再生可能エネルギーとは、簡単に説明すると、太陽光・水力・風力などの自然由来で、くり返し使うことができるエネルギーのことです。
火力発電で使われる化石燃料などの資源は、使える量に限りがあり、利用することで多くの二酸化炭素が出てしまいます。
一方で、今回ご紹介する再生可能エネルギーは、何度でも再生可能なエネルギー源で、二酸化炭素もほとんど発生しないことが特徴です。環境問題の解決に役立つことから、世界はもちろん日本でも、積極的に再生可能エネルギーの活用に向けた取り組みが進んでいます。
この記事では、再生可能エネルギーの種類や必要な理由、日本の利用状況など基本的なポイントを、わかりやすくご紹介します。
6.再生可能エネルギーの普及に向けて日本はどんな取り組みをしているの?
再生可能エネルギー(Renewable Energy)は、以下のような特徴をもった燃料となる資源です。
近年、再生可能エネルギーによって、これまで火力発電や燃料などに使われてきた化石エネルギー(化石燃料)が抱えていた課題を解決できると、注目を集めています。
化石エネルギーとは、石油・石炭・天然ガスといった、地下に埋まっている化石燃料によって得られるエネルギーのことです。
化石燃料は、植物や動物などが、条件を満たして地下深くで、何百万年も埋まっていることでつくられます。このような化石燃料は量に限りがあり、すぐに次の化石燃料がつくられるわけではありません。
そのため、このまま使い続けると、数十年で化石燃料がなくなってしまうことが大きな課題でした。さらに、化石燃料には炭素を多く含まれているので、燃やすと二酸化炭素が大量に出ることも問題になっています。二酸化炭素は、今、世界中で深刻化している地球温暖化の主な原因の1つだからです。とはいえ、燃料を使わなければ発電もできず、生産活動もできなくなってしまいます。
そこで、有限な化石燃料に代わり、地球環境にあまり影響を及ぼさず、くり返し使えるエネルギーとして、再生可能エネルギーが注目されています。
すでに、世界や日本において、くり返し利用可能な再生可能エネルギーを用いた発電が推進されている状況で、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の発表によると2020年から世界で新設された電源の80%以上は再生可能エネルギー由来という結果が出ています。
太陽光・水力・風力・地熱・バイオマスの5つの再生可能エネルギーは、実際に発電にも活用されています。
再生可能エネルギーは、種類によって異なる特徴があります。以下で、それぞれどのようなエネルギー資源なのかを、もう少し詳しく見ていきましょう。
太陽光発電とは、太陽の光をシリコン半導体でできた発電パネルに当てることで、電気を作る仕組みのことです。
日本は、再生可能エネルギーの中でも、太陽光発電に特に力を入れており、すべての発電量の約8.5%を占めています。資源エネルギー庁の電力調査によると2021年の太陽光発電の導入量では、中国・アメリカに次いで、日本が世界3位でした。
太陽光発電は、日光が一定量射し込む場所で日照さえ確保できればどこでも発電できるので、以下のように多くのメリットがあります。
一方で、夜間や悪天候の日に発電量が減少するなど、電気の供給量が天候によって変わってしまうことがデメリットです。
水力発電とは、水の流れる力で水車を動かし、エネルギーに変換する発電方法のことです。
農業用水や河川・上下水道・ダムなど、さまざまな場所で水力発電を行えます。自然が豊かで水資源が比較的豊富な日本では、以前から導入されており、ノウハウもある発電方法です。
水力発電は、太陽光や風力に比べて発電量が天候に左右されにくく、電力供給に安定感があるのがメリットです。水量を調節することで、発電する量を変えることもできます。
一方で、水力発電は、ダムの建設による自然環境の破壊などが問題視されているなど、デメリットもあります。また、天候が影響しにくいとはいえ、降水量が極端に少ないと、十分な発電ができなくなってしまうのも難点です。
