海洋プラスチック問題とは?
現状の問題と私たちにできること

海洋プラスチック問題とは、海に漂う多数のプラスチックごみが、人体や海の生物などに悪影響を及ぼしている状況のことです。実はこの海洋プラスチック問題が、近年、世界中で注目されています。その主な原因は、私たちが日常的に排出しているプラスチックを含むごみです。

今回は、海洋プラスチック問題が起きている理由や、なぜ問題なのか、解決に向けて私たちに何ができるのかなどを見ていきましょう。

目次

1.海洋プラスチック問題とは?

  • マイクロプラスチックとは?

2.海洋プラスチック問題は何が原因?

  • プラスチックごみの8割が陸地からのもの

3.海洋プラスチック問題はどんな影響があるの?

  • 人体への影響:プラスチックが体内に入り込む
  • 産業への影響:自然環境事業の経済損失
  • 生態系への影響:生態系のバランスが崩れる

4.海洋プラスチックの問題解決のために行われている取り組みは?

  • 企業の取り組み

5.まとめと未来の海や資源を守るために私たちにできること

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海洋プラスチック問題とは?

解 説

海洋プラスチック問題とは、きちんと処理されず自然界に流出してしまったプラスチックが、海の生態系などの環境を破壊している問題のことです。

プラスチックは、木材や布製品などと違って、微生物の働きで分解されないという特徴があります。そのため、プラスチックを含むごみは、きちんと処理されないと数百年の単位で地球上に存在し続けてしまうのです。

処理されなかったプラスチックごみは、風で運ばれたり川で流されたりして、最終的に海に流れ着きます。そしてこれは、日本はもちろんのこと世界中で起こっており、海洋プラスチック問題を引き起こしているのです。

WWFジャパンによると、世界の海に存在しているといわれるプラスチックごみは、合計で1億5,000万トンとも言われています。さらに、そこに、年間で800万トンにも及ぶ大量のプラスチックごみが、新たに海に流れ込んでいると考えられているのが現状です。

海にプラスチックごみが流れ込むことで、海洋生物の生態系に悪影響が及びます。具体的には、魚やウミガメ、海鳥などさまざまな海洋生物が、誤って食べたり絡まって泳げなくなったりして、死んでしまう事例が増えています。これに伴って、生態系が破壊されている状況です。

海洋プラスチック問題による悪影響は、生態系の破壊だけにとどまりません。詳しくは後述しますが、マイクロプラスチックによって人間の健康を害する、漁業などに打撃を与える、などのリスクもあります。

これ以上、被害を拡大させないためにも、海洋プラスチック問題に対する速やかな対策に、社会全体で取り組むことが必要なのです。

なお、海洋プラスチック問題を含む地球上で発生している環境問題について詳しくは、「環境問題とは?いま起こっている主な問題と私たちにできること」をご覧ください。

マイクロプラスチックとは?

解 説

マイクロプラスチックとは、一般的に、5mmよりも小さくなったプラスチックのことです。ただし、1mmより小さいプラスチックがマイクロプラスチックであるとする場合もあります。

海洋プラスチック問題と関連してよく耳にするのが、「マイクロプラスチック」という名前です。
マイクロプラスチックは、その名のとおり、5mmより小さいという微小なサイズであることが特徴です。以下のように「一次マイクロプラスチック」と「二次マイクロプラスチック」の2種類があります。

マイクロプラスチックの種類

一次マイクロ
プラスチック
  • スクラブ入り製品やマイクロファイバーなど、微細なサイズで製造されたプラスチックのこと
    【例】歯磨き粉、洗顔料、ペレットなど
二次マイクロ
プラスチック
  • プラスチック製容器などの大きなプラスチック製品が自然環境の中で徐々に砕け細かくなったもの
    【例】ペットボトル、ビニール袋など

このように、もともと5mm以下の小さいサイズだったものと、もとは大きかったけれど後からマイクロサイズになったものの2種類に分けられています。
マイクロプラスチックが問題視されるのは、サイズがとても小さいので、一度体内に取り込まれるとそのまま蓄積されやすい点です。マイクロプラスチックが体内に蓄積することで、内臓を傷つけるなどの危険性があります。

また、マイクロプラスチックはとても小さいので、ひとたび自然界に流出してしまうと、回収が難しいことも難点といえるでしょう。

プラスチックごみが、海に流れ着いたり漂流したりする過程で細かく砕かれて、最終的にマイクロプラスチックになります。

また、私たちが日常的に使う歯磨き粉やスクラブ入り洗顔料など、身近なものにも含まれています。これらのマイクロプラスチックは、排水処理施設では処理しきれないので、そのまま海に流れ着いてしまうのが現状です。

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海洋プラスチック問題は何が原因?

