難しい課題へのチャレンジがイノベーションを生む。楽天技術研究所/RAKUTEN INSTITUTE OF TECHNOLOGYはその体現の場だ!

楽天の技術戦略の中核を担うR&D部門、楽天技術研究所(以下RIT)。開設は2005年12月1日。東京大学・米澤明憲名誉教授がRITの技術顧問に就任したことでその活動が始まりました。楽天創業10周年目となる2007年、プログラム言語「Ruby」の開発者まつもとゆきひろ氏のほか、iモードの父として広く知られる夏野剛氏、元ソニー・コンピュータエンタテインメント名誉会長の久夛良木健氏などがフェローとして加わり、活動が本格化。現在は「More Than Web -来るべき豊かなリアリティを-」をコンセプトに、研究者の「面白い」「やりたい」「興味がある」をサポート、先進的技術から革新的サービスにつながる可能性創出を目指した研究開発が行われています。

サービスへの導入を目指し、研究員自信が興味・関心のあるテーマに取り組む

まつもと

RITでは、「自然言語」「マルチメディア」「データマイニング」「大規模・分散」などの注力テーマの下、各研究員の関心・興味に従いさまざまな研究を行っています。例えば私の場合は、Rubyで実装した分散データベース「ROMA」と分散処理フレームワーク「fairy」の開発に携わりました。現在はフェローとしてサービスの開発部隊とも交流を持ち、オープンソースの情報提供を行ったりしていますが、まずは自分の研究テーマを紹介してもらえますか。

John

私が携わっているのは、様々なデータ内の不正や異常を検出する技術です。楽天市場では同じ商品が複数の店舗で売られています。各店舗では自分の商品を買ってもらおうと、商品写真の取り方や、商品説明文の書き方、配送時の対応など一所懸命工夫を凝らしています。ですが、このような正しい手段ではなく、不正な手段を使った場合、それを検知できるような技術を開発して、実際にサービスに導入されました。一方、楽天レシピでは「じゃがいも」と正確に記述する人もいれば、「じゃが」や「男爵」などの異なる記述をする人もいます。それらの異なる記述を自動的に見つける技術を開発しました。この技術は2012年10月末に米ハワイで開催されるCIKM(情報と知識マネジメントに関するトップレベルのカンファレンス)で発表する予定です。学会発表は自分の評価に直結するわけではないのですが、楽天の技術をグローバルにアピールできる場であるので、会社がサポートしてくれています。

Yusaku

私は2012年6月末にRITの「ROMA」と「fairy」を開発したグループに配属され、現在は自分の研究を立ち上げるために動いているところです。テーマの一つとして、学生時代から研究している効率良いパターン照合技術を用いた大規模データストリーム処理を考えています。

RITで開発した技術だからといって即採用にはならない。具体的に向けて動く

John

楽天レシピのように、いくつかのサービスに自分の開発した技術が実際に採用されていますが、すぐに採用されたわけではありません。実際にサービスへの導入を決めるのは、サービス開発を担当する各部署の人たち。「ここで使うといいですよ」と言っても、サービス向けの実装が難しい場合、使ってもらえなかったりします。どんなにすばらしい技術であっても、使われなければ意味がありません。自分の知見を、どう各サービス開発担当者に使われる「もの」として実現するのか。そこがこの仕事の難しさの一つだと実感しています。

まつもと

機能そのものはもちろんですが、それだけではなく、インタフェースをどう作るか、も重要だと思います。ユーザーにどう見せるか、プログラムがプログラムにどう話しかけるか、そのデザインがすごく大事なんです。Rubyもそこを意識して作ったからこそ、多くの人に使われる言語に成長しました。プログラムに向き合う者同士でも、インターフェースをうまくつくることが求められるんですね。