風力発電とは、風の力で風車を動かし、エネルギーに変換する発電方法のことです。発電用の風車は、ある程度強い風が安定して吹く場所であれば、陸上・海上のどちらにも設置できます。陸上では、山の上や広い公園などに設置する場合が多くなっています。
風力発電は、エネルギー変換効率が高いことが特徴です。強い風と大きな発電のための設備が準備できれば、火力発電と同等の発電量を得ることもできるといわれています。
また、夜間でも発電ができるので、発電量が時間帯によって変動しづらいのもメリットです。
一方で、風車を回すのに十分な強さの風が、いつも安定して吹いていないと発電できないというデメリットがあります。また、風車が回る際に音がするので、騒音が発生しても問題ない場所でないと設置できないのも弱点です。
地熱発電とは、マグマの熱によって発生した蒸気の勢いでタービンを回し、発電する方法です。
地面をあまり深く掘らなくても地熱が利用しやすい火山帯になっている日本では、地熱発電の歴史は古いほうで、1966年頃から本格的な地熱発電が行われています。
地熱発電のメリットは、電力の供給が安定していることです。地熱は、時間帯や天候・季節にかかわりなく、一定してエネルギーを利用できます。
ただし、地熱発電をするための設備を設置するコストが大きいというデメリットがあり、普及が進んでいないのが実情です。また、地熱発電の可能な火山や温泉などに近い土地が、国定公園や観光地であることが多く、施設の設置自体ができない場合もあります。
バイオマス発電とは、化石燃料以外の動植物に由来する生物資源を燃焼するなどして蒸気をつくり、その蒸気でタービンを回して発電する方法のことです。
森林整備(間伐)の過程で発生した間伐材や家畜の排泄物、家庭から排出される生ごみなどが、バイオマス発電では資源として有効利用できます。
天候に左右されずに安定して発電できるほか、廃棄物の再利用につながる点が、メリットといえるでしょう。
デメリットとしては、資源が出る場所が分散しているため、その収集や管理にコストがかかる点が挙げられます。また、燃料として使う資源に有害物質が含まれていると、燃やしたときに排ガスとして周辺環境に悪影響が及ぶリスクがあります。
以下では、それぞれの理由について、どういうことなのかを簡単に説明します。
再生可能エネルギーの利用は、地球温暖化対策になります。
これまでに火力発電や燃料などで利用していた化石燃料は、燃やすと二酸化炭素が大量に出るのに対し、再生可能エネルギーでは出ないからです。二酸化炭素は、地球温暖化を進行させてしまう、温室効果ガスの一種です。
空気中の二酸化炭素が増えると、温暖化は進んでしまうので、全世界で減らしていくことが求められています。2020年に日本政府は、「2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにするカーボンニュートラル」を目標として掲げました。
太陽光発電や風力発電をはじめとした再生可能エネルギーは、発電時に二酸化炭素を排出しません。そのため、温室効果ガスを削減し、カーボンニュートラルの目標達成に必要不可欠です。
カーボンニュートラルについて詳しく知りたい方は「カーボンニュートラルとは?意味をわかりやすく簡単に解説」をご覧ください。
なお、カーボンニュートラルを実現するための手法の一つであるカーボンオフセットについては、「カーボン・オフセットとは?仕組みや個人でもできる取り組みを解説」で詳しく解説しています。
再生可能エネルギー利用は、エネルギー自給率の向上にも役立ちます。
日本は、石油や石炭などの天然資源が少ないため、中東をはじめ他国からの輸入に頼っているのが現状です。そのため、日本のエネルギー自給率は、2020年時点で11.3%程度しかありません。
自給率が低いと、近年のウクライナ侵攻など他国の情勢によって、電力の供給が不安定になるリスクがあります。
そこで、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを使えば自前でエネルギーをまかなえ、自給率を上げられるので安心です。
新たな地域の産業や雇用の創出につながることも、再生可能エネルギーを積極的に活用する目的の1つです。
