環境問題とは?
いま起こっている主な問題と私たちにできること

地球温暖化や海洋汚染、水質汚染、大気汚染、森林破壊など、環境問題は数多く存在しています。本記事では、それぞれの環境問題を詳しく解説するとともに、自分たちができる身近な対策についてもわかりやすく解説しています。

環境問題とは、人類のさまざまな活動が原因で引き起こされる環境の変化に伴って生じる問題の総称です。代表例として、地球温暖化・森林破壊・海洋汚染・水質汚染・大気汚染などが挙げられます。

今回は、このような環境問題の概要から身近な対策など、基礎知識をわかりやすく解説します。

目次

1.環境問題とは?

2.いま起こっている環境問題はどんなものがある?

  • 地球温暖化
  • 森林破壊
  • 海洋汚染
  • 水質汚染
  • 大気汚染

3.環境問題解が解決に向かう身近な行動は何がある?

  • 自動車ではなく、公共の交通機関を使う
  • 余計な買い物をせず、マイバッグを使って買い物をする
  • ごみの分別をしっかり行い、リサイクルして再利用できるようにする
  • 節水、節電を心がける

4.環境問題の解決に向けて、できることから始めよう

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環境問題とは?

解 説

地球上のさまざまな環境に、マイナスの影響を与える地球環境の変動のことです。

環境問題とは、地球上の生き物や自然に対して、マイナスの影響を与える地球環境の変動のことでその多くは、人間がものを作ったり、使って捨てたりすることで、引き起こされています。

近ごろは、気温の上昇や、酸性雨、生物多様性の減少などの環境問題が、目立っている状況です。例えば生物の多様性については、WWFジャパンによると、1970年と比べて2018年には、69%も減少しているとされています。

生物の多様性が損なわれ、絶滅した種によって生態系を維持していた別の種も滅んでしまい、害虫が発生しやすくなって食料が不足する・森林が減少して災害が起きやすくなるなど、その影響はとても大きいものです。

また、気温上昇に伴う海面水位の上昇も、深刻な問題といえるでしょう。気象庁の「日本の気候変動2020」によると、21世紀末(2081年~2100年)の世界の平均海面水位は、20世紀末と比べて、約71cm上昇する可能性もあると予測されています。

海面水位が上がると陸地が減り、食料や飲料水・安全に暮らせる土地の確保が難しくなるほか、水害が発生しやすくなるなどの影響があります。

このような環境問題に関する認識が深まったのは、1972年の国連人間環境会議からです。その後、2000年頃から「持続可能な開発の重要性」が認識されるようになり、2015年に行なわれた国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採用されたパリ協定(気候変動問題に関する国際的な枠組み)の中で、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保ち、1.5度以内に抑える努力をする」という世界全体の温室効果ガス削減目標が設定されました。

これに伴い、世界全体で環境問題の対策の必要性が高まっている状況です。

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いま起こっている環境問題はどんなものがある?

解 説

現在、クローズアップされる機会の多い代表的な環境問題は、次の5つです。

  • 地球温暖化
  • 森林破壊
  • 海洋汚染
  • 水質汚染
  • 大気汚染

このような環境問題について、「どのようなものなのか」「どういう影響があるのか」を、順番に説明していきます。環境問題について正しく理解するためにもそれぞれの問題を把握しておきましょう。

地球温暖化

解 説

地球温暖化とは、地球の平均気温が上昇しさまざまな悪影響を及ぼしてしまう問題のことです。

二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスが増えることで、地球全体がどんどん暖かくなってしまい、地球温暖化が進みます。

大気中の温室効果ガスが増加すると、太陽から降り注いだエネルギーのうち、本来であれば宇宙に放出される分が大気中にとどまりやすくなります。そのため、気温が上昇します。

産業革命以降、地球上では石油や石炭などの化石燃料を使うことが増えたので、二酸化炭素の排出量が大きく増加しました。その結果、地球を包む温室効果ガスの濃度が上がり、熱の吸収量が増えることで、気温が上がってきています。

