生活にサステナビリティを取り込む。あなたの選択で世界を変える方法とは?

2020年7月からレジ袋が有料となり、9月には、農林水産省、消費者庁、環境省が連携し、「サステナウィーク~未来につながるおかいもの~」が実施されるなど、以前より「サステナビリティ(サステナ)」という言葉を耳にする機会が増えた方も多いのではないでしょうか?

「サステナウィーク」は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の2030年までの達成を目指して持続可能な消費を広める活動を推進するプロジェクト「あふの環2030」において、第75回国連総会が開催される2020年9月17日(木)から27日(日)まで、プロジェクトに参画する企業などがサステナブルな取り組みを発信する期間として実施されました。

日本のみならず世界全体で、企業が環境についてどう考えているのか、何に取り組んでいるのかが、企業の価値を決める重要なポイントとなってきており、2014年にはそのひとつの指標として、国際環境NPOの「The Climate Group」により「RE100(Renewable Electricity100)」という環境イニシアチブが提唱されています。海外ではIT企業をはじめ、多くの企業がこれに参画しており、楽天も2019年11月に参画しています。

今回は、「RE100」とは何か、そして楽天が「RE100」に加盟した経緯や実際にどのような取り組みをしているのかについて、サステナビリティ部の眞々部 貴之さんにお話を伺いました。

サステナビリティ部 シニアマネージャー 眞々部 貴之さん

眞々部さんは、楽天グループのサステナビリティ戦略策定、ESG(※)情報開示のほか、ステークホルダーと連携したソーシャルイノベーションの創出を主に担当。2018年には、未来を変えるインターネット・ショッピングモール&オンラインメディア「Earth Mall with Rakuten」の「楽天市場」内へのオープンを主導し、サステナブルな買い物文化づくりにも携わっています。
※ESG: 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取って作られた言葉。近年、この3つの観点から企業を分析して投資する「ESG投資」が注目されている。

――「RE100」聞き慣れない言葉ですが、これはどういったものなのでしょうか?

眞々部: 「RE100」とは、国際環境NPOの「The Climate Group」が、気候変動の情報開示を推進するNPO「CDP」とのパートナーシップのもと提唱している、“再生可能電力を100%使用して事業を運営していく”という国際的な環境イニシアチブになります。主に、企業の環境に対しての取り組みに関わるものなので、普段の生活ではなかなか耳にする機会は多くないかもしれないですね。

この「RE100」に参画するには、いつまでに目標を達成するのかを宣言する必要があり、2030年や2050年までの実現といった長期的視点で目標を掲げる企業も多いのですが、楽天は2025年をターゲットに取り組んでいます。

短期間での目標設定、その原動力

――2025年というと、もうすぐなので「間に合うの?」と思ってしまいますが、なぜ2025年なのですか?

眞々部: 楽天は、事業活動で使用するエネルギーを再生可能エネルギーに切り替えており、実は2019年末時点ですでに50%を達成しています。具体的には、省エネルギー機器の導入や森林経営などの取り組みによる、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する「J-クレジット制度」も活用することで達成しています。日本全国の一般家庭のソーラーパネルから生み出された再生可能エネルギー価値(J-クレジット)も購入することによって、2019年の電力使用量の50%を再生可能エネルギー由来としました。

大きなところでは、「楽天市場」の事業ですでに100%に到達しているんですよ。2025年を見据えて、順調に目標達成に向けて進められていると思います。元々「RE100」に参画するにあたって、どこに目標を置くのか議論を重ねた上で、楽天事業活動において使用している電力を基に検討し、確実かつ迅速に達成できる現実的な目標として設定しました。

また、2025年を目標に設定した理由はもうひとつあります。2030年までの達成を目指すSDGs(持続可能な開発目標)17の目標のうち、「7. エネルギーをみんなにそしてクリーンに」と「13. 気候変動に具体的な対策を」の課題に対して、IT企業として多くの電力を使用している楽天でもその責務として早急に取り組みたいという想いもあり、2025年という短期間での目標設定をしました。

ユーザー意識の変化を後押しする

――楽天のサステナブルな取り組みといえば、サステナブルなお買い物体験ができる「EARTH MALL with Rakuten」は知っていましたが、エネルギーの分野でもサステナブルな活動をしているのは意外でした。「RE100」にコミットすることになった経緯を教えてください。

眞々部: レジ袋有料化も後押しし、皆さんのサステナビリティに対する意識も高くなってきている印象があります。実際に、「EARTH MALL with Rakuten」で取り扱う商品数もオープン時に加えて格段に多くなり、サステナブルな商品を購入される方も増えてきています。少しずつサステナブルなお買い物が浸透してきていることを実感しています。

