楽天野球団が目指す日本一のサステナブル・スタジアムとは?

地球環境について考える日である2022年4月22日のアースデイ。この日、プロ野球チーム「東北楽天ゴールデンイーグルス」を運営する楽天野球団が、本拠地である「楽天生命パーク宮城」を日本一のサステナブル・スタジアムにすることを目指すと宣言しました。

2004年の創設から地域密着型球団として取り組みを重ねてきた楽天野球団が挑む、この新たな目標について、野球×サステナビリティの意義と共に、ご紹介したいと思います。

今回お話を伺ったのは、楽天野球団に2007年に入社し、現在、スタジアムのことを知り尽くすスタジアム部の部長であり、サステナビリティ担当を務める山縣 大介さんです。

野球を通じて社会課題解決にひたむきに取り組むうえでの道標

――日本一のサステナブル・スタジアムを目指すことになった背景を教えてください。

まず、前提となるのは、私たち楽天野球団が、70を超える多様なサービスを提供する楽天グループの一員であることです。2022年に楽天が創業25周年を迎えるにあたり、グループ全体でグリーン社会の実現に向けてサステナビリティへの取り組みを加速化するという目標を掲げました。これを受け、グループの一員として楽天野球団ができることは何か今一度見つめ直そうと、サステナビリティの取り組みを整理していったところ、すでに多くの事例や進行中の活動があることを改めて再確認することができました。

「東北」という地域名を冠するプロ野球チームである「東北楽天ゴールデンイーグルス」は、創設時から「地域密着」という言葉を大切にしています。東北という地域に、そしてファンの皆様に支えられ、喜びや感動を共に分かち合いながら、時には苦難も地域の皆様と共に乗り越えてきました。長年続けてきた地域の皆様にご支持いただけている取り組みは継続と拡充をしつつ、そこへ楽天野球団らしい新たな施策を生み出していきたい。そうした想いを実現するうえで重要となるのは、軸を据えて進むべき道標をより確たるものにすることだと考えました。

そうして、環境・社会・地域の3つのテーマを軸とし、野球を通じて社会課題解決にひたむきに取り組んでいくという新たな幕明けの象徴の意も込めて、サステナビリティの特設サイトを設置し、「日本一のサステナブル・スタジアムを目指す」と宣言することに至りました。

欠かすことのできない軸のひとつは「地域」

――軸が3つあるということですが、どういった内容でしょうか?

企業が長期的に成長するために必要と言われる観点の「ESG」は、一般的に「E」は「環境(Environment)」、「S」は「社会(Society)」、そして「G」は「ガバナンス(Governance)」を指しますが、楽天野球団が重きを置く観点の一つを、「G」ではなく「C」の「地域(Community)」 にし、「ESC」としていることが特徴です。

「環境」の軸では、大規模イベント主催者として、環境に配慮した試合運営およびスタジアム運営に取り組むため、3Rと言われる「Reduce」、「Reuse」、「Recycle」のテーマに則って、プラスチックの使用量削減、フードロスの抑制、CO2の排出量削減などを行います。球団創設当初から設置している「エコステーション」では、ボランティアスタッフによる球場内で出たごみの分別回収の推進や啓発活動も行っています。

「社会」の軸では、人権課題の防止・軽減や、従業員、取引先やファンの皆様をはじめとするすべてのステークホルダーの人権に配慮した事業活動に取り組みます。バリアフリーの観戦環境づくり、少年野球チームや福祉団体の皆様の公式戦へのご招待もこの軸に含みます。

そして、他2つの軸にも密接に関係し、欠かすことができない3つ目の軸が「地域」です。地域の皆様と共に、地域課題解決に働きかけていくことを趣旨としています。この働きかけにより、地域の子どもたちに、夢や目標を持つことの大切さを伝え、「東北で育って良かった」と誇りを持ってもらう一助になることを願っています。コロナ禍で見合わせていた学校などの施設訪問も、行動制限緩和に伴って、今後徐々に再開していく予定です。

サステナビリティの取り組みを身近に感じてもらえるように

――今シーズンから新たに取り組んでいることや今後の展開について教えてください。

2022年4月1日から、自社の事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力へと切り替えたことで、電力使用によって排出されるすべてのCO2削減を実現しています。また、プラスチック使用量削減の一環で、ビールカップ、ストロー、スプーンおよびフォークを、環境対応素材配合のものへと今シーズンから切り替えていっています。