地球温暖化が進むと、災害が激化したり、食糧難や生態系の破壊につながったりするため、大きな被害につながる可能性があります。

地球温暖化による主な影響

  • 海面水位が上昇し、陸地が減少する
  • 高潮や洪水などの災害が発生しやすくなる
  • 高温や少雨により、農作物などの収穫量が減る
  • 生態系の破壊や生物多様性の減少につながる
  • 少雨による水不足に陥る

森林破壊

解 説

森林破壊とは、森林が自然に元通りに戻らないほど、減ったりなくなったりしてしまう環境問題のことです。

森林破壊は、人間の土地開発や農地・住宅地への転用、多すぎる量の木の伐採や違法な伐採、焼畑農業などによって、引き起こされます。

環境省によると、世界の森林面積のうち、毎年330万ヘクタール減少している状況です。特に、熱帯雨林やアフリカなどの特定の森林や地域の木々が消えるスピードが、速くなっています。

森林破壊の進行により、そこに生息していた野生動物の絶滅を進行させてしまいます。生態系が破壊されることで、生物の多様性も損なわれるでしょう。

また、すみかを追われた野生生物が人間の生活圏に侵入することによって、従来は野生生物にだけ感染していた動物由来の感染症が、人間や家畜にも広がってしまうことが心配されています。

さらに、二酸化炭素の吸収源である森林が減少することで、地球温暖化を進行させてしまうといった悪影響もあります。

森林破壊による主な影響

  • 生態系を破壊する
  • 新たな感染症や疾病の流行につながる
  • 地球温暖化が進行しやすくなる

海洋汚染

解 説

海洋汚染とは、海がごみなどで汚れてしまう問題です。

海洋汚染は、人類の活動に伴って引き起こされ、最近は、海洋ごみの漂流が中心となっている問題です。

海洋汚染が悪化すると、海の生態系が破壊されるほか、漁獲量が減り食糧を十分に得ることや漁業を続けることが難しくなるといった影響があります。

海洋汚染の主な原因は、産業廃棄物や漁具の不法投棄、工業排水・家庭からの生活排水の流入、船舶の事故に伴い油が漏れ出ることなどです。その中でも、海洋プラスチックが、近年、特に問題視されています。

海洋プラスチックとは、レジ袋・ペットボトルといった容器包装や漁網などのプラスチック製品が、海に流れこんだもののことです。プラスチック製品は、自然分解するまでの期間がとても長いため、一度海に流れこむと、長期間漂流し続け悪影響を及ぼします。

例えば、ビニール袋や漁網を、海鳥や海洋生物が間違って食べたり絡まったりして、死亡する危険性があるのです。

また、紫外線などにより細分化されたマイクロプラスチックを、海洋生物が体内に取り入れることで、生態系に悪影響が及ぶ危険性があると言われています。

海洋プラスチック及ぼす影響について詳しくは、「海洋プラスチック問題とは?現状の問題と私たちにできること」をご覧ください。

世界経済フォーラムによると、2050年には、海洋プラスチックごみの量が、海にいる魚よりも多くなると予想されている状況です。海洋汚染が進むと、海洋生物の命が脅かされるほか、魚介類を食べて生活する私たちの健康にも影響が及びます。

海洋汚染による主な影響

  • 海の生態系に悪影響が及ぶ
  • 健康被害につながる危険性がある

水質汚染

解 説

水質汚染とは、海だけでなく川や湖・地下水などの水が、汚れてしまうことです。

河川や湖・地下水・海洋などの水質は、濁りや色の変化、化学物質や細菌の増加などによって悪化します。

水質汚染は海洋汚染と同様に、工業排水・家庭用排水の流入や地球温暖化などが、主な原因です。

水質汚染が進むと、生態系や人々の健康、地域経済など、いろいろなところに影響があります。有害物質が流れこむと、そこに生息する魚やイルカなどの生物を、大量死させるリスクが高まるのが代表例です。

さらに、汚染された水を飲んだり、そこで育った魚などを食べたりすると、病気や体調不良につながるリスクが高まります。

日本では、水質汚染は大きく改善されている傾向にありますが、過去には、水俣病やイタイイタイ病といった公害の原因となり多くの被害者を出しました。

水質汚染によって安全な水産資源が獲れなくなると、その地域の漁業や水産加工業の売上低下にもつながりかねません。水質汚染は、地域経済にとっても大きな打撃となり得るのです。

