
フェアトレードとは開発途上国で生産された原料や製品などを適正価格で継続して購入する貿易のあり方のことです。
立場の弱い開発途上国の生産者・労働者の収入を安定させ、生活・労働環境の改善や自立の実現を目標としています。私たち消費者もフェアトレード製品を選ぶことで開発途上国の生産者の環境改善を後押しすることが可能です。
そこでこの記事ではフェアトレードの概要や基準・原則を説明し、フェアトレード製品の例や日本のフェアトレード取り組み状況についてわかりやすく解説します。
正しい知識を身に付け、フェアトレードを支援する消費活動につなげましょう。
フェアトレード(Fair Trade)は直訳すると「公平・公正な貿易」を意味します。開発途上国の生産物を適正な価格で継続的に購入する貿易のしくみのことです。
開発途上国の生産者は貿易や取引において立場が弱く、生産した原料や製品について不当に低い価格での取引を強いられることが多くあります。そのため、生産者や労働者は十分な収入を確保できず、貧困が常態化し、労働環境も劣悪な状態に陥ることが多くありました。

さらに、低価格で大量の生産物をつくろうとした結果、過剰な栽培による水資源の枯渇や森林破壊のほか、農薬など化学薬品による土壌汚染や水質汚染という環境問題が世界的に深刻化していきました。
水質汚染を含めた現在世界中で課題となっている環境問題について、詳しくは「環境問題とは?いま起こっている主な問題と私たちにできること」をご覧ください。
このような労働者の生活や環境問題を改善するために推進されている取り組みがフェアトレードです。
フェアトレードの始まりは1940年代後半と言われています。当時アメリカのNGO「Ten Thousand Village」が、開発途上国だったアメリカ領プエルトリコの女性たちが作った手工芸品を販売したことがフェアトレードの原型です。この頃はまだフェアトレードではなくオルタナティブトレードと呼ばれていました。