サービスの提供を通じてユーザーの意識の変化を感じることができているのは嬉しいですね。実はこの「EARTH MALL with Rakuten」をはじめとする楽天の様々なサービスが、エネルギーの分野でもサステナブルな活動をするきっかけのひとつとなっています。楽天のようなインターネットサービス企業はデータセンターをはじめとして、実は皆さんが思うより多くの電力を使っているのです。ただ、それがどの程度なのかは、外からは見えづらいし想像もつきにくいですよね。

ここで改めて前提をご説明させていただくと、気候変動・温暖化の原因のひとつは二酸化炭素の排出と考えられています。化石燃料由来の発電による電力を使用することは、その排出を促すことにつながってしまいます。温暖化を抑えるためにも世界的に低炭素・脱炭素社会へと向かう流れがあります。

そのため、楽天がSDGsの目標達成に貢献するためにも、事業を運営しサービスを提供する以上、そこで使用する電力を再生可能由来のものにして、二酸化炭素の排出を抑えていくべきと考えたのです。私たちのようなインターネット企業が再生可能エネルギー由来でサービスを運営することで、それを利用する消費者と一緒になって環境負荷を軽減するチャレンジを推進することができるのだと思っています。

「RE100」への楽天のコミットメントは、単なる一企業の環境負荷軽減対策というだけでなく、実は楽天のサービスを利用する消費者の方にも関わっていただけるサステナブルな取り組みと言えるのではないでしょうか。

業界別の再生可能電力導入への進捗状況を示すグラフ
情報技術(IT)業界は再生可能エネルギー100%目標に対する進捗がかなり進んでいる。
出典: RE100 Progress and Insights Annual Report, November 2018
「Progress (%) towards RE100 goal by sector (GICS)」

目に見えない部分にも意識を向けてみる

――今までネットでお買い物するときに「環境にやさしい」とか「エコ」と付いたものを積極的に選んで購入していましたが、商品の検索や購入行為自体に二酸化炭素が発生していたとは衝撃です。

眞々部: そこまで考えて行動できる人もなかなかいないですよ(笑)。ただ、利用するサービスを見直すこともサステナブルな選択につながってきます。例えば、楽天では、17のサービスが100%再生可能エネルギー由来で運営されています。その中で買い物したり、検索したりして利用する分の二酸化炭素の排出は「ゼロ」となるので、こうした目には見えないところにも意識を向けることで普段の生活の中にサステナブルな行動を取り込めることになります。もちろん、日々の生活でサステナブルな取り組みを行っていくことも重要ですが、まずはできることからやっていけるといいですよね。

――目には見えないけれど、検索する行為もサステナブルにつながる・・・不思議な感覚です。旅行サイトを見るのが好きなので、まずは「楽天トラベル」で調べてみることにします!「RE100」、この2025年の目標を確実に達成していくため、残りの50%達成のためにどのようなことを考えていますか?

眞々部: 目標とする2025年に向けてもっと具体的に動きたいですね。再生可能エネルギーは都市部より地方で作られているケースが多いのが現状です。最近では、各地方自治体の再生可能エネルギーに対しての感度も非常に高く、そういった地方自治体の方々と、将来的にはパートナーシップを結んで一緒に再生可能エネルギーを創出していけたらいいなと思っています。消費するだけではなく、再生可能エネルギーを創り出すという世の中の空気づくりや、実際の仕組づくりにも関わっていきたいです。

――最後に、今後の楽天のサステナビリティ活動や、活動に対しての想いを教えてください。

眞々部: 楽天は、70以上の様々なサービスを提供しています。お買い物や旅行、日々のお支払いなど、生活の様々なシーンにおいて、皆様がサステナブルな生活を送ることを一番サポートできる企業なんじゃないかと思っています。取り組みはまだまだ始まったばかりですが、「楽天市場」の店舗さんや「楽天トラベル」の宿泊施設さんとも協力させていただきながら、楽天のサービスをもっとサステナブルにしていくこと、お客様の生活にもっとサステナブルな選択肢を提案していくことに挑戦したいです。


エコバッグやマイボトルの持参など、できることはやっていたつもりでしたが、利用するサービスの選択で企業と共に環境負荷軽減に貢献する方法もあったのですね。サステナブルな行動はコツコツと続けることが大事なので、自身でできることを選択しながら、その選択のひとつに「RE100」に取り組んでいる企業のサービス利用を選ぶことも含めてみてもいいかもしれません。

ネットでお買い物をしたら、再配達にならないようにきちんと受け取る。これも今日からできるサステナブルな行動ですね。些細な自分の行動にも目を向けることでまた違う選択肢が増えていきそうです。そんなあなたの日々の選択がとてもサステナブル!なものになりますように。

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