RAKUTEN×GLOBAL それぞれが必然的に持つ強みを掛けあわせて実現するハイブリッド・エンジニアリング

2007年3月に楽天の技術戦略を担う部門として設立された楽天技術研究所(Rakuten Institute of Technology:RIT)。所長を務める森正弥は、2006年に外資系コンサルティング会社からRIT活動推進のために楽天に転職しました。2007年6月にプログラミング言語Rubyの開発者であるまつもとゆきひろがフェローとして参加。そのほかにも錚々(そうそう)たる人物がフェローとして同研究所の活動をサポートしています。そして2009年には、技術で世の中をエンパワーメントしようとする楽天のハッカーマインドに惹かれ、吉岡弘隆が楽天にジョインし、技術理事に就任。楽天の技術は何を目指しているのか。楽天の技術をけん引する楽天技術研究所所長 森正弥と技術理事 吉岡弘隆が語り合いました。

Co-Working Modelで、研究成果をビジネスの進化につなげていく

現在、RITの人員構成は東京30名、ニューヨーク10名の計40名。その多くはコンピュータサイエンスの博士号取得者です。日本のアカデミックの分野では、「技術の楽天」はかなり浸透したのではないでしょうか。

吉岡

実際のビジネスのデータやお客様のニーズに触れられるのは、インターネット関連の技術を追求している研究者やエンジニアにとって一番面白いことなんです。圧倒的なデータ量をどう処理するか。そういった技術の研究は大学の研究室ではできませんから。日々、データと格闘している現場に触れられるのは、研究者にとって非常に魅力的だと思います。

2007年にRITが本格稼働してから3年間は、とにかくビジネスに貢献するアウトプットを出すことに注力してきましたからね。RITの研究分野にはインテリジェンス、パワー、リアリティの3つがありますが、例えばインテリジェンス分野ではレコメンデーションエンジンやサーチ技術、パワー分野ではROMA(キーバリューストア)、fairy(並列処理のフレームワーク)が実サービスに採用され、ビジネスに貢献しています。その後、三木谷社長による100人規模にするビジョンの発表やニューヨークの支局の開設など、グローバルでR&Dの強化してきた結果、多様な人材が集まりました。2012年からはそれらの研究員の能力や才能を直接、サービスに貢献できるよう、現場の近くに研究員の席を設けるCo-Working Modelを実践しています。一見、地味な取り組みですが、ビジネスに対して大きな効果が出てきています。

吉岡

研究員と共に新しいアルゴリズムや手法を実装していくCo-Working Modelは、エンジニアに成長をもたらすなど、いい刺激となっています。

国際学会、オープンソースのコミュニティ活動を通して、「技術の楽天」を全世界に発信していく

吉岡

しかし、楽天は海外ではまだまだ無名の新人と言わざるを得ません。

私をはじめRITの研究員が国内学会の運営委員や幹事を務めたり、また当社が保有しているデータを使って大学の研究室と共同研究したりすることで、国内の認知度は高まりましたが、国際学会となると最近、ようやく論文が通るようになってきたレベル。三木谷社長が今後欧州にもRITの支局を設置すると言及しましたが、人材を集めるためにも国際学会での実績を積んでいかねばならないと痛感しています。

吉岡

エンジニアの世界も同様です。グローバルで「技術の楽天」が浸透するということは、例えば海外の著名なインターネット企業で働くエンジニアの間で、「楽天という面白い会社ある」と話題になるようなことを意味します。その関門を乗り越えるために必要になるのが発信力です。オープンソースプロジェクトへの貢献やコミュニティ活動はその一例でしょう。RITは先ごろ、Amazon S3互換の分散型ストレージシステム「LeoFS」をオープンソースとして公開しました。LeoFSがグローバルに普及し、オープンソース的なコミュニティ活動が活発化すれば、その開発者と仕事をしたいと楽天を希望するエンジニアが増えてくると思うんです。オープンソースプロジェクトやコミュニティ活動をしている人たちが、入社したいと思う会社にすることが私のミッション。エンジニアにリスペクトされるエンジニアを数多く輩出するためにも、オープンソースなどのコミュニティ活動への参加を推進していきたいですね。

2007年より毎年開催している楽天テクノロジーカンファレンスも、我々の発信力の現われのひとつです。

吉岡

同カンファレンスは海外からのゲストスピーカーだけでなく、当社のエンジニアも多数登壇しますが、2012年はすべてのセッションを英語で実施しました。日本にいながらにして、海外のカンファレンスを無料で受講できるような機会となりました。日本のエンジニアによい刺激を与えられているのではないでしょうか。

日本が固有に持つエンジニアリングの強みと、海外のそれを掛けあわせて新たなステージへ

日本人の最大の強みはモノづくりにおける品質へのこだわりです。そしてそれを継承していく力があることです。しかしこれからはそれだけでは勝つことはできません。自分たちが持つ強みと、欧米諸国が持つ強みを組み合わせて新たなモノを作り出す能力が求められていると感じます。そのためには相互理解が重要となり、その手段として英語が不可欠になるというわけです。当社は英語化ばかりが注目を集めがちですが、相互理解を深めるため外国人社員に対しては、エグゼクティブクラスからジャパナイゼーションも実施しています。このようにグローバルな相互理解を深めるカルチャーを持つ環境に身を置いているかどうかが、今後、エンジニアが生き残るためには重要な条件になると思います。

吉岡

同感ですね。私はこれまで複数の外資系企業で働きましたが、そのいずれの企業よりも楽天はグローバルを意識できる職場です。例えば前前職の米国本社の企業では、多様性を受け入れるような土壌はなく、ただ本社の決定事項を粛々と実行するような風土でした。しかし楽天は多様性を受け入れ、世界中の人たちとどうやってシナジーを生むかということにチャレンジしている。数年後には20数カ国に楽天経済圏を広げるという宣言もしています。面白い体験ができるだけではなく、エンジニアとしての価値も必ず高められる。エンジニアにとっても楽天ほど、魅力的な仕事場はなかなか巡り会えないと思います。

森正弥

執行役員 楽天技術研究所 所長

慶応義塾大学経済学部卒業。1998年5月アクセンチュア入社。製造業・官公庁を中心にIT戦略策定、基幹システム構築、Webシステムの構築、IT標準策定、先端技術研究所展開プロジェクトに従事。2006年9月楽天に入社。楽天技術研究所の所長としてメンバーを統括、研究開発を指揮。Rubyアソシエーション評議員、企業情報化協会 ビッグデータコンソーシアム 副委員長を務めるなど、幅広い活動を展開している。

吉岡弘隆

技術理事

慶應義塾大学工学部修士課程修了後、日本DECに入社。研究開発センターで日本語COBOLの開発、VAX Rdbの日本語化・国際化などに携わる。1994年日本オラクルに転職。米国オラクルでOracle8の開発に従事。2000年にミラクル・リナックスの立ち上げに参加し、取締役CTOに就任する。2009年に楽天に入社。カーネル読書会主宰をはじめ、さまざまなIT勉強会を主催している。

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