例えば、発電所を新しく設置し運営していくには多くの労働力が必要なので、雇用の創出につながります。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の発表によると、2021年には、再生可能エネルギー部門の雇用が、世界全体で70万人増加したとのことです。
また、再生可能エネルギーの需要が高まれば、再生可能エネルギー市場が拡大し、新たなビジネスチャンスがうまれることも期待できます。
資源エネルギー庁によると、日本における再生可能エネルギーの利用割合は、増加し続けている状況です。
ただし、ドイツ・イタリア・イギリスなどの欧州諸国では、再生可能エネルギーの比率が40%を超えています。日本でも、さらなる再生可能エネルギーの需要を拡大させる余地があるといえるでしょう。
政府は、今後も再生可能エネルギーを主な電力源とするために、複数の政策を進めていく予定としています。
再生可能エネルギーには多くのメリットがあるにもかかわらず、まだ主力の電力源になっていない背景には、以下のような課題があります。
・自然に依存した発電方法のため、天候や時間帯などによって発電量が不安定
・化石燃料による発電方法に比べると、発電コストが高い/高かった
・大規模な発電施設を運用することが難しい
今後、システムを導入し発電量と消費量のバランスをうまく制御するような技術開発を進めて発電のコストを下げる、などの取り組みが求められています。
コストについては、2000年から2020年までの間に、太陽光発電や風力発電、太陽熱発電やバッテーリーのコスト(単価)は年々低下しています。それにより発電やバッテリー(EV)の導入も増えてきています。
日本全体で再生可能エネルギーを活用する上で、大きな課題となるのが、発電コストです。そこで政府の主導のもと、価格競争の促進や技術開発など、コスト削減に向けた取り組みが行われています。
また、太陽光や風力などは天候に左右されるため、電気の供給量が安定しにくいのも課題です。これを解決するために、より広域的な調達、調整力の確保に向けた取り組みが行われています。
政府の対策だけではなく、企業においても再生可能エネルギー普及に向けた取り組みが始まっています。
楽天グループにおいても、2019年12月に国際的なイニシアチブ「RE100」に参画したほか、2021年に楽天グループ株式会社単体で再生可能エネルギー導入率100%を達成しました。
また、2023年までに、「楽天グループ全体で使用する電力を100%再生可能エネルギーに切り替えることを目標」に掲げ、取り組みを実施しています。
楽天では、物流センターにおけるエネルギーの切り替えに取り組んでいます。
楽天西友ネットスーパー専用の物流センターである楽天フルフィルメントセンター松戸には、倉庫の総消費電力の20%をまかなえる試算となる、4,300枚以上の太陽光パネルを設置しました。
楽天の宿泊施設ブランド「Rakuten STAY」では、エネルギーサービスを提供する「楽天エナジー」と連携し、再生可能エネルギー活用を進めています。
現在「Rakuten STAY」の宿泊施設の一部では、実質再生可能エネルギー100%運営への切り替えを目指しています。
詳しくは【再エネを活用した宿泊体験はいかが? ~「楽天エナジー」と「楽天ステイ」が創出する新しい観光価値】をご覧ください。
太陽光・水力・風力など、くり返し利用可能で二酸化炭素の排出を抑えられる再生可能エネルギーは、脱炭素社会の実現に欠かせない資源です。
また、環境問題の解決だけでなく、エネルギー自給率の向上や新たな雇用などの創出にも、役立ちます。
ただ、日本でも、再生可能エネルギーの利用は推進され、施策も実施されていますが、欧米と比べると利用率は低い状況です。
今後、さらなる普及に向けて、私たち個人でもできることがあります。例えば、電力会社を見直し、再生可能エネルギーに力を入れているエネルギー供給会社を選択することや、自宅に太陽光発電システムを導入することで再生可能エネルギーの普及に繋がります。
この様に、私たち一人ひとりが再生可能エネルギーへの理解を深め、エネルギーの利用を意識していくことが大切です。