解 説

海洋プラスチック問題の主な原因は、適正なごみ処理がされなかったプラスチックごみです。例えば、道端や観光地など屋外に放置・ポイ捨てされたプラスチックごみなどが、これに該当します。

海洋プラスチック問題の原因となるプラスチックごみの約8割が、海ではなく陸地で排出されたものです。以下で、もう少しわかりやすく説明していきます。

プラスチックごみの約8割が陸地からのもの

海洋プラスチック問題の原因である海洋ごみの多くが、海に直接投棄されたわけではなく、市街地などの陸地で発生したものです。

日本財団と日本コカ・コーラ社が共同で行った調査によると、海洋ごみのうち約8割が、陸地から流出したものであるという結果が出ています。

道路や広場などに放置・ポイ捨てされたごみは、雨が降った際などに川や水路に流され、最終的に海に流れ着きます。また、ビニール袋などの軽いごみは、強風にあおられて河川に落ちることもあります。

なお、陸地から海に流れ込むごみは、以下のように大きく分けて、「投棄されたもの」「漏れ出たもの」の2種類があります。

陸地から海へ流れ込むごみの種類

投棄されたもの
  • 家庭や車内、屋外などで発生したごみを、道路や川沿いに放置したケース
  • 原因は、ごみ箱がない、貧困でごみ袋を買えないなど
漏れ出たもの
  • ごみ捨て場やごみ箱に捨てられたものの、回収などが間に合わず散乱したケース
  • 事業や災害対策などで使用した資材が、不要になった・老朽化したにもかかわらず、放置されているケース

陸地から流れ込むごみの中でもプラスチックごみは、微生物によって分解されないので、海に流れ込むと長い間漂い続けます。そのため、環境省によると、海洋ごみのうち65.8%がプラスチックごみで、過半数を占めている状況です。

すでに海洋プラスチック問題の状況は深刻で、北太平洋には「太平洋ごみベルト」と呼ばれる、大量のプラスチックごみが漂流しているエリアがあります。太平洋ごみベルトの面積は、日本の面積の4倍にも及ぶ、約160万平方キロメートルと言われています。

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海洋プラスチック問題はどんな影響があるの?

解 説

海洋プラス地区問題は、人体・産業・生態系など広い範囲に悪影響を及ぼします。

海洋プラスチック問題は、海洋生物の生態系を破壊するだけでなく、人間の健康面や海に関連する事業にも、悪影響を与える深刻な問題です。

海洋ブラスチックによる影響

人体への影響
  • マイクロプラスチックが体内に入り込むことで、健康被害に発展するリスクがある
産業への影響
  • 漁業や養殖業、観光業などの自然環境事業において経済的な損失につながる
生態系への影響
  • 海洋生物の自由な移動や生命維持などが難しくなり、生態系のバランスが崩れる

それぞれの影響について、ここからはもう少し具体的に解説します。

人体への影響:プラスチックが体内に入り込む

マイクロプラスチックが蓄積された魚などの水産資源を人が食べることで、マイクロプラスチックが人体内に入り込み、人体へ影響を及ぼす可能性があります。

微生物のはたらきで分解されることのないマイクロプラスチックは、海洋生物の体内に入り込んでも分解・消化されることなく蓄積していきます。そして、その海洋生物を人間が食べることで、蓄積されたマイクロプラスチックをまとめて取り込んでしまうのです。

マイクロプラスチックの成分や添加剤が、そもそも人体にとって有害である場合に加えて、プラスチックは様々な化学汚染物質を吸着する性質があり、有害物質で汚染されたマイクロプラスチックが人間の体内に蓄積すると、健康被害に発展するリスクが大きく高まります。

産業への影響:自然環境事業の経済損失

海洋プラスチック問題は、漁業や養殖業、観光業など海の自然環境を有効利用することで利益を出している産業に、大きな経済的損失をもたらします。

WWFジャパンによると、アジア太平洋地域のプラスチックごみによる損失は、漁業・養殖業で年間3.6億ドル、観光業では年間6.2億ドルほどにも上ります。

漁業や養殖業における影響の例としては、

  • 水産物に付着した海洋プラスチックごみのチェックや除去にコストがかかる
  • プラスチックごみで漁網が損傷してしまう
  • 魚などの成育が悪くなり漁獲量が減ってしまう

などです。

また、観光業では、以下のような影響があります。

  • 観光用の船舶がプラスチックごみを吸い込んで故障し、観光事業が停止する
  • 海の景観が悪くなり、ダイビングや海水浴などのレジャー需要が減少する
  • 観光客が減少し、宿泊施設の利用が減るなど、地域経済が衰退する

生態系への影響:生態系のバランスが崩れる

海洋プラスチック問題は、海洋生物の生態系に対して大きな悪影響を及ぼします。

プラスチックごみが大量に海を漂流することで、魚類・ウミガメ・海鳥、アザラシ、クジラなどの海洋生物に絡みつき、身動きがとれなくなったり、大けがを負ったりするからです。ビニール袋などのプラスチックごみを海洋生物が誤って飲み込み、窒息して死んでしまうケースもあります。
また、海洋生物がマイクロプラスチックを誤飲すると、エサを十分に食べられなくなったり、体内で炎症や腸閉塞を起こしてしまったりする危険性があります。

さらに、海洋生物の移動経路となる海域にプラスチックごみが停滞してしまうと、海の生き物の移動を阻んでしまうことも問題です。季節に応じて適切な地域に移動できないと、繁殖ができなくなる、エサを必要な量得られなくなるなど、さまざまな悪影響があります。

近年、海洋プラスチック問題は、海洋生物の絶滅危惧種を増やす要因の1つとも考えられており、世界中で問題解決に向けた取り組みが進められています。

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海洋プラスチックの問題解決のために行われている取り組みは?