海洋汚染による主な影響

  • 生態系の破壊
  • 安全な水が確保できなくなり、感染症の蔓延など健康被害が発生
  • 漁業や水産加工業が打撃を受ける

大気汚染

解 説

大気汚染とは、健康を害する物質で空気が汚れてしまうことです。

工場でものを生産したり、自動車を運転したりすることで排出された有害物質によって、大気汚染が発生します。また火山の噴火によっても大気汚染物質が排出されます。

PM2.5や光化学オキシダントといった大気汚染の進行は、呼吸器系の疾患やアレルギーなどの健康被害のリスクを高める原因の1つです。

また、大気汚染によって酸性雨が降ると、樹木が枯れてしまったり、河川や湖沼の水が汚れて魚が住めない環境になり生態系が破壊されたりしてしまいます。

日本でも、大気汚染は解決すべき課題です。政府は、光化学オキシダントや二酸化硫黄(SO2)・浮遊粒子状物質(SPM)など大気を汚染する物質に大気環境基準を定め、全国でチェックを続けるとともに、対策を実施しています。

大気汚染による主な影響

  • PM2.5や光化学オキシダントにより、健康被害が発生
  • 酸性雨により、生態系が破壊される
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環境問題解が解決に向かう身近な行動はなにがある?

解 説

マイバックの利用やリサイクル、節電など身近な行動で、環境問題の解決につながります。

環境問題を解決するには、国レベルの取り組みだけでなく、私たちが身近なところから行動を起こすことが欠かせません。

例えば、次のような取り組みが、環境問題を解決に導く上で有効です。

環境問題解が解決に向かう身近な行動の例

  • 自動車ではなく、公共の交通機関を使う
  • 余計な買い物をせず、マイバッグを使って買い物をする
  • ごみの分別をしっかり行い、リサイクルして再利用できるようにする
  • 節水や節電を心がける

それぞれのもう少し詳しい取り組み方や、どのような環境問題に効果的なのかについて、以下で説明しますので、参考にしてみてください。

自動車ではなく、公共の交通機関を使う

移動時は、自動車ではなく、公共の交通機関を使うようにしましょう。自家用車を利用する場合と比べて、公共交通機関は一人あたりの二酸化炭素の排出量が少ないため、公共の交通機関は、大気汚染の問題を解決するのに効果的だからです。

通学・通勤・旅行・ショッピングなどで移動する際に自家用車を利用してしまうと、地球温暖化の原因となる二酸化炭素が発生してしまいます。そこで、移動手段を公共の交通機関に変更することで、温室効果ガスの発生量を減らすことが可能です。

さらに、できる範囲で自転車や徒歩での移動に切り替えることで、温室効果ガスの発生をゼロにできるので、地球温暖化の解決に大きく貢献できます。また、大気汚染の解決にも役立つでしょう。

自動車を利用せざるを得ないときも、工夫次第で、温室効果ガスの発生量を減らせます。例を挙げると、アクセルを一気に踏み込まずゆっくりと踏むようにするなど、エコドライブを心がけることが効果的です。できることから実践してみましょう。車に乗るときは、できるだけ乗り合って移動すると、一人当たりの負担をへらすことができます。さらに、燃費が良く、CO2排出が少ない車に買い替えることも有効です。

余計な買い物をせず、マイバッグを使って買い物をする

買い物をするときは、「余計なものは買わない」「レジ袋はもらわず、マイバッグを利用する」という2点に注意しましょう。

例えば買い物をする際に、必要なものをメモしておき、それ以外の余計なものを買わないようにすることで、いらなくなって捨てるものを減らせるので、ごみの減量につながります。これによって、ごみを運んだり燃やしたりすることで発生する温室効果ガスを減らし、地球温暖化の解決に貢献することが可能です。

また、レジ袋をもらわないようにすれば、プラスチックごみを減らすことができます。ごみを減らせば、地球温暖化対策になることに加え、海洋プラスチックによる海洋汚染を予防することにもつながるでしょう。