Yusaku

RITが開発した技術だからといって、必ず使ってもらえるわけではないところは、難しさでもあり、面白さだと実感しています。私が開発した技術は、既存の技術、例えば、オープンソース・ソフトウェアと比較されるため、そのオープンソース・ソフトウェアでは実現できない新しい機能を実現する、あるいは、性能を大きく向上するなど、よほどメリットがないともちろん使ってもらえません。大規模なオープンソース・ソフトウェアは複数の人たちが開発をしているため、安定している上、インターネットでさまざまな情報が取得できます。それよりもどんなメリットがあるのかをアピールできないといけない。しかも、技術を説明するだけではダメで、実装して実際にメリットを見せないと壁は破れない。難しいですが、チャレンジしがいのある面白い仕事です。

まつもと

楽天の場合、RITの研究者だけでなく、サービス開発のエンジニアも日々新たな課題に対して解決していく指向を持っている人が多いと思います。とはいえ、事業会社であり収益を生み出さなければならないので、コストの意識は高い。新しい技術の導入にはリスクもある。それを打開し、楽天を変えていくような技術を世に出していくことが私たちのミッションです。そこでJohnさん、Yusakuさん、RITで実現したい野望はありますか。

データは膨大でカオス。そこにチャレンジがあるからイノベーションが生まれる

John

「正しい検索」と「優しい検索」を実現したいですね。正しい検索とは、その名前の通りで、検索条件にヒットする商品が一番安くて最も早く配送される順番で表示される仕組みです。もう一方の優しい検索とは、この商品を購入するならこの商品もいかがですかという、パーソナライズされた検索を実現したいと考えています。また多数のショップが扱っている商品であれば、売り上げが伸び悩んでいる店舗を先に表示させるなど、店舗に対しても優しい検索を目指しています。

Yusaku

楽天はサービスの多様性が特徴ですが、一方で、各開発現場で類似した課題を抱えていることも多いと感じています。そのような課題を整理し、それを解決するような共通の仕組みを開発するのも、私たちRITの役割。そのような共通の仕組みが、楽天の特徴であるサービスの多様性をさらに活かし、楽天でしか実現できない新しい体験を利用者の方々に提供していくことにつながると思っています。

まつもと

お二人が言ってくれたように、楽天はいくつものビジネスモデルを通じて世の中の多くの人と密に接しているので、その多くの人の生活をどのようにより良くしていくか、変えていくか、という観点で技術的なチャレンジを沢山経験できるわけですね。そして、技術者視点から見た楽天の特徴の第一は、日本のWebサイトの中で最もデータ量、アクセス量などスケールが大きいこと。第二にカオスであること。例えば他社ECサービスの場合、扱っている商品にはすべてIDが振ってあるため、Aという商品を検索するとAだけが表示されます。一方、楽天市場は小さな商店の集合体。Aという商品でも、店舗によっては商品名に「ポイント10倍!」などが付加されているものもある。これら異なる商品名を同じAという商品として扱い、検索しなければならないのです。このようにデータがカオスだから、Johnが取り組んでいるような「優しい検索」へのチャレンジが出てくる。もちろん、検索もレコメンデーションの仕組みも一筋縄ではいきません。難しいチャレンジがあるから、イノベーションがある。新しいモノを作り出したい人にとっては本当にやりがいのある働き場所ではないでしょうか。

まつもとゆきひろ

1990年筑波大学第三学群情報学類卒業。専攻はコンピュータ科学。島根大学大学院博士課程単位取得退学。Rubyの生みの親。2007年6月、楽天技術研究所フェローに就任。ROMAとfairyの開発を支援。ネットワーク応用通信研究フェロー、Rubyアソシエーション理事長も務める。2009年、島根県松江市名誉市民の称号を受賞。島根県松江市在住。

John

東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。2011年楽天に新卒入社。学生時代の研究テーマはWeb検索や不正検出について。その研究を生かすため、データが大量に蓄積されており、しかも未整備な部分がまだまだ残る楽天に入社。「正しい検索と優しい検索」の実現を目指し日々、奮闘中。

Yusaku

北海道大学大学院情報科学研究科博士課程修了。2012年楽天に新卒入社。学部時代は物理を専攻していたが、理論と応用が近い情報工学の面白さに引かれ、専門を変更。大学院時代の研究テーマは情報検索、とくに効率良いパターン照合技術の開発。より理論と応用の近さを実感できるRITで働きたいと思い、楽天に入社。

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