環境対応素材を配合したビールカップ、ストロー、スプーン、フォークエコ素材 ⓒRakuten Eagles

本来であれば廃棄となっていたものに、付加価値をつけて命を吹き込むアップサイクルにも力を入れていて、例えば、試合中に折れて使えなくなったバットを、宮城県石巻市の作家さんとコラボレーションしてこけしにするという取り組みを昨年初めて実施して、好評だったこともあり、今年も継続することになっています。今シーズンは、選手が実際に着用していた古いユニフォームを、宮城県仙台市で着物や帯のアップサイクルを行う企業さんに協力していただいて、エコバックや小物入れにする新たな取り組みも進めています。


試合中に折れた選手のバットのアップサイクル ⓒRakuten Eagles

また、サステナビリティの取り組みは、素材が変わっただけ、手に取っただけでは変化が分かり難いという面が少なからずあって、イベント等を通じて可視化することで身近に感じてもらえるようなアプローチも、多くの人々に意識変容をもたらすうえで意義があると考えています。

その一例として、知的障害のある作家さんのアートを様々な形で社会に展開するヘラルボニーさんとコラボレーションして、東北を拠点に活動される作家さんのアート作品を、ファン・選手・スタジアムが一体となって楽しめるイベント「イーグルスフェスティバル」のメインビジュアルに「起用」しました。


イーグルスフェスティバルのメインビジュアル「祈願」 ⓒRakuten Eagles

続いて、7月10日に開催するサステナビリティをテーマにした「サステナブルデー」では、来場者の皆様が「見て」「触って」「参加して」楽しく学ぶことができるよう、スタジアムのサステナブルな取り組みについて学ぶツアーや捨てられる素材を使った応援グッズ作りなどを展開します。

さらに、今年のSUMMERユニフォームは、東北の豊かな大地と美しい緑が変わることなくあり続けることを願った「EAGLES EARTH GREEN」です。「夏スタ!ろっけんまつり」のイベント開催期間中の9試合と「サステナブルデー」で選手がこのユニフォームを着用し、ファンの皆様とともに頂点を目指して闘います。


SUMMERユニフォームを着用した鈴木 大地選手(写真左)と銀次選手(写真右)
ⓒRakuten Eagles

また、6月12日に楽天生命パーク宮城で行ったイベント「Rakuten DAY」に続き、楽天では野球以外のスポーツでもサステナビリティと掛け合わせたイベントを行っています。6月26日には、ヴィッセル神戸のホームスタジアムであるノエビアスタジアム神戸にて「スポーツの未来を共に創ろう」をテーマに「Rakuten DAY」を実施しました。

その催しの中では、スポーツの未来に向けた取り組みとして、視覚障がいをお持ちの方と健常者が助け合ってプレーする「ブラインドサッカー🄬」の体験会を催したほか、会場から出るごみを6つのジャンルで分別し、それらを資源としてグッズなどに活用する「ECO ZONE by Rakuten」を設置するなど、ノエビアスタジアム神戸が目指すサステナブルな社会への取り組みを来場者の皆様に体感いただくイベントとなりました。

地域の皆様、自治体やパートナー企業様と共にサステナブルな取り組みを推進

――楽天野球団の考える野球×サステナビリティの意義を教えてください。

スポーツは、人々に感動と喜びを届けるだけでなく、あらゆる垣根を越えて人々をつなぎ、地域を発展させる大きな力を持っています。公共性の高いプロ野球チームの運営に携わる企業として、私たちは、拠点を置くこの東北への地域貢献を重視し、「日本一愛される球団」となることを創設以来目標にしてきました。

私たちが地域を想い、地域と同じ視点を持って様々な社会課題解決に取り組むこと、また、サステナブルなアイデアが詰まったスタジアムへ足を運んでいただくことを通じて、多くの人々がサステナビリティについての新たな気付きを得るきっかけにつながれば嬉しいです。

今後も、ここ東北から、日本中の、世界中の人々が夢を持って幸せに生きられる社会が何世代にもわたって続いていくことができるよう、野球を通じて、地域の皆様、自治体やパートナー企業様と共にサステナブルな取り組みを推進していきたいと思います。

6月にはグループ連携で『スポーツの未来を共に創ろう! Rakuten DAY』を実施した(注)

今シーズンのプロ野球もいよいよ後半戦に突入です。野球に限らず、サステナビリティの取り組みにもますます目が離せませんね。今後の展開にもご注目ください!

(注)参考ページ 「スポーツの未来を共に創ろう!Rakuten DAY」https://corp.rakuten.co.jp/event/betterfuturetogether/202206rakutenday/?scid=we_egl_newsup20220603 

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