターネット上のやり取りできる点がメリットです。
ただし、電子契約書を使用する場合、後から契約内容の改ざんが行える点が懸念に挙がります。そこで、ブロックチェーンを活用することで、安心して電子契約書を管理できるようになります。
また、電子契約書の場合、電子署名を使うことが多いですが、電子署名の不正利用改ざんを防ぐ役割もあります。電子署名は、公開鍵暗号とハッシュ値を使用して管理するため、後から変更・削除ができません。
電子契約書のセキュリティが万全であることは、取引相手を信頼してプロジェクトを
進められることに繋がるでしょう。

9.ブロックチェーン まとめ

ブロックチェーンはビットコインの誕生とともに考案され、表舞台に登場しました。ただし、仮想通貨はブロックチェーンの仕組みを利用したに過ぎません。ネットワーク上の取引履歴を正確に記録し、削除不可能で改ざんや修正が極めて難しい点が特徴です。矛盾のある内容は修復されるため、システムダウンがほぼなく、ネットワーク参加者全員で共有可能なデータベースとして機能します。
これまでに確立されてきた技術の組み合わせによって設計されたブロックチェーンは、データの記録を管理者に頼らずに行い、そのデータの改ざんがないことを証明することができます。
そのため、金融業界はもちろん、公共サービスや商流管理など、あらゆる領域での応用が検討されています。NFTもブロックチェーンを活用しており、ファッションやアート、エンターテイメント業界で広く活用されています。
ブロックチェーン技術によって、特定の大企業などの管理ではなく、参加者によるコミュニティを構成することができます。誰かに支配されるシステムではなく、参加者による世界を作れます。
ブロックチェーンは、AIやIoT、ビッグデータ、5Gと並ぶWeb3.0のテクノロジーとして、大企業から各国政府まで注目される画期的な技術です。将来的には10年や20年という期間を経て、ブロックチェーンが私たちの生活を劇的に変革することが期待されています。

【監修者】長瀬 嘉秀

株式会社テクノロジックアート代表取締役。1986年、東京理科大学理学部応用数学科卒業。朝日新聞社を経て、1989年に株式会社テクノロジックアートを設立。OSF(OPEN Software Foundation)のテクニカルコンサルタントとしてDCE(Distributed Computing Environment)関連のオープンシステムの推進を行う。OSF日本ペンダ協議会DCE技術検討委員会の主査を務める。トランスコスモス株式会社技術顧問。

TOPページへ戻る

目次

1.ブロックチェーンとは?
【一貫した履歴の維持システム】

  • データを「ブロック」でまとめて「ハッシュ値」でつなげる
  • ノード(スマホ・PCなどの通信機器)間でデータを管理

2.ブロックチェーンのデータ管理の仕組み

  • 集中管理型システム:第三者機関が履歴を管理
  • 分散型管理システム:すべての履歴を全員で管理

3.ブロックチェーンがもたらす可能性

  • Web3.0の基盤
  • 独自プラットフォームの作成(地域内で使える独自のポイント制度など)
  • 暗号資産取引
  • NFTとGameFi

4.ブロックチェーンの種類

  • パブリックチェーン:参加制限なし
  • プライベートチェーン:参加に承認が必要
  • コンソーシアムチェーン:企業間で管理可能

5.ブロックチェーンを実装するメリット

  • 改ざんできない環境にできる
  • 信頼できるデータを残すことができる
  • ランニングコストを軽減することができる

6.ブロックチェーンのデメリット

  • 過去の入力データの取り消し・削除ができない
  • 処理に時間がかかる場合がある
  • 悪意を持った第三者が参加する可能性がある

7.仮想通貨(ビットコイン)との関連性

8.ブロックチェーンの活用事例

  • ショッピングサイトのトレーサビリティを確保
  • 有名アイドルのチケット・入場システム
  • スポーツ業界支援のクラウドファンディング
  • NFTアートの保有者履歴の管理

9.まとめ