その後、1960年代からこのオルタナティブトレードの活動が世界各地で活発化します。これに伴い途上国の労働者の生活を支援する具体的なプログラムが実施されるようになりました。
なお、フェアトレードという言葉が定着していったのは1970年代に入ってからです。
フェアトレードであるといえるための基準はいくつか種類があります。代表的な国際基準は2種類で、「国際フェアトレード基準」と「フェアトレードにおける10の原則」です。
フェアトレードがどのようなものかを定める国際基準は2種類あります。1つ目が商品・製品に焦点を当てて、満たすべき項目を定めた「国際フェアトレード基準」です。もう1つは「フェアトレードにおける10の原則」で、生産者と取引などをする団体を対象とした基準になっています。
なお、国際基準を定める団体には加盟せず独自基準を設けているケースや、生産者と直接取引している場合もあります。このことからわかる通り「フェアトレード」といっても統一された基準はなく、団体や製品によって異なります。
ここでは国際基準の代表例である「国際フェアトレード基準」と「フェアトレードにおける10の原則」に加え、独自基準とはどういうものかについてもう少し詳しく見ていきましょう。
国際フェアトレード基準とは国際フェアトレードラベル機構が定めたフェアトレード全般に関する基準です。
国際フェアトレード基準は商品や製品がフェアトレードによるものといえるために商品や製品が満たすべき基準をまとめています。「フェアトレード最低価格」「フェアトレード・プレミアム(奨励金)」を、生産者に保証するのが特徴です。
この基準は基準委員会とフェアトレードに参加する生産者や貿易業者などの利害関係者によって定期的に見直されています。この基準を満たした商品は、「国際フェアトレード認証ラベル」を表示できます。
フェアトレードの基準を経済、社会、環境の観点から確認してみましょう。
| 経済的基準 |
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|---|---|
| 社会的基準 |
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環境的基準 |
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フェアトレードにおける10の原則とは1989年に結成された世界フェアトレード連盟(WFTO)が定めた指針です。フェアトレードの生産・輸入販売・推進などを行う団体で守るべき10の基準を定めています。この基準を満たした加盟団体の商品にはWFTO参加団体認証ラベルを表示できます。
具体的な内容は、次のとおりです。
1.生産者に機会を提供する |
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|---|---|
2.事業の透明性と説明責任 |
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3.公正な取引の実行 |
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4.公正な価格 |
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5.子どもの労働、 |
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6.差別がないこと、男女平等、 |
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7.安全で健康的な労働環境 |
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8.生産者のキャパシティ・ |
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9.フェアトレードの推進 |
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10.環境への配慮 |
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団体や企業によっては国際フェアトレードラベル機構や世界フェアトレード連盟に加盟せず、独自の基準でフェアトレードを行っているところもあります。
独自の基準でフェアトレードする場合、生産者と直接取引することが多い状況です。このような団体は日本にも多くあります。独自基準でフェアトレードの販売・取り扱いをしている商品には認証ラベルがついていません。
フェアトレード認証製品市場で大きな割合を占めるのはコーヒーです。フェアトレード商品はコンビニやスーパーでも購入できます。
国際フェアトレード認証の対象となった製品の一例は次のとおりです。
【食品の例】
【食品以外の例】
日本においても1970年代からフェアトレードの取り組みが行われています。近年では大手のスーパーやメーカーなどが取り組んでいるほか、各自治体が取り組むフェアトレードタウンなどの活動も活発です。
ここでは日本でのフェアトレード取り組みの始まりから最近の状況までをチェックしておきましょう。
バングラディシュやネパールを支援するNGO団体「シャプラニール」が 1974年に洪水の被害で困窮した農村の手工業品を日本で販売しました。これが日本におけるフェアトレードの取り組みの始まりです。
その後、1986年には日本初のフェアトレード事業を手掛ける企業がフェアトレード製品販売店「第3世界ショップ」の営業を開始しました。
2000年以降になるとフェアトレードはさらに浸透し、大手スーパーや食品メーカーが積極的に取り組むようになっていきます。
フェアトレードタウン運動とは地域の行政・企業・商店・市民団体などが一体となり「まちぐるみ」でフェアトレードを広める活動に取り組む運動のことです。
日本では一般社団法人日本フェアトレード・フォーラム(FTFJ)が、フェアトレードタウンの認定事業を行っています。2011年に熊本市が日本で初めて認定され、2023年現在では名古屋・札幌など6都市が認定済みです。また、北九州市・金沢市などの13都市が、認定に向けた活動をしています。
フェアトレードタウンに認定されることで、市民のフェアトレードに対する関心を高められるほか、サステナブルな社会の実現を推進することが可能です。
日本におけるフェアトレードタウンの認定基準は次のとおりです。
【フェアトレードタウンの認定基準】
基準1:推進組織の設立と支持層の拡大
基準2:運動の展開と市民の啓発
基準3:地域社会への浸透
基準4:地域活性化への貢献
基準5:地域の店(商業施設)によるフェアトレード産品の幅広い提供
基準6:自治体によるフェアトレードの支持と普及
※参考:一般社団法人日本フェアトレード・フォーラム(FTFJ)「フェアトレードタウン基準」
サステナブルな商品をセレクトして取り扱う楽天グループのオンラインストア「EARTH MALL with Rakuten」では、国際フェアトレード認証を受けた商品などを取り扱っています。
チョコレート・コーヒー・チャイといった食品類から、オーガニックコットンを使用した衣類などの商品まで、幅広くラインナップしています。「フェアトレードに関心はあるけれど、どう始めてよいのかわからない」という方は、一度EARTH MALL with Rakutenのフェアトレード商品をチェックしてみてください。
フェアトレードには基準が統一されていない、品質の維持が難しい、価格が高く普及しにくい、といった問題点や課題はあります。
ここからはそれぞれの問題や課題について詳しくご紹介します。
フェアトレードの国際基準は定められていますが、厳密な法律などはなく、基準を満たしていなくてもフェアトレード商品として取り扱うことが可能です。現に、独自基準で取り扱う企業や団体も多数あります。
また、フェアトレード商品を認定する表示も統一されていません。そのため、フェアトレード商品かどうかわかりづらく、消費者への認知度が上がりにくいのが現状です。
フェアトレード商品を生産している開発途上国は、高品質な商品を継続して生産できるだけの環境や技術が整っておらず、品質が安定しないことが多いです。
そのため、せっかくフェアトレード商品としてアピールできても、消費者の満足度が上がらず、選ばれない場合があります。
また、フェアトレードの国際基準を満たすために必要となる公衆衛生が未整備であったり、大気汚染などの問題解決に向けた取り組みが十分でなかったりする生産国が多いという問題もあります。
安心・安全で高品質なフェアトレード商品ですが、価格が高く 消費者に選ばれづらいという課題があります。
フェアトレードでは適正な価格で生産者と取引するため、通常の市場価格より高い価格で原材料や製品を購入することになります。このように、生産コストが高くなると商品の価格も上がってしまうため、消費者に選ばれづらいという課題が生じます。
特に日本では高品質かつ低価格な商品が多く、品質より値段を重視している消費者が多いので、普及が進みにくい状況です。また、日本では「フェアトレード」の認知度が低く、諸外国に比べてまだ生活者に馴染みがないこともフェアトレード商品の普及が進みずらい一因として考えられます。
日本フェアトレード・フォーラム(FTFJ)によると、日本でのフェアトレードの認知率は3割程度にとどまります。それに対し、イギリスでは約8割の人が認知しています。
フェアトレードとは開発途上国の生産物を、適正な価格で継続的に購入する貿易のしくみです。不当に安い価格での取引を強いられた結果、貧困や環境破壊などが深刻化している途上国の課題を解決することを目標としています。
日本でもさまざまな取り組みが行われていますが、まだまだ世界に比べて認知度は低いのが実情です。私たち一人ひとりがフェアトレード商品を購入することで課題の解決を後押しできます。
フェアトレード商品を購入する際には国際フェアトレード認証ラベルが付いているものを選びましょう。また、ラベルがついていない商品でも企業が独自にフェアトレードを行っている場合がありますので、商品パッケージや企業ホームページなども確認してみましょう。
この機会に社会や環境のことを考え、フェアトレード商品を取り入れてみてはいかがでしょうか。

東京大学大学院工学系研究科博士学位取得。国立研究開発法人主任研究員などを経て、2019年度よりIGES専任。日本低炭素社会研究プロジェクト(2004年~2008年)やアジア低炭素社会研究プロジェクトの幹事(2009年~2013年度)として携わり、中央環境審議会地球環境部会中長期ロードマップ小委員会専門委員として、2050年までに二酸化炭素排出量を大幅削減する「低炭素社会」のシナリオ作りに携わった。気候変動のCOPには2005年(COP11)から継続して参加。