生き生きと働く人が増える企業へ。ウェルネス経営の大切さについて担当者に聞いてみた

健康第一。

分かってはいても、病気や怪我をしてからその大切さに改めて気づくケースが多いのではないでしょうか。

近年では、企業が従業員の心身の健康を重要な資産と位置づけ、食事や運動などの生活習慣の改善、メンタルヘルスのケア等にも関わり、従業員の健康管理に戦略的に取り組む “ウェルネス経営”というキーワードも聞かれるようになりました。

楽天では、従業員一人ひとりの心と体の健康の発展と維持を目的とした取り組みとしてウェルネスを推進しています。2年前に新設されたウェルネス部が中心となり、社内における従業員の健康意識の向上と実践を精力的に推進しています。

今回はウェルネス部の代表メンバーに、心と体の健康管理をすることの大切さ、そしてコロナ禍の在宅勤務における、オンラインの場を活用した様々な取り組みについて伺いました!

コーポレートカルチャーディビジョンのウェルネス部より左からTakaさん、Chiさん、Kotaさん。

心身の健康を推進する部署のはじまり


――楽天のウェルネス部について教えてください。

Taka: まず、楽天の組織体制の中に3年ほど前にコーポレートカルチャーディビジョンという組織が創設され、その後、CWO(チーフウェルビーイングオフィサー)という役職も設けられました。従業員のみならず、楽天全体に関わる人の「ウェルビーイング」(注)を高めていくことを目的としており、楽天グループのあり方や従業員の行動指針・価値観を示す「楽天主義」に基づいて活動しています。

(注) 「ウェルビーイング」(Well-being)
心身ともに高いレベルで充実し、社会貢献やイノベーションを起こすことができる状態と楽天では定義しています。

Kota: その配下にあるウェルネス部は、2018年12月頃に人事部とは別の組織として始まりました。

当時、三木谷社長が「楽天創業以降、自分たちが脇目もふらず仕事に専念していた時代から、企業は成長と多様化により、組織の規模が大きくなった。今は、従業員の体調という面にこれまで以上に目を向ける必要があるフェーズになってきた」という主旨のことを話したことがきっかけでした。

人事部は、従業員の身に何か起きた時に対応するという労務管理および事態を予防する機能(健康診断や予防接種など)を持っていますが、私たちウェルネス部は、個人の健康意識の醸成や組織としての健康増進に関する推進体制の強化のために発足しました。

Taka: 最初は朝会(注)でのストレッチ体操でしたね。在宅勤務が始まる前から実施していて、Kotaたちがストレッチ体操を会場にいる社員の前で披露するというところから始まっています。

(注)楽天の創設以来、毎週継続している全社ミーティング。

毎週、「朝会」でいろいろなストレッチを紹介。オンライン「朝会」で全社員に向けてストレッチ動画を公開している。

ウェルネスって、どういう意味?

――ウェルネスという言葉はどういう意味なのでしょうか?聞き慣れない人も多いかと思います。

Chi: 1946年に、WHO(世界保健機関)が健康について「身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」と定義したことで、健康の基準が見直されるようになりました。

以降、多くの医師や研究者が新しい健康の概念について研究を重ねてきました。今までは、病気ではない状態を健康と表現していたのに対し、より前向きに生きようとする心、そしてより自分に適したライフスタイルの確立という要素が加わり、健康を病気やケガの有無ではなく、総合的に捉える概念が“ウェルネス”と考えられています。

つまり、病気にかかったら医者に診てもらうという受け身の姿勢ではなく、自ら進んで生き生きと生活するということ。

心身の健康というひとつの要素だけでなく、経済面が安定した状態にあるか、周囲の環境が自分に合っているかなど、包括的な意味での健康の捉え方だと考えられます。

働く“個人”のウェルネスを重視する

――企業が従業員の健康管理やウェルネス活動に注力するメリットは何なのでしょうか?

Chi: 従業員が、病気になって仕事を休んでしまうことを“アブセンティーズム”といい、 出社はできても心が疲れている状態で仕事の生産性が落ちてしまうことを“プレゼンティーズム”といいます。

我々がフォーカスしているのは“プレゼンティーズム”であり、仕事を休むまでではないけど、心身の状態が万全でないがゆえに、パフォーマンスや生産性が落ちてしまう、そのような従業員を減らそうという活動をしています。

Taka: 楽天のウェルネス部は個人のウェルネスを重視しています。従業員にとっては、会社が人生のすべてではありません。会社生活も自分たちの生活の一部であり、従業員が健康に、サステナブル(持続可能)に働けないと、“イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする”という楽天が掲げる企業ミッションに対しても、従業員が100%の力を発揮できないでしょう。

会社の経営目線からの生産性ということだけではなくて、一人ひとりが生き生きとして、やりがいを感じて働けるような環境を提供していき、一般的に言われるウェルネス経営の先にあるところを目指していきたいと我々は思っています。

社内における草の根ウェルネス活動から始まった

――今までどんな活動をしていましたか?

Kota: 以前までは基本的には会社の内部、主に本社を中心とした活動が多かったです。フィットネスジムとカフェテリアの運営をしており、ナチュラルベジタブルメニュー、プロテインメニューを取り入れるなど、既存の設備や運営方針にウェルネス的視点を導入することに注力していました。

啓発、啓蒙活動ということで、朝会の場を活用しストレッチ体操を披露するなどしていましたし、外部と連携した取り組みも行いました。基本的には既存の本社機能をウェルネス向けにしていき、社員のニーズ(健康課題)を調べるために、ウェルネスサーベイ(調査)などを行いました。

ウェルネス部では、Body(健康的な体)、 Mind(健康的な心)、 Intake(健康的に取り入れるもの)の3つの要素を組み合わせ「健康的に働き続けられる従業員、環境作りの実現」を目指している。

――ウェルネスサーベイとは何ですか?