ごみの発生そのものを減らすリデュースに取り組んでも出てしまったごみについては、再利用(リユース)や再資源化(リサイクル)にも、あわせて取り組むことが有効です。

フリーマーケットに出品する・リメイクするといった再利用や、ペットボトルはごみとして捨てずに資源回収ボックスに出すといった取り組みについても、挑戦してみてください。

最近では、必要な分だけを注文できる量り売りのサービスを行っているお店も増えてきましたので、是非利用してみてください。

ごみの分別をしっかり行い、リサイクルして再利用できるようにする

日頃から、ごみの分別をきちんと行い、リサイクルできるものはすべて再利用できるような状態にしておくことも、環境問題解決に貢献するには欠かせません。

ペットボトルや食品トレーなど、資源回収ボックスに投入することでリサイクルできるものは意外と多くありますが、分別できていないと、ごみとして捨ててしまいがちだからです。

資源として再利用できるものを確実に再利用することで、ごみの量を大幅に減らすことができ、地球温暖化の解決に貢献できます。地域によっては、古紙なども回収しリサイクルを行っているので、まずは、「どのようなものがリサイクルできるのか」を正しく知ることから始めるとよいでしょう。

特に、プラスチックの原料となる化石燃料は採れる量に限りがあるため、持続可能な発展を続けていくためにも、リサイクルを心がけることが大切です。

節水、節電を心がける

節水や節電を心がけることも、環境問題の解決に効果の高い身近な取り組みです。

節水し、水の利用量を減らすことで、水を浄化するために必要となる電気などのエネルギーの使用量を減らせます。同じく、節電によっても電気の使用量を減らすことができ、地球温暖化防止に貢献できるでしょう。

これは、日本における発電方法の大半が、二酸化炭素などの温室効果ガスの発生を伴う火力発電であるためです。電気の使用量が減れば、発電に伴う温室効果ガスの発生を減らせるので、地球温暖化の解決に役立つのです。

節水方法としては、「蛇口は小まめに開け閉めする」「節水シャワーヘッドに変更する」などが挙げられます。また、節電には、「使用していない部屋の電気は消灯する」「長時間使わない電化製品はコンセントから外しておく」といった対策が有効です。

また、家電製品を買い替える時に、より省エネな機器に買い替えることは、光熱費の節約になり、長い目で見るとお得になるケースが多いです。さらに、断熱性の高い窓にリフォームしたり、高断熱高気密住宅にしたりすることは、健康にも良いことが実証されています。屋根などに太陽光を設置すれば、災害時も安心して電気を使うことができます。

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環境問題の解決に向けて、できることから始めよう

今世界中で直面している環境問題は、地球温暖化・海洋汚染・水質汚染・大気汚染・森林破壊など、多岐にわたります。これらの問題の多くは、私たち人間が物を作り、消費して破棄することで引き起こされています。

環境問題は、地球上の生物や自然環境などの生態系を破壊するだけでなく、人間の健康や経済などにも悪影響を及ぼすので、皆で一丸となって解決に取り組むべき課題です。

政府や企業の活動だけではなく、私たち一人ひとりの行動も重要となります。例えばマイバックの利用や、リサイクルなど身近な取り組みで問題解決に貢献できるので、次の世代のためにもできることから始めてみましょう。

監修:藤野 純一
地球環境戦略研究機関(IGES)上席研究員

東京大学大学院工学系研究科博士学位取得。国立研究開発法人主任研究員などを経て、2019年度よりIGES専任。日本低炭素社会研究プロジェクト(2004年~2008年)やアジア低炭素社会研究プロジェクトの幹事(2009年~2013年度)として携わり、中央環境審議会地球環境部会中長期ロードマップ小委員会専門委員として、2050年までに二酸化炭素排出量を大幅削減する「低炭素社会」のシナリオ作りに携わった。気候変動のCOPには2005年(COP11)から継続して参加。

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目次

1.環境問題とは?

2.いま起こっている環境問題はどんなものがある?

3.環境問題解が解決に向かう身近な行動は何がある?

4.環境問題の解決に向けて、できることから始めよう