解 説

海洋プラスチック問題を解決するに、日本を含めた各国で廃プラスチックの規制やリサイクルなど様々な取り組みが行われています。

海に国境はないので、他国で流出したプラスチックごみが日本近海を汚染することもあれば、日本が流出させたごみが、諸外国の近海の環境を破壊することもあります。

すでに、諸外国及び日本で、海洋プラスチックの問題解決に向けた取り組みが始まっています。

諸外国及び日本の海洋プラスチック問題への対策例

アメリカ
  • マイクロビーズ入りの製品の販売を禁止する法案を制定
  • 州によっては、レジ袋を提供することを禁止している
EU諸国
  • プラスチック製の容器包装をスムーズにリサイクルできるよう、基準やガイドラインを設定
  • 使い捨てプラスチック製品の流通を禁止している国も存在
中国
  • 廃プラスチックの輸入を禁止
  • 一部のプラスチック製品の流通を規制
日本
  • プラスチック資源循環戦略を定め、プラスチック製品の3Rや再生材の利用を推進
  • 海岸漂着物処理推進法を定めるなどして、マイクロプラスチックを含む海洋プラスチックへの対策を推進

企業の取り組み

海洋ブラスチック問題の対策は政府だけではなく、企業においても様々な取り組みが行われています。
楽天グループでは、ヴァージンプラスチック使用量削減などの、プラスチック問題に対する取り組みがあります。ここでは、その代表例である「楽天Kobo」「楽天ファーム」についてご紹介します。

楽天Kobo

楽天Koboで取り扱う電子書籍リーダー「Kobo Clara 2E」「Kobo Elipsa 2E」は、端末外装の約85%に、オーシャンバウンドプラスチックを含む再生プラスチックを使用しています。
 オーシャンバウンドプラスチックとは、海に流れ出て海洋プラスチックごみになる危険性のあるプラスチックを海岸線から50km以内の地域で回収したものです。これを再生し新しくプラスチック資源として積極的に活用することで、海洋プラスチックごみの減量に貢献しています。
海洋プラスチック問題解決に貢献できる楽天Koboの電子書籍リーダーについて詳しくは「Kobo Clara 2E」もしくは「Kobo Elipsa 2E」をご覧ください。

楽天ファーム

オーガニックの野菜・フルーツ・その他の食品や飲料などを販売している楽天ファームでは、商品の梱包に使われているプラスチックを削減・代替する脱プラスチックプロジェクトに取り組んでいます。

楽天ファームの脱プラスチックの取り組み例

  • プラスチックの使用量を削減
  • マイクロプラスチック流出リスクを高めないよう、段ボールに入れる緩衝材を紙製のものに変更
  • リサイクルプラスチックのへの変更

詳しくは「楽天ファームの容器を脱プラスチックへ!環境への考慮と私たちが今すぐできること」をご覧ください。

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まとめと未来の海や資源を守るためにわたしたちができること

ここまで、海洋プラスチック問題について説明しました。
海洋プラスチック問題は、処理されなかったプラスチックごみが海に流入し、生態系など環境を破壊している問題です。他にも、人体や自然環境事業へも影響を与えるため、世界的に解決に向けた取り組みが行われています。

そして、私たち一人ひとりの取り組みも、海洋プラスチック問題解決には欠かせません。不要なプラスチックを消費しないために、マイバックやマイペットボトルを持参したり、プラスチックごみをリサイクルして再活用したりと、今日からでも簡単に行える取り組みはあります。海洋プラスチック問題解決に向けて、できることから始めてみましょう。

監修:藤野 純一
地球環境戦略研究機関(IGES)上席研究員

東京大学大学院工学系研究科博士学位取得。国立研究開発法人主任研究員などを経て、2019年度よりIGES専任。日本低炭素社会研究プロジェクト(2004年~2008年)やアジア低炭素社会研究プロジェクトの幹事(2009年~2013年度)として携わり、中央環境審議会地球環境部会中長期ロードマップ小委員会専門委員として、2050年までに二酸化炭素排出量を大幅削減する「低炭素社会」のシナリオ作りに携わった。気候変動のCOPには2005年(COP11)から継続して参加。

楽天グループでは、2022年に安心して暮らせる社会を次の世代へとつなぐため、環境に配慮したグリーンな未来を呼びかける「Go Green Together」プロジェクトをスタートしました。特設サイトでは、気候変動をはじめとするさまざまな環境課題に一人ひとりが向き合うためのヒントや、課題解決の後押しとなるキャンペーン・サービスなどを紹介しています。楽天グループにおける環境への配慮についても紹介していますので、ぜひチェックしてみてください!

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目次

1.海洋プラスチック問題とは?

2.海洋プラスチック問題は何が原因?

3.海洋プラスチック問題はどんな影響があるの?

4.海洋プラスチックの問題解決のために行われている取り組みは?

5.まとめと未来の海や資源を守るために私たちにできること