Chi: ウェルネスサーベイとは、オフィス内での交友関係であったり、心理的安全だったり、健康診断では診断されないようなところを聞いています。心理領域(マインドフルネス)を研究する大学教授にもアドバイスをいただいています。

ウェルネスサーベイ調査票の一部。従業員の様々な健康課題の把握に役立てている。

――最近になって活動が本格化してきたのでしょうか?

Kota: 以前は手探りでどんなことができるかというところをベースに動いていました。

社員の本当のニーズを知ることや本社だけに留まらないようにすること、それぞれの健康リテラシーレベルやニーズが違う中でどうやったら行動を変えられるかというところが課題でした。

第一回のウェルネスサーベイでは、健康管理の上で心配していることを聞いたところ、運動不足や睡眠という回答が最も多い回答でした。これらの解消のためにどのようなアプローチを取るべきかは以前から検討してはいましたが、結局、睡眠のところに関しては何もできていなかったし、運動不足に関しては、本社にすでにあるジムでしか改善プログラムを提供できなかったので、全従業員向けの施策というのはあまりできなかったのが実際のところだったという結果でした。

コロナ禍のオンラインイベントが予想以上の反響

――健康課題は人それぞれで、従業員全体へアプローチすることは大変だと思います。最近はどういう取り組みを行われていますか?

Chi: 以前まではカフェテリアメニューの改善やジムを活用したフィットネスを推進していましたが、昨年は、新型コロナウイルスの影響で出社する従業員が大幅に減り、、多くのことがオンラインにシフトしたんですね。

それに伴って、今まで行っていたことをより多くの人に実施することが可能になりました。

ウェルネスサーベイを踏まえて把握した睡眠不足や体重管理、運動不足というような課題に対して、従業員の健康リテラシーを向上させることを目的に、オンラインのセミナーを行いました。

参加者は毎回400人くらいと、オンラインで開催することで、より多くの従業員に参加してもらうことができました。海外から参加される方もいたり、初めて参加したという方が増えたりと、そこはすごく大きな変化だと思います。

腸活、肩こり、目の疲れや睡眠不足の解消についてなど、専門講師を迎えてオンラインセミナーを開催。参加者からは日常の身近なテーマで説明が分かりやすかったと好評だった。

そして、やはり実践が大切です。

知識だけ高めても、実践する場がないといけないということで、実際にストレッチを行える場を社内でも提供し始めました。

社内では、従業員に対して“ハドルストレッチ“を提供しました。チーム内のハドルミーティング(短い打ち合わせ)などで、体操のインストラクターが5分くらいのストレッチを紹介するというものです。最初は興味なさそうに見ていた人も、やっていくうちに笑い出すということが起こるなど、提供側が楽しんで紹介することで、興味を持ち、賛同する人が徐々に増えていきました。

社内で行った“ハドルストレッチ”の様子。様々な事業部のチームが参加した。

心と体の健康、運動の必要性をもう一度考えるきっかけに

――職場環境のオンライン化によって、活動が広がる勢いが生まれたのでしょうか?

Taka:良くも悪くも、今年のコロナの影響による在宅勤務は私たちの心身に対して大きな影響を与えたと思うんですよね。

以前まで本社中心に企画していた施策が、コロナ禍で在宅勤務になったことで、皆さんに対してオンラインで届けないといけないという使命感が生まれました。

正直なところ、3月、4月あたりは会社に行けないストレスだとか、自宅で仕事や家事など、家族との関係性の中で自分の時間のペースをつくれないとか、イライラするようなことがあったのではないかなと、他のいくつかの調査などを見て思っていました。

多くの人が心と体の健康、なかなか外出ができないモヤモヤを感じる中で、運動の必要性について考えたり、健康について意識したりするようになったと思います。

とはいえジムにも行けないし、人にも会えないのであれば、オンラインで何かできるのではないかと、いろんなことを工夫してやってみた結果、本社中心の施策ではなくて、全国各地にいる従業員に届けられるコンテンツができたので、今年のコロナ禍における社会的不安をカバーしていけるような施策を、オンラインの場を活用して行えたのかなと振り返って思います。

――最後に、今後の目標を教えてください。

Kota: 世の中の情勢により自分たちのできることや、施策のアプローチは変わってきますが、今後もウェルネスへの関心を高めること、そしてワンチームとしてまとまり、ダイバーシティを推進することに取り組んでいきたいです。2021年もウェルネスという観点で楽しいイベントを企画し、従業員全員の健康を高められる企画を実施できればと思います。

Chi: 「こういう生き方がしたい!」、「こういう仕事の仕方がしたい!」、そのために前向きに健康になろうという意識を持つことが、ウェルネスが高まっている状態です。そういう方々を社内に増やしていきたいと思っています。

Taka: 会社視点ではウェルネス経営という視点で、経営側が従業員の健康を意識することは大事です。でも一方で、私たちはコーポレートカルチャーディビジョンなのでウェルネスをカルチャー(文化)にしたいんですよね。

従業員の皆さんが、ウェルネスは普通のこと、みんなで普及させること、協力すること、ウェルネスが当たり前であることをカルチャーにすることが最終目標だと感じています。

頑張ります!


コロナ禍におけるウェルネス部の活動は外部からも評価されており、HR(人材・採用)領域全体の活性化を目的にイノベーターや業界をけん引するリーダーを表彰する、日本の人事部「HRアワード2020」の企業人事部門13社に入賞しました。

今後も企業の枠を越えて、社会へとウェルネス部の活動が広まることを願うばかりです。

最後に、現在「朝会」で披露されているストレッチ動画の一つを紹介します。お仕事の合間などにぜひ試してみてください!

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